コロナ禍と米大統領選挙の影で鳴り響く世界経済崩壊の足音

 

状況はさらに悲惨なアフリカ大陸

お隣のイラクでも、イランとの微妙な関係が変化するにつれ、政治的・宗教的なバランスが狂い、また総選挙が実施できないという危機に瀕しています。

部族間での対立やイラク湾岸戦争の苦い記憶、バース党への消えない憎しみと愛着の間のジレンマ、時を追うごとに積み重なるアメリカへの不満と恨み、そしてトランプ政権下でコミットメントが著しく低下してきたという経済・安全保障面でのアメリカの不在、そしてあまり報じられていませんが、止まることを知らないコロナ感染…。イラクは完全に復興のための道に迷ってしまったようです。

紛争調停官として、戦後復興のスタッフとして、イラクに関わってきたものとしては、望みを失っていく人たちの姿を見、声を聴くのは辛いものです。

目をアフリカ大陸に移すと、状況はさらに悲惨な状態です。まず、コロナ感染の広がりは止まることを知らず、そこに諸々の感染症の拡大が重なるという“泣きっ面にハチ”の状況に陥っているようです。

WHOなどの支援を受けてきてはいますが、コロナウイルスの感染拡大が顕在化した際にはまだ医療体制や防疫体制は脆弱であることが分かっていました。何とかコロナ対策に政府が乗り出すのですが、そこにマラリアやHIV、エボラなどの他の“強敵”が参戦し、状況は加速度的に悪化しているという情報があります。

欧米諸国も新型コロナウイルス感染症の第2波・第3波に襲われていて、かつトランプ政権が実質的にWHOの活動をブロックし、そこに米中対立も加勢して、機能不全に陥っている今、アフリカ諸国では大規模かつ複次的な医療・公衆衛生の危機が迫っています。それゆえに、経済活動は実質的に止まっており、エチオピアなどで期待されていた外資の参入などもいったん棚上げとなり、今後の経済成長の見込みが立ちづらくなってきています。

こういうときに飛び込んできて恩を売るのが中国なのですが、アフリカ諸国は対中国債務が爆発的に増加しており、債務危機の瀬戸際にいる国が増えてきていることもあって、中国からの支援を今、受け入れる政治的な受容性がないと言えます。例えば、ザンビアは今月末に迫った対外債務の返還猶予の交渉を各国としていますが、全体の4割を占める欧米の債権者は、猶予した返済がそのまま中国への支払いに使われるのではないかとの強い懸念を抱き、債務の支払い履行の猶予を拒んでおり、ザンビア政府にとっては八方塞がりとなっています。

同様の状況はケニヤやジブチ、コンゴやアンゴラでも顕在化し、対中国債務の膨張による経済悪化と異常に高い中国の貸付金利の存在、そして中国の存在の拡大を警戒した欧米諸国の慎重姿勢という複次的なパンチをくらってしまい、それらの国々の経済も虫の息という情報も入ってきています。国によっては「散々、欧米諸国は口出ししてくるくせに、困ったときには知らんふり。とはいえ、これ以上、中国からの支援を受けたら、それこそ中国共産党の新しい支配地にされてしまうだけ。日本も頼りにならないし…」という意見と、「この際、中国が嫌だとか言っていられない。助けてくれるのは中国だけだ!」という意見も強くあり、それらの勢力が国内で紛争起こすというとんでもない状況になってきていると耳にしました。実際にはエチオピアでは軍隊が出動する騒ぎになっているようですし、国内の治安情勢が悪く、ゲリラによる反抗が多発している国々では、内紛が激化し、そのことでコロナ感染がさらに広がり、責任を押し付ける対象(スケープゴート)を探してまた内戦が過熱するという悪循環が進んでいるとの情報もあります。真偽のほどはもう少し確認しないといけませんが、すでに中国当局による働きかけが急に強化されている模様で、その行方については注意を要する事態であると言えるでしょう。

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