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働かなくていいと、ふと気づく。時代は自給自足の生活を求めている

「はたらけど、はたらけど、なおわが生活(くらし)楽にならざりじっと手を見る」と明治末期に詠んだのは歌人の石川啄木ですが、時代が令和に変わった今の私たちも、忙しく働き続けなければ生きていけないことに変わりはありません。このまま搾取され続ける労働者として働き続けることが幸せと言えるのでしょうか? メルマガ『j-fashion journal』著者でファッションビジネルコンサルタントの坂口昌章さんは、歯車の一つと化した私たちに対して、労働から解放される「新しい生き方」を提案。キーワードは「自給自足」で回る世の中です。

いま、世界は新たな経済システムを必要としている

1. テクノロジーの進化がもたらすもの

テクノロジーの進化は、世の中を便利にする。新たな製品やサービスが生れると、人々はそれを買い求める。当然ながら、その対価にお金が必要になる。それを稼ぐためには、更なる労働を提供しなければならない。

テクノロジーは既存の仕事を合理化するが、テクノロジーによって生み出された製品を作ったり、流通する、新たな仕事が増える。

その仕事も更なるテクノロジーで合理化される。そして、製品は進化を続ける。製品の進化は、旧製品を陳腐化する。テクノロジーはファッション化し、使い捨てにされる。

製品を進化させるには、更なるコストが掛かる。新製品は価格が上がり、その製品を購入するために、更に労働が必要になる。

テクノロジーの進化は、世の中を便利にする手段から、利益を上げる手段に変化した。

2. 生産し消費し続けること

もし、高効率のエネルギー機関を発明できたら、人々は豊かになるかもしれない。

例えば、低コストで間伐材を木炭にできないだろうか。それを高効率で燃焼させる機器を開発すれば、石油の消費を抑えられるかもしれない。CO2の削減にもつながるし、国内でエネルギーを賄えるかもしれない。

しかし、そんな技術が開発されれば、既存の石油関連産業、原子力産業等は大打撃を受けるだろう。

もし、人間が低コストで健康を保てる画期的な健康法が開発されれば、医療費は減り、多くの病院も不要になり、製薬会社も不要になる。

特定のウイルス感染症に有効な薬が安価に製造できれば、感染症の恐怖は消えるが、ウイルス感染症の高額なワクチン開発を行っている企業は大損害を受ける。

我々の生活には、低コストの問題解決が望ましいが、ビジネスの発展には多額のお金を使わせることが必要である。

暮らしを優先するか、それともビジネスを優先するか。本来は対立する概念だが、多くの人々は豊かな暮らしを獲得するためには、お金が必要であり、ビジネスが必要と考えるのだ。

我々は、経済の歯車を回し続けるために、生産を続け、消費を続ける存在なのだろうか。

3. お金に依存しない生活

お金に依存する生活を続ける以上、我々は働き、消費する循環を続けなければならない。お金を稼ぎ、お金を使う活動を続ければ、常に忙しく、常に働かなければならない。

もし、お金に依存しない生活ができれば、お金のために働く必要はなくなる。お金に依存しないとは、全くお金を使わないという意味ではない。ストレスを抱えるほどの仕事ではなく、負担のない仕事をして現金収入を得て、低コストの暮らしを実践することである。

例えば、人口減少で苦しんでいる市町村で、自給自足を支援する仕組みはできないだろうか。

例えば、住宅と農地をセットにして貸し出し、最低限の食料を自給できる環境を提供する。

農業のノウハウを勉強しなければならないので、農家と契約してインターンシップのような形で、教えてもらう代わりに労働力を提供する。そうすれば、双方にとってプラスになる。

農産物の加工も地域内で行えば、現金収入につながる。まず、プロの講師を招いて、料理やスイーツの作り方の教室を開く。これは有料だ。そして、教材として、農産物を提供し、できた商品は試食会を開いたり、ネットで販売する。

自給自足生活はそれ自体に価値がある。その生活や文化が観光にもつながるし、人口増にもつながるだろう。

4. 分散による富の増大はあるか?

米国は資本主義というシステムで世界の富を集中しようとしている。同時に、中国は共産主義というシステムで世界の富を集中しようとしている。世界には二つの富の集中システムがあり、現在は互いが争っている。

しかし、一方がこの争いに勝ったとしても、世界の富は集中しないだろう。それどころか、バブルのように膨らみすぎた富は弾けるかもしれない。

多分、世界は新たな経済システムを必要としている。その一方で、デジタル技術は、富の集中システムを崩壊させ、富を分散させるのではないか。

最終的に、富を増やすには、集中が有利なのか、それとも分散なのか。競争原理は集中により、富を生み出した。しかし、デジタルを基本とした分散を促進する原理は確立していない。分散とは独立、自立、自給自足である。富を分散することで、全体の富が増大することが分かれば、独立することが奨励されるだろう。

個人も独立し、企業も国家も独立することが富を増大させる世界。そのための経済理論や行動理論が生れるのではないだろうか。

編集後記「締めの都々逸」

「自分で作って 自分で買って 休む暇なく弱るだけ」

考えれば考えるほど、我々はお金を生み出すマシンの一部になっていますね。お金を稼いでも、次からへと新しいモノが売り出されます。どこかで、新しいモノを諦めない限り、働き続けることになりそうです。

こんなに働かなくてもいいんじゃないか、と思うのは、農業の機械化と効率化です。日本の農業従事者の平均年齢は67歳で、それで仕事が回っています。

会社員も生活の一部の時間を農業にあてれば、自分の食料程度は作れるのではないか、と思うのです。

一般の会社の仕事も、本気で合理化しようと思えば、仕事は減らせるはずです。給料が少なくなっても、自由時間を増やして、副業を行い、都会から脱出すれば、何とかなるのではないでしょうか。

人口を集中するより、分散した方が生活の質が上がると思います。お金より時間。そんな価値観が重要になるかもしれません。(坂口昌章)

image by: Shutterstock.com

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