コロナ禍と米大統領選挙の影で鳴り響く世界経済崩壊の足音

 

調停感が現地で感じたトルコの語調の変化

そしてCOVID-19の広がり、イズミールでの地震、トルコリラの下落といったマルチのダメージショットは、確実にトルコ・エルドアン大統領の“企み”を挫こうとしています。

今、東地中海での天然ガス田採掘権をギリシャやイスラエル、エジプトなどと争いながら、歴史的な問題であるキプロスの帰属問題をEUと戦い、リビアやシリア、ナゴルノカラバフ地域ではロシアと対峙しつつ、トルコ本土ではロシア製S400を本格導入することでNATOとの軋轢を生んでいます。

かつてのオスマントルコの再来を願うエルドアン大統領の動きは、トルコの強国化を目指す賭けとも言えますが、その賭けの行方は、自国の経済力と即応力の低下というポイントに加え、“唯一の”味方と言われるイランの内政・経済上の危機を受けて、ネガティブな方向に振れてきているように感じます。

特に今、ナゴルノ関連の調停に関わっていますが、トルコサイドの言い分の語調が変わってきたように思います。仮にトルコがこのまま勢力を衰退させるような事態になれば、中東・北アフリカ地域におけるパワーバランスはまた大きく変わり、さらなる混乱を引き起こすことになるかもしれません。

今回、コロナ禍で引き起こされた経済的な衰退と国際協調網の弱体化は、途上国のみならず、先進国にも重くのしかかっています。途上国・新興国に比べ、すぐにデフォルト危機に陥ることはないかと考えますが、その中でも欧州各国の経済は、COVID-19の感染拡大とそれを受けた都市“再”封鎖によってリカバリーの勢いを削がれることに繋がりかねません。EUとしてはコロナ後の世界においてグリーンリカバリーを主軸に、Economic powerとして返り咲きたい・主導権を握りたいと目論んで様々な提案や方向性を矢継ぎ早に出してきましたが、感染拡大による都市封鎖と経済連携の遮断は、南の各国(スペイン、イタリア、ポルトガル、ギリシャなど)の経済を危険レベルまで悪化させることになり、それを通常通りに北の諸国が“また”サポートすることが出来るか否か。その判断を誤ったら、今度こそ、欧州統合の行方は絶望的になるかもしれません。

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