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Inn (hanko) means Seal, Japanese word

増え続ける「押印不要」書類。本当にハンコがなくても大丈夫なのか

新型コロナウイルスで二度の緊急事態宣言が発出され、外出の自粛が要請されたことで、役所への申請や企業の契約書など、さまざまな手続きにも影響が出ています。今回の無料メルマガ『新米社労士ドタバタ日記 奮闘編』では、一時期話題になった「押印不要」になった書面の現在について紹介、そしてそれらの書類に対する初歩的な疑問について会話形式で解説しています。

「押印書面」見直し

コロナ禍、2回目緊急事態宣言中。延長も決まった。個人事業主は、確定申告の提出時期が近づき、1年間の入力漏れを急遽入れながら、チェックと内容見直し中。

——

新米 「昨年から、押印不要って言われてましたけど、いよいよいろんな書類に反映されてきましたね」

大塚T 「そうそう、36協定もそうなるって聞いてたけど、パンフも出てきたわね」

深田GL 「これだろ!『2021年4月~36協定が新しくなります』って言うタイトルだね」

E子 「この間、書式が変わったばかりなのにね~」

大塚T 「そうですよね~。押印がなくなるだけでまた新しいパンフつくるんですね」

深田GL 「36協定届における押印・署名の廃止。36協定の協定当事者に関するチェックボックスの新設」

新米 「チェックボックスがまた増えるんですね」

大塚T 「チェックボックスで、署名押印の代わりになりますかねー」

新米 「労使協定の意味が薄れるというか…」

E子 「雇用調整助成金の申請書でも押印箇所がなくなったでしょ」

大塚T 「そうですよねー」

深田GL 「あれ、ホントに良いのー?って思います」

E子 「私も。もう押印いらないって言われてもまだもらってるわ」

新米 「何でも有りになってしまうようで、コワイです」

深田GL 「うん、悪くとれば、好き放題できるもんな」

大塚T 「そうなんですよ。日本って判子社会だったのに、ここまで変わっていいものか…」

E子 「コロナ禍だからって意味もあるでしょ」

大塚T 「『行政手続における書面主義、押印原則、対面主義の見直しについて』の規制改革推進会議では、新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、また、デジタル時代を見据えたデジタルガバメントの実現のため、とありますね」

E子 「行政手続等についても【緊急対応】では、文書をPDF等によって添付する形でeメールでの提出やオンライン提出を認める。その際、押印については、押印の廃止、省略等をする。添付書類のうち、直ちに提出が困難なものについては、添付の省略又は後日送付を認める。とあるわ」

大塚T 「押印が求められている趣旨としては3点があがっています。

1.本人確認(文書作成者の真正性担保)
本人確認のための手法は他にも多数ある上、実印による押印でない場合には本人確認としての効果は大きくないことに留意する。

2.文書作成の真意の確認
本人確認がなされれば通常の場合には不要であると考えられることに留意する。

3.文書内容の真正性担保(証拠としての担保価値)
実印でない押印の意味は必ずしも大きいと言えないこと、文書の証拠価値は押印のみによって評価されるわけではなく手続全体として評価されることに留意する」

E子 「押印を代替する手段としても、いろいろあるから読み上げていくわね。

  1. 継続的な関係がある者のeメールアドレスや既登録eメールアドレスからの提出
  2. 本人であることが確認されたeメールアドレスからの提出(本人であることの確認には別途本人確認書類のコピー等のメール送信を求めることなどが考えられる)
  3. ID/パスワード方式による認証
  4. 本人であることを確認するための書類(マイナンバーカード、運転免許証、法人の登記書類、個人・法人の印鑑証明書等)のコピーや写真の PDF での添付
  5. 他の添付書類による本人確認
  6. 電話やウェブ会議等による本人確認
  7. 押印のなされた文書の PDF での添付
  8. 署名機能の付いた文書ソフトの活用(電子ペン等を用いた PDF への自署機能の活用等)
  9. 実地調査等の機会における確認

以上!…」

深田GL 「今後、さらには行政ではどうするのか?っていう、行政手続等の類型毎の対応方針も知っておきたいね」

大塚T 「まず、社会保険・労働関係(健康保険、雇用保険、労働基準、労働安全等の各種申請・届出)については、オンライン利用率が低い手続が多いので、オンライン利用の周知を行うとともに、使い勝手の改善を行う。また、必要不可欠な文書以外については緊急対応時は提出を求めないなど、申請者負担の軽減を図る。必要であれば電話・メール等で内容を確認することも可能であるため、押印を求める必要性は低い。ということです」

E子 「各種証明書(就労証明書、在職証明書等)については、オンライン申請を進める、その他各種証明書では事業者の押印を廃止する方向、PDFファイル等による書類提出を認める。そういう方向でいくってことよね~」

深田GL 「僕は、従業員本人の内容確認の証拠性を高めるためには、押印がもらえるならもらっておいた方が良いと思うよ。押印がない書類は、従業員本人又は従業員代表の意思に反した文書としてトラブルになり得るリスクがあるもんな~」

大塚T 「どうもハンコをなくすことが、手段でなく目的になってしまっているように思いません?」

E子 「そうよねー。押印なくせばOK!で、そもそもその意思確認プロセスが必要かどうかということについての議論されていないのはおかしくない?『本人の意思確認がどこまで必要か?』について、各書類ごとに判断すべきものよね~」

新米 「あっ、ボク、良いこと考えました!」

大塚T 「何?」

新米 「36協定、押印してもらえる事業所では新しい書式に移行しないで、今のまま使えば良いんじゃないですか」

大塚T 「あ、それ良いかも。あんたもたまには機転が利くじゃん!」

新米 「でしょー。そうしたら、また新しい書式に移行しなおす手間もなくなる…」

E子 「ブッ、ブッー!残念でした~。前の書式使うのは構わないけど、チェックボックス部分を添付して届出しないといけないんだって」

深田GL 「それは、社労士事務所としては格好悪いし、違う意味で手間だね」

新米 「あちゃー。ダメでしたか…」

image by: Shutterstock.com

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【著者】 イケダ労務管理事務所 【発行周期】 週刊

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