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「わいせつ教師再任用反対」を阻む勢力の正体とは?現役探偵が怒りの告発

全国各地で多発し続けている、教師によるわいせつ事件。被害者は一生残る心の傷を負わされる一方、「加害教師」は何食わぬ顔で教壇に立ち続けるケースが多く報告されています。なぜ事件は頻発するばかりで改善されないのでしょうか。今回のメルマガ『伝説の探偵』では数多くのいじめ問題を解決に導いてきた現役探偵の阿部泰尚(あべ・ひろたか)さんが、実際に「全国学校ハラスメント被害者連絡会」の代表お二人から聞き取った教育現場でのわいせつ事件の実態を紹介するとともに、問題解決の糸口を探っています。

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文科省へ届けられた「わいせつ教師は教壇に二度と立たせないでください」の署名

2020年9月28日、「子どもへのわいせつ行為の前歴がある人へ、教員免許の再交付をしないでください」という署名(5万4,000人分)と懲戒処分となった教員が再び教壇に立たないように法改正を求める陳情書が文科省へ届けられた。

その後、萩生田文科大臣は会見で「わいせつ教師は教壇に立たせない」と発言し、この議論が始まった。

2020年11月現在、文科省は、児童や生徒へわいせつ行為をしたなどで懲戒免職となった教師の処分歴を閲覧できる期間を3年から40年間にすることで、この問題に対応しようとしている。

検索をする教育委員会などからは、閲覧できることで助かっている声が上がるというが、その実、教員の応募は5次、6次採用があるなど、年々少なくなっているとの見解もある。

また、都内などでは講師採用がここの所多く教職員が少ない状況が続いているという。

今回は、署名活動をして文科省へ重要提言をした「全国学校ハラスメント被害者連絡会」の代表のお二人から話を聞いた。

毎日のように報道されるわいせつ事件や暴力事件

読売新聞によれば、わいせつ行為やセクハラで懲戒処分を受けた公立小中高の教員は、2019年までの5年間で1,030人もおり、その半数近くが教え子や卒業生をターゲットにしたというのだ。

文科省の発表によれば、わいせつ行為等の相手の属性は、「自校の生徒」はおよそ半数で最も多かった、となっている。

さらに、日々流れているニュースに目を向ければ、11月6日には千葉県の公立高校で女子生徒が昨年3月7日の朝、卒業式の前に紙に黒染めスプレーをかけられたというのが人権侵害に当たるとして千葉県弁護士会が県教育委員会に警告した。

京都府ではソフトボール部員の女子生徒にわいせつな行為をしたとして顧問の教諭が懲戒解雇処分を受けたと報道された。

連日のように教師による暴力やハラスメント、わいせつ行為での事件報道がされているが、これは氷山の一角なのである。

わいせつ行為や暴力が問題視されていない現場

同会の代表によれば、小児性愛や依存症のように何度も繰り返すケースがあるというのだ。また、教職に就く過程で、何がハラスメントに当たるかについて徹底した研修などはなく、生徒に恋愛感情を持つことをおかしいと思わないきらいすらあるというのだ。

確かに私も他問題から派生した件である県の教育委員会で相談したことがあるが、ドラマ『高校教師』のごとく、在校生と教員が付き合っているという状況について「教師と生徒が結婚する例は普通にあり、在校中はさすがに問題だが、そこまで目くじら立てることはない」と言われたことがある。

他にも、小学生高学年の女子児童が身体を触られるという事案の際、当初は証言をしてくれていた同級生らが、教育委員会が調べ始めると証言を撤回し、証拠不十分となった件がある。

この教員については卒業生からも被害についての申告があったが、いずれも女子児童の勘違いでカタが付けられていた。結果、処分などはなく、懲戒処分などは何もなかったことになった。

中学校、高校の事例はさらに酷い。中学では内申に影響するかもしれないという心理的脅迫行為がまかり通り、高校では露骨な強制された性行為が行われていることも驚くほどのことではないのだ。

同会代表のお二方が言うように、現在報道されている驚くべき数字の被害者数は、氷山の一角に過ぎず、そもそも密室など、見えないところで行われるわいせつ行為やハラスメント行為は、骨折したなどとわかりやすい証拠があるわけではなく、証拠がないから立件できないと見過ごされるケースも多いのだ。

さらに、実際事態が明るみになっても、必ずしも懲戒処分が下されるとは限らない。

実は処分は一握りでしかない

しかも、同会代表によれば、「そもそも(文科省の言うわいせつ行為などで処分を受けた教師について3年から)40年間の閲覧は懲戒免職のみです」というのだ。

これでは、ただでさえ氷山の一角の被害であるのに、実際に処分などが下されたわいせつ教師のごく一部しか教育委員会などの採用側は知ることができない。

仮にすべての処分についてみることができるようになったとしても、まだ問題は隠されているのだ。

同会代表によれば、「小中に関してはわいせつ行為を受けた被害児童が相談するような受け皿が明確ではない」という。

これでは、被害が起きたとしても気が付かぬ間に何もなかったことになって見過ごされ、一部のわいせつ教師による被害者が次々と出てしまうのだ。

同会共同代表の郡司さんによれば、「地域差はあるが、イギリスではわいせつ教師は教壇には立てませんし、アメリカでは教師になる際に証明書が必要であったりしている」という。

確かに私の海外の友人は、日本はこうした問題では著しく意識が低く、立ち遅れた途上国だと言われることが多い。

「日本は子どもの権利条約を批准しているのに、批准しているいう意味を国民も議員も理解しているのか?」と言われるのだ。

簡単に言えば、被害を詳しく調査するという行政の動きも弱ければ関連する規制法もなく、ある意味変態ロリコン教師にとっては、学校はまさに餌だらけの天国ではないかと見えるらしい。

児童が被害者となるわいせつ事件や暴力の連鎖に詳しい精神科医によれば、こうした行為の加害者は支配的であり、常習性があり、ある種の依存症と言える状況にあるという。

「性犯罪は嗜癖・依存症です。いじめと同様に教育関係者の性犯罪は隠ぺいされており、調査がなされていません。信頼できる相談機関も探し出せないと思います」(精神科医)

何年も経ってから相談に来るケースもあるようで、治療をするだけで再犯防止などについてはつながらないのが現状なのだと話してくれた。

わいせつ教師再任用反対の流れを止めようとする勢力

一方で、規制には反対する動きもある。

いわゆる職業選択の自由があり、更生や冤罪ということもあるではないかというのだ。

このきな臭い背景には、この規制に反対する動きと同時に、少人数制学級の運用が取り上げられるも、教員不足は著しく、実現は難しいのではないかという論調が出始めており、教職免許などを緩和して、教師を派遣したらどうかという動きと連携しているという。

教職に規制が掛かれば、より審査は厳しくなる可能性があり、そうしたことを派遣側は弊害とみているのかもしれない。

ただこうした規制に反対する動きは、世論からすればごく少数の意見に過ぎないように見える。

ネットなどの意見を見る限り、「わいせつ教師は教壇に立つな」という意見に賛同する声は圧倒的多数だ。もしも、政治家が選挙でこれを無視すれば、大半の保護者、子育て世代の票は失うことになろう。

どうすればいいのか?

しかし、わいせつ教師を二度と子どもたちの前に立たせないとするには、具体的にはどうすればよいのだろうか。

そもそも子どもが被害を受ける子どもに関する施設内での事件は教職に限ったことではない。「東京シューレわいせつ問題」のように関連するような施設内でも起きることがあるわけだ。

同会代表によれば、「法改正を求めるとすれば、児童虐待防止法、学校教育法11条に罰則規定を設ける、教師基本条例や教師基本法を新たに求めて、教師によるいじめや性犯罪、体罰などを禁止する法律や条例を国や地方自治体に求めることなどが考えられます。」という。

一方で、「子どもに関する職業には資格を設け、チェック機能を強化するなど」子どもの安全を全てにおいて最優先する仕組みを構築する必要があるという。

特に、「批准した子どもの権利条約を基にした子ども条例を求めること」も大切だということでだった。

また、現在、内閣府が性犯罪や性暴力についてのワンストップセンターを推進しており、同被害についての調査に乗り出すようだ。

「それでもその調査などの対応は、高校生以上になっていますから、小中学生も調査の対象にして、早く実態をつかむように陳情したいと思っています」(同会代表)ということであった。

9月29日、萩生田文科大臣は記者会見でこう言っている。

「個人的には、わいせつ教員を教壇に戻さないという方向で法改正をしていきたい」

被害児童に実際に会っている私からすれば、現状では加害教員はしばらくすれば特に法の裁きも受けずに、「やってない、知らない」と言って教壇に戻ってしまうし、出世して管理職になることすらある。特に暴力系の教師は出世が早いように感じることすらある。

しかし、その一方で心を完全に壊してしまい、いつになれば回復するのか全く見込みも経たないような状態で、苦しんでいる被害者とその家族が実際いるのだ。

いつになったら我々は、加害者の人権、職業選択の自由に目を向けるばかりではなく、不当にも踏みつけられ、人権を蹂躙され性搾取された被害者の人権に目を向けるのだろうか。

聞けば、今回取材に応じてくれた「全国学校ハラスメント被害者連絡会」の両代表は、酷い誹謗中傷にさらされており、嫌がらせを常に受けている。

日本が加害者天国の社会にならぬよう賢明な市民である読者の皆様には、今一度、学校で起きるわいせつ問題に目を向けてもらいたい。

全国学校ハラスメント被害者連絡会ホームページ
(ホームページのリンクからこの活動に賛同する署名ができます。)

編集後記

今回はわいせつ教員問題を中心に、「全国学校ハラスメント被害者連絡会」の郡司さんと大竹さんから直接話を聞き、今ある問題やなかなか報道されない関連問題を教えてもらいました。

私個人としても一人の親の立場として、わいせつ教員には教壇に立ってほしくはありません。そもそも、生徒は先生を選べません。また、受験生の多くは、内申書を人質のようにされているケースもあります。自由に発言することを止められていることもあります。

立証の専門家という立場からしても、密室で起きた当事者間のみの被害を証明するのはほぼ不可能と言えます。何かの突破口を見出すためにはフラッシュバック覚悟の上で詳細に聞き取りをする必要があります。

まず今できることは、次の被害が起こらないように処分歴を検索できるだけではなく、もう一歩先に踏み出せるような仕組みや一定の規制法をまず作ることからだと思います。

ただ、実際の被害者やその被害に詳しい方々と話していると、わいせつ教師や暴力教師の事件という表面的なもの以外に、より深いところで見直さなければならないことがあると感じます。

根本的な問題にメスを入れるためにも、これから行うという内閣府主導の調査は幼保を含めて小中学生にも範囲を広げる必要はあると思います。しっかり調査し、しっかり分析し、根本的なところから直してもらいたいところです。

私はよく被害者側につきます。被害者の多くは長年に渡りその被害に苦しみます。乗り越えたと思える人でも、突然連絡が取れなくなり、「思い出してしまって死にたくなってしまった」という助けてのメッセージが届くこともあります。

あるニュースを観ていたとき、彼女らの一人がぼそりとつぶやいたのが今でも耳から離れません。

「未来とか将来とか人権とか、それ主語は加害者のでしょ?私には人権はないのかな?生きていたらいけないのかな?みんな私見て苦しくなっているみたい」

この子にあなたなら、何と返しますか?ぜひ、一度でも考えてみてほしいです。

 

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image by: Shutterstock.com

阿部泰尚この著者の記事一覧

社会問題を探偵調査を活用して実態解明し、解決する活動を毎月報告。社会問題についての基本的知識やあまり公開されていないデータも公開する。2015まぐまぐ大賞受賞「ギリギリ探偵白書」を発行するT.I.U.総合探偵社代表の阿部泰尚が、いじめ、虐待、非行、違法ビジネス、詐欺、パワハラなどの隠蔽を暴き、実態をレポートする。また、実際に行った解決法やここだけの話をコッソリ公開。
まぐまぐよりメルマガ(有料)を発行するにあたり、その1部を本誌でレポートする社会貢献活動に利用する社会貢献型メルマガ。

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