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【書評】認知症患者に押し潰される日本。平均寿命100歳を喜べぬワケ

日本の平均寿命が100歳になることは喜ばしいことなのでしょうか。今回の無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』で編集長の柴田忠男さんがレビューしているのは、日本の高齢者の半分が認知症であるという衝撃の事実を綴った一冊。これからの日本について辛口に語られています。

偏屈BOOK案内:池田清彦『本当のことを言ってはいけない』

本当のことを言ってはいけない

池田清彦 著/KADOKAWA

著者は生物学者、早稲田大学名誉教授、構造主義生物学の立場から科学論・社会評論も行う。カミキリムシの収集家として有名。メルマガ『池田清彦のやせ我慢日記』の配信分を再構成、加筆・編集して仕上げた本である。そうとう言いたい放題。歳をとってからの試練は、十中八九は乗り越えられないと潔い。

完全に呆けてしまえば無敵になってしまうかもしれないが、呆け始めたことを本人が自覚していると、かなり恐ろしいらしい。特に、若年性アルツハイマーの発症期は、本人にとっては相当な恐怖であるようだ。

つい最近までできたことが、どうやってもうまくいかない。近くのスーパー行ったが、帰り道が分からなくなり、頭が真っ白になって気が狂いそうになるなど。これは怖い。

呆けてしまった妻の、呆け始めた頃の手帳を見たら、子供や孫の名前を毎日毎日書いていたという切ない話がある。少しでも呆けを遅らせようと、涙ぐましい努力をしていたのだ。残念ながらアルツハイマー病の進行は、努力で止めるのは難しい。

神も仏もあの世も信じていない私にも、死期は刻々と近づいてくる。さてどうしたものか。とりあえず酒でも飲むか。

ナイスな著者である。

アルツハイマー病が進行した人は恐らく死ぬのが怖くない。基本的にすべての犬や猫も、死ぬのが怖いという感情を抱くことはないと思う。

死ぬのが怖いのは人間として正常な感情であり、むしろ寿ぐべきことで、頭が健康な証拠なのだ。人生は死ぬのが怖いと思っているうちが華なのである。

ううむ、頭が健康で身体はボロボロ、めちゃくちゃ不如意ってのも恐ろしいことだ。

2018年の日本人の平均寿命は男性が81.25歳、女性が87.32歳で、約6年の差がある。歳をとると認知症の人の割合も増えてくるが、女性の方が呆ける割合が多いようだ。アルツハイマー病の平均余命は発症後8年といわれているにもかかわらず、女性の方がはるかに長生きするのは他の病気で死ぬ確率が低いから。同年齢の人口に占める認知症の割合は、75歳までは女性の方がわずかに多い。

そこから差はどんどん開き、90歳以上の女性で認知症でない人のほうが遥かに少なくなる(90~94歳:男性49%、女性65.1%)(95歳以上:男性50.6%、女性83.7%)。こうなると90歳以上の高齢女性では、認知症の人が正常で、認知症でない人は異常だ。この男女差の一つの理由は、認知症を発症した後の余命が、男性の方が短いから。平均寿命が100歳になると喜んでいる場合ではない。

多くの仕事が徐々にAIで代替されるであろうことは、ほぼ自明である。レジ係のような単純な仕事は言うに及ばず、マニュアルに基づいてデータ処理して結果を出すといった仕事は、相当複雑なものでもAIで代替可能になる。税理士や会計士もそのうち消える。高度な経験や知識が必要とされる内科医のような仕事も、AIに取って代わられる。AIに仕事を奪われた社会はどうなるのか。

ベーシックインカムで理想の社会になると考える人もいるが、一番の問題は子供たちが勉強をしなくなることだ。働かなくても暮らしていけるのなら、好きなことしかせず、かなりの人は高等教育を受ける意欲をなくす。国民の知的レベルはどんどん落ちる。今の日本人を見る限り、大半の国民は無教養の烏合の衆になる。その先は考えたくない。著者も私もその頃鬼籍の人だし。

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock.com

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