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ベゾス氏らの納税額を暴露「プロパブリカ」とはどんな機関なのか

アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏らアメリカの資産家上位25人の資産が、2014年からの5年で43.7兆円も増えたにもかかわらず、連邦所得税は1.48兆円、3.4%しか納めていないことが明らかになりました。この事実を白日の下に晒したニュースサイト「プロパブリカ」とはどのようなメディアなのでしょうか?メルマガ『uttiiの電子版ウォッチ DELUXE』著者でジャーナリストの内田誠さんが、朝日新聞に掲載された「プロパブリカ」に関わる記事をチェック。トランプ氏の登場以来、運営資金の寄付が増加し、政権や大企業などの暗部を暴いてきた活動を伝えています。

米国の富裕層が「ほとんど税を払っていない」と批判記事を掲載した「プロパブリカ」を新聞はどう報じてきたか?

きょうは《朝日》からです。「プロパブリカ」という米国の調査報道専門のニュースサイトが、アマゾン創業者のベゾスなど、米国の富裕層について「ほとんど税を払っていない」と批判記事を掲載したことについて、各紙報じています。

この「プロパブリカ」について、これまで《朝日》がどんな報道をしてきたか、検索してみると、紙面掲載記事では2件だけでしたが、サイト内の5年分の記事の中では15件ヒットしました。今日の記事と同内容のものが2件ありますので、差し引き13件。これらを見てみましょう。まずは7面記事の見出しと、【セブンNEWS】第5項目の再掲から。

「著名資産家 ほとんど納税せず」
米サイト指摘 税制 富裕層に有利

米調査報道専門ニュースサイト「プロパブリカ」は、米アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏ら著名な資産家らの納税記録を独自に報道。巨額資産にもかかわらず「ほとんど納税していない」と指摘。富裕層に有利な税制の問題を提起した。

以下、記事概要の補足。「プロパブリカ」は調査報道専門のNPOで、今回、内国歳入庁の内部資料を独自に入手。富裕層数千人の15年以上にわたる納税データを分析した。ベゾス氏は2007年と11年に連邦所得税を払っておらず、電気自動車テスラの創業者イーロン・マスク氏も18年、連邦所得税を払わなかった。

米国の平均的な世帯では、年間所得のうち14%を連邦税として支払っているというが、資産額上位25人は14~18年に資産が43.7兆円も増えたにもかかわらず、連邦所得税は1.48兆円、3.4%に過ぎなかったという。

【サーチ&リサーチ】

2016年8月19日付「論座」
《朝日》の月刊誌「Journalism」に載った記事を「論座」が転載し、記事データベースに入っていたもの。タイトルは「コラボレーションという新機軸」で、副題に「パナマ文書は新しいフロンティア」とある。パナマ文書の分析に関わったジャーナリストが「コラボレーション」の重要性について書いていて、その中で、「プロパブリカ」に触れている。

この年のピュリツァー賞を受賞した取材に関して、「プロパブリカと刑事司法を専門にしているマーシャル・プロジェクトはともに非営利団体で、「レイプの信じられない話」という誤審についての調査をした」という。

2016年11月18日付
タイトル「NYタイムズ紙、購読者急増 トランプ氏の批判よそに…」の記事中、以下の記述。
「トランプ氏は13日、NYTについて「『トランプ現象』についての非常に不正確な報道の結果、何千もの購読者を失っている」とツイート。その後も「落ち目のニューヨーク・タイムズ」などと、名指しで批判を繰り返している。米メディアによると、大統領選が終わってから調査報道専門のNPO「プロパブリカ」への寄付なども急速に増えているという」と。

*その後も資金提供の流れは続き…。

2017年1月11日付
タイトル「なぜ? 米の非営利メディアに続々と激励の資金提供」の記事中、以下の記述。
「アメリカの刑事司法制度を調べるために2年前にできた調査報道の非営利オンラインメディア「マーシャル・プロジェクト」(Marshall Project)のドナープール(資金の共同提供者)は、大統領選挙後、20%増加した。また同じく調査報道機関「プロパブリカ(ProPublica)」には、大統領選挙後に小口寄付を中心にした資金が集まり、その額は2015年の全額約50万ドルを上回り、75万ドルに達している」

2018年6月20日付
タイトル「米の移民親子引き離し、高まる批判 子ども2千人、別施設 歴代大統領夫人もNO」の記事中、以下の記述。
「トランプ米政権による不法移民取り締まりで、約2千人もの移民の子どもが親から引き離されていることに、批判が広がっている。存命する歴代の大統領夫人(ファーストレディー)5人は、18日までに相次いで再検討を求めた。共和・民主の党の枠を超えての呼びかけだ。スペイン語で「パパ」「ママ」と泣き続ける子どもたち。その泣き声を「まるでオーケストラだ」と揶揄(やゆ)する当局者の声──。米税関・国境警備局(CBP)の施設内で録音された音声だ。調査報道専門NPO「プロパブリカ」が18日に公開。米メディアはこぞって取り上げた」と。

*この報道の影響で、トランプ政権も批判に抗しきれず、「ゼロトレランス」は続けるとしつつ、親子を共に収容するための大統領令に署名せざるを得なかった。

2018年10月18日付
タイトル「トランプ氏、安倍氏にカジノ業者参入要求か 大口献金者」の記事中、以下の記述。
「米調査報道専門ニュースサイト「プロパブリカ」は10日、安倍晋三首相が昨年2月に訪米した際、トランプ大統領が安倍氏に対し、トランプ氏の大口献金者が会長を務めるカジノ運営大手「ラスベガス・サンズ」の日本参入を働きかけていたと報じた。大統領が献金者の個人的なビジネスの利益を他国の首脳に求めることは、規範に反する異例な行為だと指摘している」と。

2019年12月13日付
タイトル「宅配運転手の過酷な毎日 休めば罰金、倒れて病院行け ず」の記事中、以下の記述。
「米国で今秋、アマゾンの宅配を請け負った車による死亡・重傷事故が、15年6月以降60件以上起きた、と米調査報道メディア「プロパブリカ」などが詳報した。しかも死傷者への補償責任はアマゾンではなく、運転手側が負うことが多い現状も明らかにした」と。

2020年5月5日付
タイトル「ピュリツァー賞にアラスカの地方紙 連載「無法」で」の記事中、以下の記述。
「「無法」は、非営利の報道機関プロパブリカによるプロジェクト「地方の報道ネットワーク」の一環で、アンカレジ・デイリー・ニュース紙はプロパブリカの支援を受けた。プロパブリカの担当者は受賞に「地方のジャーナリズムが衰退する中、なぜ、強力な地方の報道機関が必要とされるのかを思い起こさせてくれる」と同紙に語った」

2020年12月26日付
タイトル「トランプ氏「駆け込み」加速 外交・内政、次期政権足かせに」の記事中、以下の記述。
「大統領選のあと、次の大統領が就任するまでの「レームダック(死に体)」期間の規制変更は、シンデレラが12時までにカボチャの馬車に駆け込む様子になぞらえて、「ミッドナイト・レギュレーション」と呼ばれる。調査報道専門ニュースサイト「プロパブリカ」によると、トランプ政権の場合、大統領選以降に手続きが進んだ規制変更は55以上ある」と。

●uttiiの眼

公益のために調査報道を行う機関がプロパブリカのような規模で成立していることは素晴らしいことだと思う。Wikiに成り立ちなどについての詳しい説明が書いてあるので是非目を通して頂きたいが、この機関は決して「左翼」でもなければ「民主党寄り」ということでもない。資金提供している人の中には、創立に関わった「民主党の大口献金者」もいれば、フォード財団、カーネギー財団、さらにジョージ・ソロスのオープン・ソサエティ財団からも資金提供を受けているという。

調査報道の力は実に大きく、上記のように、トランプ政権の移民排斥政策で親から引き離されたこどもが2千人に及んでいるとの報道では、泣き叫ぶこどもの声を当局者が揶揄する音声を収録し、公開したことで大きな反響を呼び、政策の一部を変更させる結果になっている。トランプ政権下で、まともな調査報道に対する人々の渇望が強くなっていったことが分かる。

ところで、今回の内国歳入庁のデータのなかに、ドナルド・トランプ氏のものは含まれていないのだろうか。ちょっと気になった。GAFAのCEOたちと比べれば遙かに小粒の「金持ち」に過ぎないトランプ氏だが、それでも平均的な世帯と比べれば「大金持ち」の部類。自らの税務記録を公開しなかった稀な大統領でもあったトランプ氏のこの件に関する情報の公開は、トランプ氏が復活を遂げようとしていることを考えれば、実に公益に適ったことだと思うのだが。

image by:II.studio / Shutterstock.com

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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