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命より利権。新型コロナ禍の医療崩壊と精神病院の「意外な関係」

勢いを増すばかりの新型コロナウイルスの感染拡大。第3波只中の今、日本の医療体制は崩壊寸前とも言われていますが、その原因は意外なところにもあるようです。今回のメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』では元国税調査官で作家の大村大次郎さんが、総病床数は世界でもトップクラスの多さを誇る我が国に集中治療室が異常に少ないという事実と、そのようなアンバランスな状況を生み出した「許し難い理由」を白日の下に晒しています。

※本記事は有料メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』2021年1月1日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール大村大次郎おおむらおおじろう
大阪府出身。10年間の国税局勤務の後、経理事務所などを経て経営コンサルタント、フリーライターに。主な著書に「あらゆる領収書は経費で落とせる」(中央公論新社)「悪の会計学」(双葉社)がある。

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なぜ日本はコロナ重症者が少ないのに医療崩壊に瀕しているのか?

新型コロナの感染拡大が止まりませんね。昨年の大晦日は東京では1,300人を超えてしまいました。

そして、昨今、けたたましく聞こえてくるのが「医療崩壊」という言葉です。このまま行けば医療崩壊してしまう、と。

新型コロナ感染に気を付けなくてはならないのは、当然のことです。自分のため家族のため国のために、それは絶対に必要なことです。

が、たびたび発せられる「医療崩壊」という言葉には違和感を覚えないでしょうか?

ご存知のように、日本はほかの東アジア諸国と同様に、ファクターXというよくわかっていない理由により、欧米よりも感染者の数が桁違いに少ないのです。重症者や死亡者の数も桁違いに少ないです。アメリカでは30万人が亡くなっていますが、日本では3,000人です。アメリカの100分の1なのです。人口数を差し引いても、やはり大幅に少ないという事が言えます。ヨーロッパでも、アメリカと同様に重症者や死亡者が日本より桁違いに多いです。

でも欧米では壊滅的な医療崩壊は起きていません。

逆に言えば、これは日本にとって恐ろしいことではないでしょうか?

もし、日本にファクターXがなく、欧米と同じような感染拡大が起き、重症者が生じたら、日本の医療は一体どうなっていたんだろう、と。なぜ日本医療は欧米の何十分の一の感染者で、ここまで揺らいでいるのか?そういう疑問を持っている人も多いはずです。

今回はその疑問にお答えしたいと思います。予定していた竹中氏と橋下氏との関係については次号以下でお伝えします。

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日本医療のいびつな構造

日本の医療というのは、実は非常にいびつな構造になっています。

あまり知られていませんが、日本は異常に病院の数が多いのです。日本には9,000近くの病院、診療所があり、断トツの世界一なのです。世界第2位はアメリカですが6,000ちょっとしかありません。アメリカは日本の2倍以上の人口を持つので、これは異常値です。日本の人口100万人あたりの病院数は約67です。欧米の先進国の場合、もっとも多いフランスでも約52であり、アメリカなどは18しかありません。つまり人口割合でみると日本はアメリカの約3倍の病院があるのです。

また病院が多いという事はもちろん病床数も多いです。先進国の中で病床数でも、日本は断トツで多いのです。

その一方で、集中治療室は異常に少ないのです。以下が、主な先進国の人口10万人あたりのICU(集中治療室)の数です。

アメリカ 34.7
ドイツ  29.2
イタリア 12.5
フランス 11.6
韓国   10.6
スペイン  9.7
日本    7.3
イギリス  6.6

 

(OECDデータより)

日本は、韓国はおろか春先に大量の死者を出したスペインよりも少ないのです。OECDの加盟国の中では下から2番目という低さです。

つまり、病床数は多いのに集中治療室は少ない、だから新型コロナの重症者が増えると医療崩壊してしまうということなのです。では、なぜ日本では集中治療室が少ないのでしょうか?

その答えを探る時、日本医療の闇に突き当たるのです。

実は日本の医療というのは「いびつなシステム」になっています。「いびつなシステム」を具体的に言えば、

です。

日本の医療費の多くが、開業医と精神病院に割かれているために、本当に必要な場所に医療費が賄われていないのです。だから、集中治療室も足りないし、PCR検査体制も整っていなかったのです。そして一部の医療関係者だけが多額の収入を得ることができ、ほかの大半の医療関係者にはなかなか回されないという状態になっているのです。

医者には大きく分けて、「開業医」と「勤務医」の二種類があります。日本の場合は開業医の数が異常に多く、全体の3割にも達するのです。また病院の9割は民間病院であり、その大半が開業医なのです。しかも民間病院には事実上の世襲制になっているところも多く、「開業医の子供は医者になる」ということが半ば定型化しています。

だから日本ではこれほど病院が多いにもかかわらず、国公立病院が異常に少ないということになっているのです。国公立病院は日本の病床数の20%程度しかないのです。先進諸国では、病床の大半が国公立病院だというのに、です。

そして、民間病院というのは、手間がかかる上にリスクの多い重症患者などはあまり受け入れたがりません。だから民間病院では集中治療室などはあまり設置されていません。そのため、日本では集中治療室が異常に少ないという状況に陥っているのです。

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なぜ日本では精神病院が異常に多いのか?

さらに恐ろしい事実をお伝えしなくてはなりません。日本の医療では、民間病院とともに「精神病院」も異常に多いのです。あまり知られていませんが、日本は世界の中で精神病院が異常に多い国なのです。しかも「入院型」の病院が多いのです。

日本に精神病患者がそれだけ多いというわけではありません。世界全体が精神病の治療を「入院型」から、「通院型」へ切り替えているのに、日本だけが「入院型」の治療を続けているからなのです。しかもその要因が「利権」なのです。

日本の精神科の病床は33万1,700床にのぼり、日本の病床のうち、21.3%は精神科の病床なのです(2017年10月時点)。これは世界的に見て異常な多さなのです。

OECDの中で、人口1,000人あたりの精神科ベッド数は、日本が2.6床で断トツの1位なのです。2位のベルギーは1.4床なので、ダブルスコアに近い差があります。そしてOECDの平均は、0.7床しかありません。つまり、日本はOECD諸国の平均よりも、3.5倍の精神科病床を抱えているのです。

なんと日本は世界の精神病院の病床数の約5分の1を占めているのです。

そして、日本の精神科病床にはもう一つ大きな特徴があります。それは、民間の病院が非常に多いということです。精神科病床のうち、7割が民間の精神科病院のものなのです。OECD諸国の精神科病床のほとんどは公的病院なので、日本のそれは明らかに異常なのです。

精神科の病床というのは、世界的に見ると1960年代から急激に減少し始めました。薬物治療の発達などで、これまで入院隔離が主流だったものを、通院治療、社会復帰が主流となっていったからです。

しかし、日本では逆に1960年代以降、精神科の病床が増えているのです。

それはなぜでしょうか?

日本は戦前から1950年代まで結核大国であり民間の結核療養所が多々ありました。結核は、感染症であり、戦前は不治の病とされ、発病してから死ぬまでの間に、隔離療養する施設が必要だったのです。

が、戦後は抗生物質による治療法が普及しほとんどの人が完治するようになったため、療養施設の必要性がなくなりました。

その大量の療養施設が、精神科に衣替えしたのです。そして、その大量の日本の精神科病院は、世界の国々が精神科の治療を通院治療に切り替えてからも、たくさんの病床を抱え入院治療を継続しつづけてきました。

それは、民間の精神科病院の既得権益を守るためです。精神科の病院関係者たちは、必死に政治家に働き掛けて、日本の精神医療を旧態依然のまま残させてきたのです。

もちろん精神病院これだけ多いということは、日本全体の医療費の多くが精神病院に流れているということです。そのために、国公立病院が整備されず、集中治療室もつくることができないのです。「国民の健康よりも、民間病院の権益を優先する」それが、日本の医療の根本姿勢なのです。

このことは、少し調べれば誰でもわかることです。私が、医療関係者の秘密書庫に潜り込んで、新資料を見つけ出して発表しているわけではありません。公表されている統計データを見れば、誰でも日本の民間病院、精神病院が異常に多いことは、わかることなのです。なぜメディアはもっとこのことを報じないのか不思議でなりません。

新型コロナで、日本に異常に集中治療室が少ないという事は、春先に少し話題になりましたが、その原因をしっかり突っ込んでいるメディアはほとんどありませんでした。

このままでは、日本は本当に危ないです。新年早々、暗い記事ですみません。が、このことは国民として知っておかなくてはならないことだと筆者は思います。

image by: nhk_nhk / Shutterstock.com

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