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【書評】やがては5人に1人が発症。人気作家が描く認知症の現実

人生100年時代を迎えようという現在、もはや誰にとっても特別なものではなくなった認知症。その「症状」等を知る際に何より役立つのが、認知症と診断された方の手記ではないでしょうか。今回の無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』で編集長の柴田忠男さんが取り上げているのは、軽度のアルツハイマー型認知症である人気作家が、自らを「取材」した一冊。著者の認知症を受け入れる姿勢は、万人の参考になりうるものでした。

偏屈BOOK案内:川北義則『ボケの品格 清く、気高く、いさぎよく』

ボケの品格 清く、気高く、いさぎよく
川北義則 著/徳間書店

さいきん妻から「ボケたんじゃないの」とよく言われる。正直、ボケたと自覚することは度々ある。別にショックでもなんでもないが、ちょっと不自由になったなあと思う。

同時に気楽になる。だってボケちゃったんだもん、と居直ることができる。その時々の都合で、ボケたりボケなかったりする。

川北義則さんは往年のベストセラー『男の品格』の著者。いま84歳。

行きつけの病院の担当医に「軽度のアルツハイマー型認知症です」と告げられた。認知症は脳の萎縮が原因とされる。医者が示した画像には、はっきりその兆候が見て取れた。

彼はきわめて冷静に診断を受け入れた。物忘れが増えたり、曜日が一瞬思い出せなくなったりし始めていたからだ(わたしの現状はまさにそれだよ:柴田)。

川北さんは、速く走れなくなる、瞬発力がなくなる、皺が増える、耳が遠くなるといったことと同様に、認知症も加齢とともに生じる、ある種の現象なのだと割り切ることにした。

「それだけ長生きできたということだ」と結論づけ、「ボケたからといって、できることはまだまだある」とポジティブに考える。

認知症は加齢に伴うある種の自然現象にすぎない。

医者の話では、認知症という診断に怒ったり、塞ぎ込んだりする高齢者も多いらしい。かつては「痴呆症」と、侮蔑的ニュアンスで呼ばれていたため、恥ずべきことと感じてしまうのだろう。

でも、認知症は進行を抑える薬もあるし、早めに意識的に対応策を実践すればQuality Of Life(生活の質)を低下させずにすむといわれている。

思考力、記憶力が低下しつつあることは否定できない。しかし、それでも消滅したわけではない。わたしはそんな現実をきちんと受け入れ、その現実と折り合いをつけながら、生きていこうと思っている。

じつに潔い。それしかないけどね。そして、「せっかく認知症になれたのだから」という思いで、この本を書いたという。いいネタを見つけてよかったですね。自分自身を取材すればいいんだから。

人は年を重ねれば、認知症であるかないかにかかわらず、多かれ少なかれボケる。しかし。私は「いい年の取り方」と「悪い年の取り方」、さらに「いいボケ方」と「悪いボケ方」があるように思う。できればいいボケ方をしたいものだ。

自らを見つめながらいいボケの指南をしようと思ったそうだ。それにしても、タイトルはあざとい。気負いすぎではないか。編集者がつけたんだな。

「認知症」は英語で「Dementia」という。現在、65歳以上の高齢者における認知症患者数は約7人に1人の462万人(有病率15%)と推定されており、2025年には約5人に1人が認知症を発症すると予測されている。

それにしても……「認知症」というネーミングは、自分自身を疑っている者としていやな感じだ。そして、このテキストを書くとき、今までにはなかったようなタイプミスが異常に多かったのはなぜだ。

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock.com

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