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緊急事態「延長」賛美で国民を自殺に追いやるマスコミ人のアホさ具合

1日、菅首相から緊急事態宣言の1ヶ月程度の延長が発表され、営業時間の短縮および休業を余儀なくされている飲食店にとって厳しい状況が続いています。このままでは自殺者が増え、経済に悪影響が出ると警告し続けている京都大学大学院教授の藤井聡さんは、自身のメルマガ『藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~』の中で、出演したラジオ番組で起きたというアナウンサーとのエピソードを紹介。まったく会話が噛みわないという出来事から感じた不適切で不道徳な価値観と、それが当たり前のように蔓延している日本の行く末に懸念を示しています。

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世論に併せて緊急事態宣言を取り敢えず延長する政府と、それを何とも思わない世論の冷たさが、多くの人を自殺に追いやっている

当方、いろいろなメディアで様々な方と話をしたりインタビューされたりすることが多いのですが、この度、当方が申し上げていることが全く伝わらず、大変に残念な思いをしたことがありましたので、今日はその話をしたいと思います。

当方、毎週ラジオ番組に出ているのですが、その最後にいつも15分の解説コーナーで、じっくりお話ししたいことをお話しています。そのテーマはいつも、ラジオ局のスタッフの皆さんにご選定いただき、その台本にそって、お話しをさし上げています。

スタッフの皆さんはいつも当方のSNSの発言などをチェックしておられて、当方がどういう主張をしているのかを踏まえてテーマを選定いただくので、おおよそいつも、その時々で一番言いたい事が選定されています。

そして、その番組のアナウンサーさんにインタビューされる形で、そのテーマについて解説していくわけです。

で、今回のその15分の解説コーナーで取り上げられたのが、

政府内で強まる緊急事態宣言の延長論

についての話。今、政府では、「新規感染者数」が一定値以下に収まってきたら解除するけど、まだまだ多いからダメだ、延長だってことになっているようです。

ですがこの話、よくよく考えるとホンットにアホ極まりない話です。

そもそも、「その時点での新規感染者数」ってのは「2週間前の感染者数」なわけですから、「その時点での新規感染者数」が少なくなったかどうかで、今、宣言を解除するかどうかを考えるのは、アホとしか言いようがありません。

それは2週間前に火事がありましたって通報があって、火を消すための水を今、出し続けましょう、と言ってるみたいなものだからです。だから、2週間前の火事についての通報で、今水を出すか止めるかを決めるのはアホだ、という話をしているだけです。

この程度の事は、頭が良かろうが悪かろうが、むしろどんな人でも、人の話さえゆっくり聞いていれば絶対にスグに分かるような話です。

(しかもデータを見ると、緊急事態宣言の2週間以上前の12月24日頃に「感染日ベースの感染者数のピーク」があり、それ以後一貫して感染者数は収束に向かっており、したがって、緊急事態宣言に「よって」収束に向かってきているという事実は全く存在しないにも拘わらず、「発覚日ベース」のピークは、緊急事態宣言の発出日とほぼ同じで、多くの人が、「宣言に『よって』収束に向かい始めた」と誤解している、っていうの点もまた、アホ極まりない話です)

まぁ兎に角、ちょっと考えればどんなアホでもスグに分かるようなことを考えもしない、なんてアホな事をよりによって政府がやっちゃダメですよね。

緊急事態宣言を続ければ続けるほど、飲食店を中心に経済被害が拡大していくんだから、政府のいい加減な緊急事態宣言の延長論は、飲食店をただただ無駄に破壊して、多くの自殺を誘発するだけの話になってますよね、って話をしようとしたのですが……残念ながら、目の前におられるアナウンサーの方には、上手く伝わらなかったようなのです。

アナウンサーの方は本当は分かっていて、あえて、分からないふりをしたのかどうかは分かりませんが、事実として兎に角、当方の見解への「理解」を全く示さず、会話が全てチグハグで、掛け合いがトンチンカンになってしまったのでした。

この時思ったのですが、やはり、生まれ育った文化圏が違うと、会話を成立させるのがしばしば困難となるんだなぁ、という点。

そもそも、関西では、日常であろうが、ラジオであろうがなんであろうが、兎に角「人の話を聞く」という時には、賛成反対はさておき、一端は「なる程」と理解する(ないしは、分かるまで質問をする、あるいは、どうしても分からなければ分かりません、と言う)「義務」を負います。さもなければ会話が成立せず、人間関係がそこで構築されなくなるからです。

ましてや、インタビューにおいては聞き手は話者が話そうとしている内容をしっかり理解する「義務」が一般の会話よりもより強いですから、理解をおざなりにするのはとりわけ不適切、不道徳だということになります。

しかも、その話の内容が、「緊急事態宣言を、政府がロクに考えず、世間から批判されたくないばっかしにいい加減に先延ばしすることで、店が潰れて、人が死にますよ」という深刻かつシリアスな話の場合、その話の理解をおざなりにするのは、さらにさらに不適切、不道徳、ということになります。

ですから、そんな時に、人の話を聞いといて「なる程、そうなんですね」とか「ちょっと分からないんですが……それってどういう事ですか?」と、話の「中身」に対して感心を向けず、表面的な言葉ばかりをつないでいくという行為は、少なくとも関西、というか、当方が生まれ育った日常空間においては極めて不適切、不道徳となるわけです。

……ですが、今回、ご一緒したアナウンサーさんの話しぶりを見て、どうやらそういう価値観は、一度関西の外に出ると、さして重視されていないんだなぁ、と感じた次第です。

ちなみに、当方の親しい周りの者に聞いたところ

『藤井さんの話、メッチャ分かり易いやん。分からへんってこと、普通無いと思うで。でも、このアナウンサーの人、何にも分かってはらへん感じやなぁ。分かってないのに適当な事ばっか言ってはるだけやから、なんか話がトンチンカンになってるなぁ』

という、当方のイメージと全く同じ理解でした。さすが関西人、思うことは、やっぱ一緒なんや…と思った次第です (^^ )

にも関わらず、そういう反応は、あくまでも当方の周りの関西の方々だけで、ネット上では、誰もそのアナウンサーさんの反応に対してオカシイとは言っていない……というのを見ると、当方としてはさらにさらに、「人の話を理解しながら会話するのが、人の話を聞く時の義務だ」っていう道徳観・倫理観は、関西の外では(少なくとも今の日本では)あまり通用しないんだなぁ、と思った次第です。

しかし、これは相当に悲しく、そして、深刻な問題です。

まず第一に、先ほどもお話ししましたとおり、今回の当方の主張は、政府のアホさによって、店が潰れて人が死ぬ、っていう話なわけです。だから、もしそれが正しいとしたら、トンデモ無くヤバイ話なわけです。

いわば、目の前で殺人事件が正に今、起こりつつあり、それを目撃した僕が、電話を持っている人に対して「今、人が殺されかけてる、その電話で警察を呼んでくれ!」と叫んでるのに、僕の話を何も理解しようとしないで、「藤井さんの話は難しいですねぇ」だとか「そういうのが分かるのは、藤井さんが頭がいいからですよ」だとか「藤井さんはそう思うんですね」と返事してるのと何も変わりません。

結局、そんな対応をしていれば、殺人事件は成就し、実際に目の前で人が殺されてしまうのです。こういう状況では、当方は、そのニタニタして僕の話を理解しない人を、殺人者と同じような輩だと思っても仕方ないように思います。

第二に、会話において人の話を理解しないのが当たり前だ、ということが成立している世の中って言うのは、結局、誰もが誰もと人間関係を成立させることが不可能になる、という意味において、相当に深刻です。

例えば、その弊害の一つが、上記の殺人事件の目撃者の話ですが、それに限らず、人が人の話を理解しないことが前提となれば、どれだけ悩みを打ち明けても、死にかけてるから助けてくれと切実に訴えかけても、結局何も理解されず「へぇ、そうなんだぁ」って言われるほか無くなってしまうからです。

僕はそういう社会は、ホントに恐ろしい社会だと思います。

人は誰しも、助け合っていかなきゃ生きていけないのに、人が人を理解する義務を負わない社会では、助け合いなんて何も出来なくなるからです。

(メルマガ『藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~』2021年1月30日配信分より一部抜粋)

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2021年1月配信分
  • 世論に併せて緊急事態宣言を取り敢えず延長する政府と、それを何とも思わない世論の冷たさが、多くの人を自殺に追いやっている。(1/30)
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2020年12月配信分
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image by: 首相官邸

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京都大学大学院・工学研究科・都市社会工学専攻教授、京都大学レジリエンス実践ユニット長。1968年生。京都大学卒業後、スウェーデンイエテボリ大学心理学科客員研究員,東京工業大学教授等を経て現職。2012年から2018年まで内閣官房参与。専門は、国土計画・経済政策等の公共政策論.文部科学大臣表彰、日本学術振興会賞等、受賞多数。著書「プライマリーバランス亡国論」「国土学」「凡庸という悪魔」「大衆社会の処方箋」等多数。テレビ、新聞、雑誌等で言論・執筆活動を展開。MXテレビ「東京ホンマもん教室」、朝日放送「正義のミカタ」、関西テレビ「報道ランナー」、KBS京都「藤井聡のあるがままラジオ」等のレギュラー解説者。2018年より表現者クライテリオン編集長。

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【著者】 藤井聡 【月額】 ¥880/月(税込) 【発行周期】 毎週 土曜日

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