日本が新型コロナウイルスの猛威に翻弄されていた4月から8月にかけて、中国の公船が111回も尖閣諸島の周辺海域に不法侵入を繰り返していたことをご存じでしょうか? そして、中国は今後、台湾「統一」の準備を進めているとも言われています。なぜ、中国は台湾や沖縄をはじめ「東シナ海」の覇権を急ピッチで進めようとしているのでしょうか。ジャーナリスト・作家として活躍中の宇田川敬介さんは今回、自身のメルマガ『宇田川敬介の日本の裏側の見えない世界の話』で、中国の尖閣諸島「侵犯」と台湾へ「侵攻」の理由を解説。さらに、この動きによって日本が迎える「危機」について警告しています。
台湾と尖閣諸島そして南西諸島の危機
コロナウイルス禍と同時に8月4日までに111日連続で尖閣諸島沖、接続水域に中国海警局の船が入ってきています。
8月4日も台風が来ていたから来なかっただけで、それ以降もまた姿を現しているのです。
日本においては、あまり報道されていませんが、国境侵犯がこれだけ行われているのは異常です。
他の国ならば国境警備隊などがいて、当然に、その行為に対して軍事的に何かを行っても問題はないということになっています。
例えば日本の漁船が北方領土においてロシア側に入ってしまったとして、突然銃撃され犠牲者が出ても、国際社会が国境の不法侵入者に対して銃撃を行ったことに対して非難することはなかったのです。
もちろん、これはロシアだけの問題ではありません。
2007年にはインドネシアとマレーシアの間でも海上の国境線で、双方の国が駆逐艦や巡洋艦を出して一触即発になったことがあります。
国境とはそれほど重要なものなんです。
そもそも国家とは、近代的な定義では「領土」「国民」「主権」ですから、その領土が確定していない、他の国に侵食されている状況では、国家の基本がうまくいっていないということになります。
日本の場合「陸上国境」を持ったことが極めて少ないのです。なかったとは言いません。
明治時代に、樺太(現在のサハリン)が南北で分割しソ連と日本で統治していましたので、その時に南北の樺太で陸上国境がありました。
朝鮮半島も「併合」ですから中国との国境も陸上国境ですが、そこについては様々な問題があるかもしれません。
しかし、日本は基本的には海上国境しかなく、そのために厳密な国境線の管理ということに関してしっかりとした認識がないかもしれません。
接続水域は、まさに国境線上で、領海内は国境の中に入り込まれている「不法侵入」ということになるのです。
中国は、新型コロナウイルスを日本にまき散らし(といってもコロナを一番初めに持ってきたのはクルーズ船ですが)、日本がその対応に窮している間に、111日間も尖閣諸島沖にやってきたということになるのです。
この件に関して、中国外務省(国務院外交部)の汪文斌報道官は「なぜ中国は尖閣諸島の海域を巡航するのか」との質問に、このように答えました。
「釣魚島及びその附属島嶼は古来中国固有の領土だ。中国海警局の船による釣魚島海域での巡航と法執行は、中国側の固有の権利だ。我々は日本側のいわゆる『抗議』は受け入れない」
こんなことを言ってきているのです。
実際に、民主党政権は2012年に尖閣諸島沖で巡視船に衝突してきた漁船の船長を逮捕し、結局、弱腰になって起訴せず釈放します。そのような「弱腰対応」がそのまま「前例化」してしまい、入ってきて捕まっても問題はないという感じになっているのです。
もともと、尖閣諸島に関しては、戦後のアメリカ軍による沖縄領有とともに、アメリカによって尖閣諸島も占領されています。それに従って、当時、尖閣諸島に住んでいた鰹節業者は、みな日本本土に引き上げてきてしまっているのです。
沖縄返還後、尖閣諸島も日本に戻っています。
その間、中華人民共和国も中華民国(台湾)も、アメリカに対して尖閣諸島の領有を主張しているところはありません。そして、日本返還後、南シナ海において天然ガスや石油の埋蔵が確認された後に、中国は急に尖閣諸島の領有を言い出すようになるのです。
また、実際に尖閣諸島においてレーダー基地などを作った場合、中国の東シナ海における軍事活動のほとんどが可視化されることになるのです。中国としては、それに関してあまり喜ばしくないと思われます。
しかし、日本にとってはそもそも国境の離島であり、なおかつ軍事上の要衝であり、そして日本固有の領土であることは間違いありません。
そのように考えれば当然、日本はここを守らなければならないのです。
なぜ中国は「台湾併合」「東シナ海支配」を狙うのか?
同時に、中国共産党は東シナ海の占領に応じて、台湾の領有を狙っています。
2019年1月、習近平国家主席は「台湾同胞に告げる書」発表40周年記念大会にて、このように発言しています。
広範な台湾同胞は、中華民族の一部分で、正々堂々な中国人として、民族の復興における台湾の位置づけと役割を真剣に考え、国家の完全なる統一、民族の偉大なる復興を無上の光栄な事業として受け止めるべきだ。台湾問題は民族の衰弱と戦乱で生まれ、必ず民族の復興に伴い、終結する。
一つの中国の原則を堅持した上で、台湾のいかなる政党、団体もわれわれとの往来に障害は存在しない。「九二共識」(92年コンセンサス)を堅持し、「台湾独立」に反対するという共同の政治的基礎の上で、両岸(中国の大陸と台湾)各政党、各界が代表を推挙し、両岸関係と民族の未来について、広範で踏み込んだ民主協商を展開し、両岸関係の平和発展について制度的配置の実現を推し進める。
中国は平和統一のために広々とした空間を作り出す意思を持つが、さまざまな形式の「台湾独立」分裂活動にはいかなる空間も決して与えない。中国人は、同じ中国人を戦いの相手にしない。われわれは、武力の使用を放棄することを約束せず、あらゆる必要な措置を取る選択肢を保有するが、それはあくまでも外部勢力の干渉と極めて少数の「台湾独立」分裂勢力および分裂活動に対するもので、決して台湾同胞を対象とするものではない。
両岸(中国の大陸と台湾)は接続すべきものは全て接続し、経済・貿易協力、インフラ、エネルギー・資源、各業界標準の共通化を進め、金門、馬祖と福建省沿海地区の水道、電力、ガス、橋梁の接続をまず実現するべきだ。両岸の文化・教育、医療・衛生における協力、社会保障・公共資源の共有を推し進め、両岸の隣接あるいは条件が同様な地域の基本的な公共サービスの均等化、普遍化、便利化を支持するべきだ。
両岸同胞は中華民族の優秀な伝統文化を共に伝承し、その創造的な転換、革新的な発展を推し進める必要がある。国家の希望、民族の未来は青年にあり、両岸の青年は進んで重い責任を担い、団結して友情を育み、手を携えて奮闘しなければならない。われわれは台湾の青年が中国大陸で夢を追い、夢を育て、夢を実現することを歓迎する。
中国の統一は台湾の経済的利益を損なうことがなく、またいかなる国家の正当な利益を損なうことがなく、むしろ各国により多くの発展のチャンスをもたらし、アジア太平洋地域と世界の繁栄・安定により多くのプラスエネルギーを注ぎ、人類運命共同体の構築、世界の平和的な発展と人類の進歩のための事業により大きな貢献を果たすことになる。(中国国営通信社『新華社』)
このように、「台湾の統一」について言及したのです。
台湾の蔡英文総統はこれに反発し、そして台湾国内の支持を取り付け、総統選挙に勝利します。
一方、台湾が中国共産党化すれば、台湾海峡の支配権を中国共産党が持つことになり、台湾海峡を通るすべての船(それはタンカーや貨物船、軍艦もすべて)検閲される可能性があるということになります。
日本だけでなく、韓国も北朝鮮もロシアも問題が大きくなるということになるのです。このように、中国は東シナ海においても広く、手を出しています。
では、なぜ中国は東シナ海に大きく覇権主義を伸ばしているのでしょうか?
一つは「太平洋への進出」です。
中国は、すでに太平洋の公海上の地下資源を乱獲し、またサンマやイカなども乱獲し、資源を枯渇させてしまいます。実際に我々の食卓にあがる魚が値上がりしていることはお分かりであると思います。このように資源を食い尽くすことによって、他国を苦しめるようにして、それを元に支配権を確立するということを行っています。
当然、国際条約には違反していますが、「債務の罠(二国間の国際援助などの債務により債務国の政策や外交等が債権国側から有形無形の拘束を受ける状態)」と同じような状況です。
そのうえ、仮想敵国であるアメリカに対して、潜水艦による攻撃範囲を考えており、また台湾などを不沈空母化し、中国本土を守る計画を持っています。
つまり、日本も台湾も「盾」にしてしまい、その居住などは認めない、または軍事基地化するということになってしまいます。もちろん、沖縄などの南西諸島も軍事基地化するということになるでしょう。
そのようになってしまった後に、日本はどのようになるのでしょうか。日本そのものの独立が危なくなるということになります。
中国の覇権主義とはこのように「共産主義革命を、いまだに暴力的なものだけではなく、食品などを含めて拡散している」ということになるのです。(メルマガより一部抜粋)
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