糖尿病専門医が教える、生命に欠かせぬインスリンが身体にもたらす弊害

 

一方で過剰なインスリンの害にはエビデンスがあります。

たとえ基準値内でも、インスリンの血中濃度が高いほど、アルツハイマー病、がん、肥満、高血圧などのリスクとなります。

また、高インスリン血症は、活性酸素を発生させて酸化ストレスを増加させます。

酸化ストレスは、老化・癌・動脈硬化・その他多くの疾患の元凶とされていて、パーキンソン病、狭心症、心筋梗塞、アルツハイマー病などにも酸化ストレスの関与の可能性があります。

ロッテルダム研究によれば、インスリン使用中の糖尿人ではアルツハイマー病の相対危険度は4.3倍です。

Rotterdam研究(Neurology1999:53:1937-1942)

 

高齢者糖尿病における、脳血管性痴呆(VD)の相対危険度は2.0倍。アルツハイマー型痴呆(AD)の相対危険度は1.9倍。インスリン使用者の相対危険度は4.3倍。

インスリン注射をしている糖尿人は、メトグルコで治療している糖尿人に比べてガンのリスクが1.9倍というカナダの研究もあります。

2005年の第65回米国糖尿病学会、カナダのSamantha博士等が、10,309名の糖尿病患者の研究成果を報告、その後論文化。コホート研究。

メトフォルミン(インスリン分泌を促進させない薬)を使用しているグループに比べて、インスリンを注射しているグループは、癌死亡率が1.9倍高まる。SU剤(インスリン分泌促進剤)を内服しているグループは癌死亡率が1.3倍高まる。

Diabetes Care February 2006 vol. 29 no. 2 254-258

このようにインスリンの弊害を見てみると、インスリンは血糖コントロールができている限り少なければ少ないほど、身体には好ましいことがわかります。

別の言い方をすれば、農耕開始後、精製炭水化物開始後、特に第二次大戦後に世界の食糧事情が良くなってからの糖質の頻回・過剰摂取が、インスリンの頻回・過剰分泌を招き、様々な生活習慣病の元凶となった構造が見えてきます。

スーパー糖質制限食を実践すれば、インスリンの分泌は必要最小限で済むようになり、様々な生活習慣病の予防が期待できます。

皆さんも、スーパー糖質制限食実践で、必要最低限のインスリンで血糖コントロールを維持して、健康ライフを送ってくださいね。

インスリンは糖質代謝の調整が主作用ですが、それ以外にも下記のごとくいろいろな働きがあります。

インスリンの作用

インスリンは、グリコーゲン合成・タンパク質合成・脂肪合成など、栄養素の同化を促進し、筋肉、脂肪組織、肝臓に取り込む。

インスリンが作用するのは、主として、筋肉(骨格筋、心筋)、脂肪組織、肝臓である。

A)糖質代謝

  • ブドウ糖の筋肉細胞・脂肪細胞内への取り込みを促進させる
  • グリコーゲン合成を促進させる
  • グリコーゲン分解を抑制する
  • 肝臓の糖新生を抑制し、ブドウ糖の血中放出を抑制する

B)タンパク質代謝

  • 骨格筋に作用してタンパク質合成を促進させる
  • 骨格筋に作用してタンパク質の異化を抑制する

C)脂質代謝

  • 脂肪の合成を促進する
  • 脂肪の分解を抑制する

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江部康二この著者の記事一覧

(財)高雄病院および(社)日本糖質制限医療推進協会 理事長。内科医。漢方医。京都大学医学部卒、同大胸部疾患研究所等を経て、1978年より医局長として高雄病院勤務。2000年理事長就任。高雄病院での豊富な症例をもとに、糖尿病治療、メタボ対策としての糖質制限食療法の体系を確立。自らも二型糖尿病であるために実践し、薬に頼らない進行防止、合併症予防に成功している。

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