都構想と基地移設。大阪で尊重され沖縄で無視された「民意」格差の正体

 

しかし、松井一郎率いる「大阪維新の会」の大罪は、これだけではありません。今回の強引な住民投票によって大阪市民にもたらされた最大の被害、それは「市民の分断」です。以下、大阪都構想に反対して、ずっとスタンディングなどの反対行動を続けて来た大阪市の女性の投票後のツイートです。

反対と書いた時、涙がにじんだ。なぜこんな闘いを何度もさせられねばならないのか。その後、投票所前スタンディング、今で3時間。3度怖い思いをした。本当に暴言と脅しがすごい。身の危険を感じる投票って、ここはいったいどこで、私たちはどんな相手と闘わされているのか。諦めない。#大阪市廃止反対

「賛成か反対か」「イエスかノーか」「白か黒か」という二択の住民投票の場合、僅差での決着は大きな遺恨を残します。100人のうち51人が賛成で49人が反対なら「賛成多数」となりますが、勝って喜ぶ賛成派と同じくらいの人々が負けて悔しがるのですから、開票が終わって決着がついた後も、市民の間で対立や分断が続いてしまう恐れがあるのです。

日本は民主主義国ですから、多数派の意見を尊重するのは当然ですが、LGBTなどの少数派の声にも耳を傾け、多数派と同様に手を差し伸べるのが政治の仕事です。100人のうち51人以上が賛成であれば、残りの人たちを切り捨てて良いとする考えは、本当の民主主義ではありません。

特に今回の住民投票は、勝った反対派と同じくらい賛成派がいたのですから、「大阪市を存続させればそれで良い」ということではなく、大阪市を存続させた上で、行政上の無駄を省く政策を行ない、負けた賛成派の人たちにも納得してもらうのが政治の仕事だと思います。

これと同じように、直接選挙制であれ間接選挙制であれ、民主主義国の首長に選ばれた政治家は、全国民のために働く義務と責任があります。しかし、7年8カ月も政権の座に居座り続けて来た安倍晋三は、自分を支持する者だけが真の愛国者で、自分を批判する者は「左翼」だ「反日」だという印象操作を行なうことで、国民を分断し、自分の支持固めをして来ました。

TPP法案に反対するデモの参加者を「恥ずかしい大人の代表」「左翼の皆さん」だと自身のフェイスブックで揶揄し、街頭演説の車上から自分を批判する聴衆を指さして「こんな人たちに負けるわけには行きません!」と言い放ちました。こうした幼稚な言動の数々が示すように、安倍晋三は自分の政策に批判的なリベラル層に「左翼」「反日」とレッテル貼りをすることで、自分の支持層に向けて愛国アピールを続けて来たのです。

その結果、「保守とリベラル」ではなく、「右翼と左翼」「愛国と反日」という架空の対立軸が作り出され、国民の分断が加速して行ったのです。そして、これを象徴するのが、安倍政権下での沖縄の辺野古の基地問題なのです。長くなってしまうので、ここでは詳しい解説は割愛しますが、20年以上前の橋本龍太郎政権時代から連綿と続いて来た辺野古の基地問題は、この9月までの7年8カ月に及ぶ第2次安倍政権下で大きく変わりました。安倍政権は、基地に反対する人たちに「左翼」「反日」というレッテルを貼ることで、沖縄の民意を無視しても構わないという空気を作り出し、工事を強行したのです。

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