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菅新政権は「今なら米国にも勝てる」と知れ。米中対立が日本復活の鍵に

経済的にも軍事的にも対立を深める米中両国。これまでは米国の顔色を窺いながら中国にすり寄ってきた日本も、新政権誕生後すぐに政治的な決断が迫られそうな情勢です。メルマガ『国際戦略コラム有料版』の著者で日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんは、米中対決は日本にとって大チャンスと見ていて、かつて米国に封じられた国主導の実用化研究投資こそが日本復活の方法だと論じます。さらに米大統領選の雲行きの変化にも言及。トランプ再選の可能性は株価次第になったと分析しています。

米中対決で日本復活か?

米中対決により、米国は1980年代の日本方式での研究開発を認めるしかない状態になっている。それを検討する。

菅官房長官の自民党総裁選挙での優勢は、動かしがたい。その菅さんが、立候補の演説をしたが、非常に分かりやすかった。庶民派の菅さんらしい演説であった。

その政策は、安倍さんの方針を引き継ぐということで、非常時の今は、菅さんしかいないということで、細田派、麻生派、竹下派、二階派は、結束して菅さんを応援するという。その裏には、安倍首相が菅さんを推していたようだ。ということで、次回の2021年秋の自民党党大会までの菅暫定政権の色合いが強い。

菅さんの問題点は、今後の日本の針路というビジョンが出せないことであり、実務や実行力は優れているが、大方針が示せないので、長期に政権を担うことは無理がある。菅さんは、官房長官が適任であったような気がする。ということで、菅政権での官房長官が誰になるのかが気になる。官房長官と首相の役割が逆転する可能性もあると見る。

ウイズ・コロナ時代での経済活性化は菅さんでできるが、日本復活の道筋を付けるには、外部の大きな助けと官房長官や首相補佐官が重要なことになる。安倍首相の裏からの支えも必要な気がする。

そして、今、米中対立で、日本復活の大きなチャンスが訪れている。それを逃してはいけない。その道筋を付けるのは、11月の米大統領選挙までの今しかない。大統領選挙戦後、日本は米大統領の政策に合わせた日本の道筋を決める必要があるが、その予備交渉は今からでも両陣営にできる。

アメリカに潰された日本

日本が衰退した原因は、日米貿易摩擦で、国主導の研究開発力を封じられたことにある。中国がイノベーションを起こした要因の多くが国主導の企業への研究開発費補助金である。

アベノミクスの第3の矢の成長戦略がうまく機能しないのもこのためだったが、制約がある中でできることを探すことになった。それが、農業と観光であったが、高付加価値産業ではないので労働者数は増やせたが、労働賃金は低いことで、非正規労働が多くなってしまった。

20年を経て、米国は、国主導の研究開発方式での中国の最新技術に負けた状態になってしまった。日本も同様である。国主導の研究開発とは、半導体開発で取った複数社の企業連合に、研究開発補助金を出す方法と国鉄や電電公社などの実業の国有企業の巨大研究所での研究という2つの方法があった。

国の単純な研究所での研究開発は事業がないので、実用化研究ができないし、事業で金を得るという大きな欲求がないことで、基礎研究しかできない。この国家主導研究方式で、国鉄は新幹線を生み、電電公社は携帯電話を生むことになったのであった。

これで、1980年代に米国の技術に追いつき、追い越したが、そこで、米国が立ち上がり、日米構造協議という形で、日本の研究開発力を破壊した。1つに国有企業を分割・弱体化させた民営化、もう1つが、企業への研究補助金を封鎖したことで、以後、企業研究に国が補助できなくなってしまった。

「日本復活」は、今やアメリカの国益に

このことで、米国は日本の研究開発力を破壊して大成功したが、韓国が国主導の研究開発で日本の技術を奪い、そして、中国が国主導の研究で、日米韓の技術を抜かすまでになっている。このように、国主導の研究開発に負けることは明らかで、中国に米国が技術で負けたことで、米国は中国に構造協議を仕掛けたが、中国は、反発している。この結果が米中経済対決や米中軍事対決となっているのだ。

米国一国で、中国の技術に追いつかないので、日米は、共同して中国の技術を抜かさないといけないことになった。米中分断経済での要素技術は、日本が研究開発しないといけない状態になっている。それは、米国のソフト技術は一流かもしれないが、通信技術や機械技術の多くが遅れている。細密な加工が必要であるが、その技術の多くを米国は、1990年代に捨ててしまった。

日本は、この部分ではまだ米国よりも進んでいるので、日米で技術開発する必要がある。その方法は、国主導の実用化研究投資であり、それを復活することで、再度、日本のイノベーション力を取り戻すしかない。

もう1つが、国有企業化である。日銀が株ETF買いをしているが、これをターゲット産業関連の研究開発企業をまとめてETF化して、そのETFを買えばよい。リートETFの代わりにそれを買えばよいだけだ。今までのETF買いで、日銀は一部企業のトップ株主であるが、研究企業の50%程度の株主になって半国有化して、そこに国の研究開発補助を行えばよいし、米国が文句を言うなら、新規発行株を国が優先的に買えばよいのである。

国主導で、実用化の研究開発補助を行い、世界的な日本企業を育成するしかない。米国も中国があるので、日本の復活が必要になっている。日米摩擦で、日本が折れて、仕方なく、農業輸出と観光産業で経済衰退の急場をしのいだが、やっと、日本の研究開発力の実力が、また出せるチャンスが来たということである。そして、研究開発をして新技術を出して、早急に日本を復活させることである。それしか本当の意味での日本復活はない。

アメリカ大統領選挙後の「大局」を見極めよ

株価がどこまで下落するかで、大統領選挙が決まる可能性が出てきた。ナスダックは調整局面入りしたし、それに伴いNYダウも2000ドル程度の下落になるかもしれない。金融緩和で、お金はジャブジャブであるが、株は調整局面になり、債券金利はゼロ水準であり、金も上がり、投資できる物がなくなっている。投資と言う意味では、悩ましい状態である。

しかし、トランプ大統領は、黒人たちのBLM運動での都市暴動に対して、「法と秩序」との主張に米国民の多くが共感して、賭けサイトではバイデン候補を逆転しているし、世論調査でもイーブンになってきた。トランプ氏が逆転当選になると報道でも言い始めた。BLM運動に資金を出しているのが、反トランプ派の富裕層である。しかし、この黒人たちの暴動で、バイデン候補には逆風になっている。資金を出して、バイデン落しをしているようなものになっている。

もう1つが、コロナ感染拡大が収まり始めて、トランプ大統領への風当たりが弱まっていることも大きい。その上に、10月末にはワクチンの接種も始まるという。ということで、企業優遇のトランプ優位になってきたが、米国も日本も景気は悪いので、この経済水準に合わせた株価へ暴落が起きると、再度、分配を重視した政策のバイデン候補に有利になる。

もう1つ、トランプ大統領は、無用な戦争をしないことを強調するために、第1次世界大戦の米軍人戦死者について「負け犬」「馬鹿者」と侮辱する発言をしたようだ。失言であるが、トランプ氏が言っても大問題化されないようであるが、このことで、軍関係者の半分が、トランプ離れを起こしているという。このため、トランプ大統領は、当選するために、またもや、大判振舞をする必要になっているようだ。

バイデン米政権になると、ウォール街が嫌いなウォーレン財務長官と親中と言われるライス国務長官という布陣になると予測されている。そして、分配を重視した政策になる。バイデンが勝てば、ウォール街を叩くことが確実で、株価は大幅な下落になり、トランプが勝てば、株価は維持か上昇になるはずで、よって、市場関係者や投資家達はトランプ氏を応援することになる。

さあ、どうなりますか?

image by: 首相官邸

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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