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自殺者が急増。新型コロナと菅政権の無策に殺される国民の悲劇

日本における10月の自殺者数が2,000人を超え、中でも女性は前年同月比で82.6%も増加したというニュースが、国内のみならず海外にも大きな衝撃を与えています。なぜこれだけの数の人々が、死を選ばざるを得なかったのでしょうか。今回のメルマガ『きっこのメルマガ』では人気ブロガーのきっこさんが、「旅行や外食どころではない人々への直接支援を怠った」として菅内閣を厳しく批判しています。

【関連】菅政権の無責任。“Go To Hell”で国民を追い込む日本のお寒い現実

急増する新型コロナ自殺

10月28日に配信した第92号の「今週の前口上」で、あたしは「ローカルニュースから見えて来る現実」というタイトルで、福岡県の天神の繁華街で起こった30歳の女性による恐喝未遂事件を取り上げました(「菅政権の無責任。“Go To Hell”で国民を追い込む日本のお寒い現実」)。読んでいない人もいると思うので簡単に説明しますが、親に捨てられて養護施設で育った中卒の女性が、新型コロナの影響で勤め先のうどん店を解雇されたことがキッカケの事件です。

その女性は、再就職の口を探しましたが仕事は見つからず、家賃が払えなくなったためアパートを出て、繁華街の公園で野宿しながら、昼間は「食べ物をください」と書いた紙を持って路上に立ち続け、必死に生き延びようとしました。そして、とうとう限界になり、近くの店に入って店員にカッターナイフを突き付けて「お金をください」と言ったのですが、店員に拒まれて恐くなり、店から逃げ出して交番に駆け込み、警察官に自分のしたことをすべて話し、その場で逮捕されたという事件です。

この女性には、情状面から執行猶予付きの有罪判決が言い渡されましたが、新型コロナの影響で仕事を解雇され、再就職の口が見つからずに生活に困窮している人は数えきれないほどいます。そして、その中には、この女性のように、生きるために犯罪に走ってしまう人もいれば、自らの命を断ってしまう人もいるのです。

新型コロナによる解雇や雇い止めは、10月までに6万人から7万人と報じられていますが、これは国が把握できる正規雇用など分かりやすいケースの話であって、氷山の一角です。第2次安倍政権で急増した非正規雇用や日雇い労働者などは、9割以上がカウントされていないと指摘する声もありますし、あたしのように新型コロナの影響で仕事がゼロになってしまったフリーランスは、すべてカウントから除外されています。

自民党政権は、こうした数字を常に少なく少なく発表しますが、森永卓郎さんの試算によると、新型コロナによって生活が困窮する労働者は、非正規やフリーランスも含めると、12月までに100万人を突破するそうです。政府は6~7万人と発表し、専門家は100万人と言っています。どちらを信じるかは1人1人の自由ですが、1つの指針として「自殺者の急増」があります。

厚生労働省が毎月発表している自殺者統計によると、10月の自殺者数は2,153人となりました。昨年10月は1,539人だったので、前年同期比で40%増です。日本の自殺者数は、ここ数年、毎月1,500人から1,800人の間を推移して来ました。しかし今年は、新型コロナが始まった2月から6月までは1,400人から1,500人台を推移していて、過去5年間の水準を下回っていました。しかし、前首相の安倍晋三が「Go To トラベル」を強行して行動制限が緩和された7月から1,800人超へと増加が始まり、10月にはついに2,000人を突破してしまったのです。

これは、安倍晋三のことが大嫌いなあたしが、何でもかんでも安倍晋三のせいにしているわけではなく、このデータを発表した厚生労働省の自殺対策推進室が述べていることです。急増した10月の自殺者数の内わけを見ると、30歳以下の若年層が2倍以上も増えているのですが、特に女性の自殺者は前年比80%以上も増えているのです。こうした調査結果を受けて、厚生労働省は「新型コロナとそれにともなう社会状況との関連性」について詳しく分析する方針を発表しました。

新型コロナの影響で仕事を失い、今年8月に恐喝未遂事件を起こしてしまった福岡県の女性も30歳です。この女性は「食べ物をください」と書いた紙を持って路上に立ち続けたほど生きることへの執念がありましたが、ここまではできずに死を選ぶ人がいてもおかしくありません。昨年10月と比べて600人近くも増えてしまった自殺者は、すべてとは言いませんが、その多くが新型コロナによる生活苦が原因なのではないでしょうか。もしも政府の支援が届いていたら、失われずに済んだ命だったのではないでしょうか。

アメリカの「CBS News」は、11月13日付で「Suicide claimed more Japanese lives in October than 10 months of COVID」(新型コロナによる10カ月間の死者数よりも、10月1カ月の自殺のほうが多くの日本人の命を奪った)と報じました。以下、記事の内容です。

新型コロナそのものよりも、新型コロナの影響による経済的悪化が、遥かに多くの日本人の命を奪っている。日本は新型コロナの流行を他の国よりもうまく管理しており、死者数は10月までに全国で約2,000人ほどだ。しかし、警察庁の統計によると、自殺者は10月だけで2,153人に達し、4カ月連続で増加し続けている。日本の自殺者は10月までに1万7,000人を超えており、10月の自殺者数は前年比600人増加した。女性の自殺者は80%以上も急増し、全体の3分の1を占めるようになった。日本の女性はもともと家事や育児などの負担が大きいが、現在はさらに新型コロナによる失業と不安の矢面に立たされている。また、男性がテレワークで自宅にいる時間が長くなったため、既婚女性は家庭内暴力を受けるリスクが高まっている。

菅義偉首相は21日、これ以上「Go To キャンペーン」を強行し続けると批判が大きくなり過ぎると総合的、俯瞰的に判断したようで、ようやくキャンペーンの見直しを発表しました。しかし、これはあくまでも批判を回避するためのポーズに過ぎません。口では「国民の命と暮らしを守るため」などと述べましたが、その内容は各自治体へ丸投げ、政府主導の具体的な指示は何ひとつありませんでした。

そもそも、本当に「国民の命と暮らし」を「守ろう」と考えているのなら、感染が拡大している時に、第2弾の「Go To イート」を強行したりはしません。すぐに「緊急事態宣言」発令し、全国民に休業補償を行なうのが筋です。しかし、菅首相は真逆のことを行ない、全国の感染を拡大させてしまいました。まるで、火災現場に駆け付けた消防車が、消火剤の代わりにホースからガソリンを撒いているような真逆ぶりです。

そして、もっと根本的なことを言わせてもらえば、「Go To キャンペーン」より先にやるべきことがあったはずです。新型コロナの影響で仕事を失った人たち、収入が無くなり生活に困窮している人たち、生きるために犯罪に手を染めようとしている人たち、死を選ぶしかないところまで追い詰められてしまった人たち、ようするに「旅行や外食どころではない人たち」への直接支援を優先すべきだったのです。

16日、東京都渋谷区のバス停のベンチに座っていたホームレスの64歳の女性が、近くに住む男に石を入れた袋で殴られて死亡するという痛ましい事件が起こりました。この女性は、今年の春から路上生活をしていたと報じられていますので、もしかしたら福岡県の30歳の女性と同じく、新型コロナの影響で住む場所を失ったのかもしれません。福岡県の女性は、逮捕された時の所持金がわずか257円だったそうですが、渋谷区で殺された女性は、8円しか持っていなかったそうです。3,000円のパンケーキを食べながら「国民の命と暮らし」を語る首相にとって、こうした人たちは「国民」ではないようです。

(『きっこのメルマガ』2020年11月25日号より一部抜粋・文中敬称略)

image by: 首相官邸

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