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【書評】元中国人が息子に実践。「正しい日本人」に育てる教育法とは?

日本人は我が子に対して「素晴らしい人になってほしい」とは願うかもしれませんが、「素晴らしい日本人になってほしい」と願う日本人は少ないのではないでしょうか。しかし、日本に帰化した中国人の方が我が子に「正しい日本人になってほしい」と学ばせたものは、私たちが振り返るべきものなのかもしれません。今回の無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』で編集長の柴田忠男さんがレビューしているのは、そんな元中国人の評論家・石平さんが「我が子を日本人にするための教育法」を綴った一冊です。

偏屈BOOK案内:石平『日本の心をつくった12人 わが子に教えたい武士道精神』

日本の心をつくった12人 わが子に教えたい武士道精神

石平 著/PHP研究所

「わが子に教えたい武士道精神」として、石平が選んだ〈日本の心をつくった〉12人の武士とは源義経、北条時頼と時宗、楠木正成、徳川家康、徳川吉宗、松平定信、大塩平八郎、武市半平太、大久保利通、東郷平八郎、西郷南洲である。このなかで、わたしがわりと詳しく知っているのは源義経、徳川家康、西郷隆盛、大久保利通、東郷平八郎くらいである。日本人としてまことに遺憾……。

石平は生まれこそ中国四川省成都だが、2007年に日本に帰化した〈日本生まれの日本人より日本を愛する〉みごとな日本人である。長男が生まれてから、礼儀と常識を身につけさせるための躾や、色々な情操教育を始めた。小学校に入学してからは音楽や絵画の塾に通わせたり、論語の言葉や百人一首を暗記させたりした。知識の教育は学校に任せるが、人間教育は両親がやろうと決めた。

「一人の日本人として生まれて来た以上、一人の正真正銘の日本人として、日本の精神をきちんと受け継いだ素晴らしい日本人として育てていかなければならないと思っている」とは、今どきの日本人が失った精神である。わたしだって、何十年も前に息子が、娘が、生まれたとき、正しい日本人として育てるぞと決意した。というのは嘘で、成長期にもそういう教育をしたことはなかった。

「将来のわが子を、少しでも日本的な美しい心を受け継ぐような人間として育てていくことが何よりも大事である」と考える石平は、教材を日本史から選んだ。日本の長い歴史の中にある、先人たちの生き方と行いにおいて輝いた日本人の心の美学。それらがすべて、わが子の精神教育のための恰好のテキストとなる。なかでも武士道精神こそが、日本の心と美学の集大成であると見抜く。

「日本的美学と武士道精神を具体化した史上最高の日本人、日本武士のなかの武士、この国の歴史のなかで輝いたもっとも素晴らしい人物といえば、それは間違いなく、私自身が敬慕してやまない、かの西郷隆盛、東洋最大の英雄と先聖である南洲翁なのである」。元中国人である石平が日本の美学と武士道の心を理解できるようになったのは、西郷南洲の生き方と死に方を知ってからだ。

中国にも英雄豪傑はいくらでもいるが、西郷のような無私にして高潔の士はついに一人も出なかった。「権力はけっして私利私欲の限界を超越することができない。それこそが中国社会の法則であり、中国の歴史の不幸の源であった」。西郷は日本史上最大の政略家でありながら、どこまでも高潔無比、清誠純一の生き方を貫いたといわれる。石平は西郷を「君子」そのものだとまでいう。

そして西郷のすべてを人間精神の見本として、我が子にたっぷり教えたいと。さらに、彼が成長するに従い「論語」や漢詩などの中国古典を充分に教えるつもりだという。中国の古典と文学は東洋的教養の欠かせない一部であり、〈素晴らしい日本人〉となるために必要な養分であるからだ。しかし彼は文化的意味合いにおいて、日本人としての自己を確立することができるだろうか。

「そのとき、父親と人生の案内人としての私は、彼のアイデンティティー確立を、いったいどうサポートすべきなのか。私はいったい、どのようなことを彼に教えることによって、その人生最大の課題解決の一助になれるだろうか」。その答えも日本の歴史にあった。それは江戸前期の優れた儒学者、兵学者で、偉大なる思想家、山鹿素行の「中朝事実」にある。なんと、「日本こそが本当の中華である」。日本思想史上のコペルニクス的展回!素晴らしい!

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock.com

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