MAG2 NEWS MENU

Japan's Pension Handbook. Decreasing blue bar graph. Anxiety about the future. Low birthrate and aging society. Translation: pension.

年金保険料の「免除制度」を利用した場合、将来いくら年金が貰える?

収入の減少や失業等により国民年金保険料を納めることが経済的に困難な場合、保険料の免除制度というものがあります。よく知られている「全額免除」のほかに、実は「部分免除」という種類もあることをご存知でしょうか。そして、免除制度を使った場合、自分の年金はいくら支払われるのでしょうか? 今回の無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』では著者のhirokiさんが、この国民年金保険料の免除について詳しく解説しています。

今日はよく苦手意識を持たれる、保険料免除分の年金計算をザッと復習していきましょう

国民年金から支給される基礎年金には年金の2分の1に相当する税金が投入されています(平成21年3月までの期間は3分の1でした)。税金額としては現在は年間11兆円ほど。なので、以前は保険料の全額免除をしたとしても老齢基礎年金額の2分の1に反映する事を話しました。

例えば20歳から60歳までの480ヶ月間の間に、厚年期間240ヵ月と国民年金保険料を納めた期間が30ヶ月、平成21年3月までの全額免除90ヵ月、平成21年4月以降の全額免除が120ヶ月あったとします。

そうすると老齢基礎年金額は令和3年度満額780,900円÷480ヶ月×(240ヶ月+30ヶ月+90ヶ月×3分の1+120ヶ月×2分の1)=780,900円÷480ヶ月×360ヵ月=585,675円(月額48,806円)となります。他に過去の給料に比例した年金である厚生年金が支払われる。

2分の1に反映とか3分の1に反映とか言われても実際どのくらいの年金額になるのかピンとこないですが、計算としては上記のような流れです。全額免除の期間に税金反映分の2分の1を掛けるだけ。実際計算してみないとわからないものは多いです。

ところで国民年金保険料免除にはいくつか種類があります。全額免除の他に平成14年4月から半額免除、平成18年7月から4分の3免除と4分の1免除が導入されました。保険料の一部を免除するのでこれらを一部免除とか部分免除といいます。

なぜこのように保険料の免除が段階的に免除できるようになったのかというと、従来は保険料を納めるか全く納めないかの2択しかなかったですが保険料額も高額になって来たし、個人個人の負担能力に応じた免除制度にするためです。平成元年に入った時は月保険料が8,000円ほどでしたが、平成10年頃は13,300円にまで上がってきましたからね。

ところが、この部分免除(約40万人)は全額免除(約580万人)に比べると、あんまり利用者は居ないんですよ。大体は全額免除。

さて、記事冒頭で全額免除は基礎年金の2分の1に反映すると言いましたが、半額免除とか4分の1免除、4分の3免除は一体どのくらい基礎年金額に反映するでしょうか?半額免除なら…半額だし、基礎年金の半額かな!?と思ったかもしれませんが、それは全額免除の場合ですよね(笑)。半額免除なのに年金の半額にならないというのは混乱しそうですよね^^;

この考え方は国の税金と自分の保険料の両者の関係で考えなければいけません。まず、満額の基礎年金を支払うために、国が2分の1の税金を負担し、自分の保険料2分の1も負担します。国が2分の1+自分が2分の1を合わせると1になります。つまり1は満額という意味です。基礎年金は国と自分の保険料合わせて1になるので、保険料だけで考えてはいけないんですね。令和3年度国民年金保険料額は月額16,610円ですが、国も同じく16,610円を負担してるって考えるといいですね^^
さて、さっきの半額免除に話を戻しましょう。国が2分の1+個人が2分の1負担しますが、この時に個人の保険料2分の1を半額免除(つまり半額は支払う)するんです。という事は自分の負担は2分の1×2分の1=4分の1になります。その4分の1に、国が税金2分の1投入してきます。そうすると自分が4分の1+国が2分の1負担なので、基礎年金額に反映するのは4分の3という事です。

では4分の1免除(→残り4分の3を払うという事に気を付けましょう)はどうするか?これも同じ事ですね。国が2分の1税金+自分の保険料が2分の1×4分の3(←4分の1免除して4分の3を払うから)=国の税金2分の1+自分が8分の3=8分の7。

(※ 補足:自分の保険料支払い分2分の1のうち4分の3は支払うと考える)

4分の1免除は将来の老齢基礎年金の8分の7になるって事ですね。

では、最後に4分の3免除(残り4分の1は納める)はどうなるか。国が2分の1+自分の保険料2分の1×4分の1=国2分の1+自分の保険料8分の1=8分の5が基礎年金に反映。

まあ、これらの一部免除がどのくらい基礎年金に反映するかの割合は、数字を覚えておくのもいいですが考え方を知ってれば数字を忘れても導き出す事が出来ます。一応確認のために基礎年金の計算をしてみましょう。

20歳から60歳の間に厚生年金期間100ヶ月、平成21年3月までの全額免除30ヶ月、平成21年4月以降に全額免除160ヶ月、平成21年4月以降に半額免除40ヶ月と4分の3免除80ヶ月、4分の1免除32ヶ月。38ヶ月は未納。なお、20歳前に12ヶ月と、60歳から65歳までの間に40ヶ月間厚生年金に加入とする。

・65歳から貰える老齢基礎年金額→780,900円(令和3年度満額)÷480ヶ月×(厚年期間100ヶ月+平成21年3月までの全額免除期間30ヶ月×3分の1+平成21年4月以降の全額免除160ヶ月×2分の1+半額免除40ヶ月×4分の3+4分の3免除期間80ヶ月×8分の5+4分の1免除期間32ヶ月×8分の7)=780,900円÷480ヶ月×298ヶ月=484,809円(月額40,400円)になります。

未納期間、20歳前と60歳以降の厚年期間は基礎年金額には反映しないのでそこは算入しないようにしましょう^^

余談ですが国民年金からの遺族給付である遺族基礎年金や、障害給付の障害基礎年金はこのような計算は行わずに満額の780,900円を保障する。障害基礎年金1級は780,900円×1.25=976,125円。

※ 追記

国の税金が2分の1ではなく3分の1の時の考え方も同じなんですが、例えば半額免除とします。国が3分の1税金負担+自分が残り3分の2の保険料を負担して満額の基礎年金になります。半額免除なので、国3分の1+自分3分の2×2分の1(半額)=3分の2が基礎年金に反映。

image by: Shutterstock.com

年金アドバイザーhirokiこの著者の記事一覧

佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
私のメルマガの場合、よく事例や数字を多用します。
なぜなら年金の用語は非常に難しく、用語や条文を並べ立ててもイメージが掴みづらいからです。
このメルマガを読んでいれば年金制度の全体の流れが掴めると同時に、事例による年金計算や考え方、年金の歴史や背景なども盛り込みますので気軽に楽しみながら読んでいただけたらと思います。

無料メルマガ好評配信中

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座 』

【著者】 年金アドバイザーhiroki 【発行周期】 不定期配信

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け