中国の身勝手な「南シナ海で超えちゃいけないライン」が米国を怒らせる訳

 

一方で、1979年よりアメリカ合衆国は、他国が領海や排他的経済水域といった海洋権益を過剰に主張していると判断した場合、その主張を認めないという意思表示をするため事前通告なくその海域を航行するという「航行の自由」作戦(FONOP: Freedom Of Navigation OPeration)を実施しています。「航行の自由作戦」は、意外と古く30年の歴史があるのですね。

2000年9月から2016年9月にかけて37か国が対象とされています。もちろん南シナ海もその一つですし、またホルムズ海峡などもそのような状況になっています。

この作戦によりアメリカの軍艦が事前許可なく南シナ海を航行することに中国は反発しています。自分の領海だといっているので当然ですね。

トランプ政権になってから初めて南シナ海で実施された航行の自由作戦に対して、米艦が沖合を通過したミスチーフ礁の領有権を主張する中国政府は、外務省報道官が「アメリカ艦艇の行動は、中国の主権と安全を脅かし、不測の事態を招きかねない。我々は強烈な不満を表し、断固反対する」と主張しているのです。

イギリスも、2017年7月27日に南シナ海に航空母艦の派遣を示唆するなど、同海域の航行の自由と国際法の尊重を中華人民共和国に求めています。

またフランスも、南シナ海でのプレゼンスを強めており、2018年5月末に強襲揚陸艦「ディクスミュード」とフリゲート1隻が、南沙諸島(スプラトリー諸島)と中華人民共和国が人工島を造成した一群の岩礁の周辺を航行しています。

このような中で、コロナウイルス禍がやってきます。アメリカは空母の中でコロナウイルスが蔓延し、しばらく南シナ海や日本近海において空母艦隊を駐留させることができず、本国に引き上げていました。

その間、中国は南シナ海における軍事プレゼンスを強め、空母艦隊を展開して演習していました。

2020年8月、アメリカは空母艦隊を二艦隊と潜水艦艦隊および沖縄の空軍基地を含め、南シナ海における大掛かりな軍事演習を行うということになっています。ほぼ同時に、中国が南シナ海において空母艦隊の軍事演習を行うとなっていましたので、一触即発の状況になっているといわれています。

このようなことから、「南シナ海が米中戦争の戦場になる」というような感覚になっている人は少なくありません。

しかし、現時点においては、中国はアメリカとの戦争に積極的ではありません。単純に、アメリカとの間において、戦争をしても勝てないと踏んでいるようですしまた、アメリカの空母艦隊との間では、中国の艦隊は勝てないのは明白です。

日本の自衛隊がアメリカにどれほど協力するかは不明ですが、しかし、アメリカは単独であっても中国との間で戦うことは可能であると判断されます。

また、南シナ海においては、上記にもあるように、イギリスやフランスもアメリカと競合歩調をとっています。現在の状況であればアメリカが空母3、イギリス1、フランス1、インド1という感じですし、日本の自衛隊の護衛艦、かが・いずもなども活躍することになると考えられます。

また潜水艦技術においても、日本の技術が強いので、結局のところミサイルの飽和攻撃以外には有効な手段がないということになるのです。

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