6億人の貧困層を抱え台湾に侵攻する中国にV字経済回復は可能なのか?

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新型コロナウイルスの感染拡大をいち早く封じ込め、経済活動を再開させた中国は、4-6月期のGDPがプラス3.2%と成長に転じました。しかし、中国経済の展望は決して楽観できるものではなく、「V字回復はできない」と厳しい見方を示すのは、エコノミストとして40年の経験をもつメルマガ『マンさんの経済あらかると』著者の斎藤満さんです。斎藤さんは長江流域で続く大雨や15日の予定が先延ばしになった米中貿易協議に加え、台湾の香港化だけは断固阻もうとする米国の動きなど、数々の理由を上げています。

中国がV字回復できないわけ

2Qは一見V字回復だが

中国で昨年12月に新型コロナウイルスの感染が確認されてから、1月に感染が急拡大。1月下旬には海外旅行の禁止から武漢などの都市封鎖へと、感染抑止のために強硬策がとられました。この結果、1-3月の中国のGDP(国内総生産)は前年比6.8%のマイナス成長と、昨年10-12月期の6.0%成長から急落しました。

3月には早くも経済を再開したため、3月以降生産は前年比プラスに転じ、4-6月のGDPは前年比3.2%成長となりました。前期比にすれば2桁の急成長で、中国経済にはV字回復との評価が高まりました。もっとも、国家統計局のPMI(購買担当者景気指数)などからみると、わずかに50を超えた程度で、前期比2桁成長には多くの疑義があります。

さらに、その後中国経済をめぐっては様々な制約が重なり、ここからのV字回復期待を大きく後退させるものとなっています。具体的な制約を以下に紹介します。

長江周辺での豪雨災害

まずは自然災害です。日本でも7月は全国的に豪雨災害が発生しましたが、中国でも長江(揚子江)周辺地域で長期間豪雨に見舞われ、ダムの氾濫、洪水も含めて、流域では広く浸水被害が出て、犠牲者も多くなりました。揚子江沿いの省では、6月後半から7月いっぱい、この豪雨災害で経済活動が大きな制約を受けました。

これで家を失った人、仕事を失った人が少なくなく、もともと地方労働者の賃金が安く、李克強首相が指摘した「6億人の貧困層」の多くがこの犠牲になっています。7月の個人消費(小売り)が伸びなかった背景に、こうした事情もうかがわれます。

8.15米中閣僚会議

明8月15日には、5月以来の米中閣僚会議が予定されています。米国からはライトハイザーUSTR代表が、中国からは劉鶴副首相が参加し、ビデオ会議の形でなされる模様です。主題は今年1月に合意した「第一段階合意」のチェックとなります。

中国は米国からの輸入を、2017年の1300億ドルを基準に、ここから21年までの2年間に2000億ドル上乗せすることになりました。単純に考えても年間1000億ドルずつ乗せる計算となります。2000億ドルのうち、工業製品が777億ドル、大豆などの農産物が320億ドル、エネルギーが524億ドル、などとなっています。農産物は2年間で800億ドル(20年は365億ドル)輸入することになります。

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