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欧米が優先か、中国を取るか。迷う日本経済の前に差し出された“踏み絵”

日本はまさに今、国の行き先を大きく左右する踏み絵を突きつけられていると言っても過言ではないようです。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、我が国の政府及び企業が、欧米とのビジネスか、それとも中国とのビジネスを優先すべきかを選択しなければならない重要な岐路に立たされていると指摘。その上で、欧米との関係が深い日本は脱炭素経済にシフトするしかないとして、考えうる限りの具体的な施策を提示しています。

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欧米とのビジネス優先か、中国とのビジネス優先かという踏み絵

前回、国の安全保障上では、エネルギー確保、食糧確保、資源確保と世界から遅れているデジタル化が必要と述べた。

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この上に、欧米諸国は、脱炭素経済に向かい、関税障壁を作り、非脱炭素社会からの輸入を止める動きをしている。脱炭素経済は、石油経済より効率は、大きく劣ることになるので、2つの経済圏に分離することになる。

それでも、温暖化防止のために欧米諸国は結束して脱炭素経済にシフトしていくというのである。

もし、日本が石油経済に留まるなら、それは欧米との貿易ができない鎖国・後進国経済になるしかない。ここがわからないで、非効率だから、日本が衰退するという評論家は、全体像を見ていないことになる。

欧米の人権重視に向かないで、人権問題で態度を決めないファーストリテイリングが良い例で、株価は大きく下落しているし、欧米店舗での売り上げは確実に落ちることになる。経済と政治がリンクしている。中国は政治問題を貿易禁止という手段で対応しているが、その考え方を欧米もすることになる。

このため、企業は、欧米でのビジネスを優先するか、中国のビジネスを優先するかの踏み絵になっている。

その上に中国で、反外国制裁法ができ、日本政府が対中政策で中国の利益に反すると、日本企業の中国資産没収も考えられる。政治と経済が分離ではなく、リンクしている。

このため、欧米との関係が深い日本も脱炭素経済にシフトするしかないのだ。しかし、2024年にトランプ氏が米国の大統領に再度なったら、状況が大きく変わる可能性もある。

このため、再生可能エネルギーでは、太陽光発電・風力発電・地熱発電・水力発電、バイオ発電の5つであるが、電力会社のコストとしては、原子力発電のコストである1KWHで10円以下にする必要がある。無理をしない方向でエネルギー転換をすることである。

そして、クリーンの定義にもよるが、原子力発電を含めることになりそうである。小型原子炉を米国を中心に開発しているが、1つの選択肢になる。

しかし、この10円以下に捕らわれないのが、一般消費者への電気料金で1KWHで24円程度なので、家庭用の電気をまず再生可能エネルギーにして、なるべく地産地消にすることである。

とすると、雪のない地域では、太陽光発電と電池の組み合わせになる。リチウム電池の価格が急激に下落しているし、太陽光パネルの価格も下落しているので、2009年の鳩山内閣の「地球温暖化対策」の当時とは状況が大きく違う。

その当時と同じ対策と非難する評論家がいるが、この12年のコスト低減を見ないで評論しているように思う。やっと、一部の使用で経済的にペイできるレベルになっている。

地域全体で蓄電するなら、NAS電池やレドックスフロー電池などの大容量の安い電池もある。全戸で太陽光パネルを設置して、使い切れない電気は、地域の電池にためて、それを夜に使う仕組みを整えることである。

そして、電力調整用にはバイオ火力発電や水素燃料電池を持っておけば、安心である。このコントロールを行うソフト開発が必要になる。

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もう1つが、地産地消で行うので、地域電力会社を設立して、巨大電力会社から独立した方が良い。巨大電力会社も地方の小さな地域の収支は赤字になっているので、独立に賛成するはず。

しかし、日本全体の電気となると、足りないので、安い電気が手に入る砂漠での発電と、その電気を水素に変えて日本に持ってきて、FCV車や工場や都市で使うことである。その水素を電気に戻すでもよい。

留萌とその沖の風力発電の電気は、北海道では電力線の容量が足りずに、電力出力制限になっている。これも水素にして、タンカーで東京に持ってくることも考えた方が良いと思う。低コスト電力なので、もったいない。

食糧確保問題では、2050年には、地球上の人口が100億人になり、食糧不足が起きると言われ、かつ、農業と太陽光発電との土地の奪い合いになる。このため、大量の植物飼料を食べる牛肉や豚肉は、植物由来の肉か培養肉になるが、昔から日本には植物肉があった。金沢で麩から作った代替肉を食べたことがある。

この技術は、発展すると思ったが、不二製油が大豆ミートを作り、米国ではビヨンドミート、インポッシブルフーズで代替肉を作っているが、不二製油の方が先であるし、日本の麩からの肉の真似である。それがあたかも米国が先というマスコミの報道に違和感を覚える。

次に昆虫食や微生物食があり、ユーグレナのミドリムシの食用化が一歩以上も前にいる。ユーグレナは、ミドリムシから燃料を作るというので、EVではなく、内燃機関の車がそのまま、脱炭素車になる可能性もある。コストがどれだけ下がるかでしょうね。藻からの燃料はコストが下がらないことで頓挫している。

微生物から有効な物質を作る技術は、日本の得意芸なはずである。蚕から有益なたんぱくを作る技術もあり、医療関連タンパク質生産を行っている。

漁業では、天然魚がいなくなり、養殖魚になっていくが、ここでも環境負荷の少ないオキアミや小型の魚になるとみている。深海魚も海藻類も食べていくしかない。

農業の比重が大きくなるが、日本は耕作放棄地が拡大しているので、その土地を有効利用することである。中山間部の地域では森林化や果樹園にして、平野部は田畑にすることだ。

今後、食糧価格が上昇してくるし、大規模な金融緩和をする円とドルの長期的下落が起きるので、今から準備していた方が良い。企業の農業参入も広範に認めるべきだ。日本で食糧を大量生産した方が、海外からの輸入品より安くなる。企業的にも採算がとれる。

人工光合成は、自然界の効率より高い効率でたんぱく質を生成できれば、食糧も燃料もそれに頼ることができるが、まだ先のようである。それなので、微生物や植物でたんぱく質を光合成してもらうしかない。効率的な微生物を探す競争になる。その1つがミドリムシなのでしょうね。

現時点で、脱炭素社会にするなら、石油文明から植生文明に戻るしかない。効率は落ちるが、その効率が落ちないようにデジタル化やリサイクル化などを組み合わせていくしかない。

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資源確保問題では、材料は多くを都市からの回収ごみからの再生になる。それと木材からのセルロース・ナノファイバーになる。まだ、コストが高いが、コスト低下の研究が加速している。日本は大量のごみや木材を出しているので、そのうちに自給体制ができることになる。

その一歩として、ペットボトルの完全循環と、ナイロンの完全循環が確立した。ペットボトルは、最初ウツミが開発したが、今は帝人が大型の再生工場を作り、ポリエステルをジメチルテレフタレートに戻し、再度そこから成形するケミカルサイクルを確立した。

ナイロンは、東レがカプロラクタムに戻し、そこから成形するケミカルサイクルを確立している。このため、欠損する少ない量を石油から生成するだけなので、石油からの生成量が少なくなる。

このように徐々にプラスチック類も完全循環が確立していくことになる。

しかし、世界から遅れているのが、デジタル化でしょうね。マイナンバーを管理して総合政府窓口を作り、すべてをそこから申請できる仕組みを作る必要がある。それも全国の自治体や各省庁で一緒の入力方法にする必要があり、そのソフト開発の標準化が必要である。

地方自治体のシステムは、クラウド化して、全国一律にするべきである。そうすれば、申請を一本化できるし、法律改正のコストも少ししかかからない。

労働生産性向上のためのドローン、自動機械、ロボット、AIなどを発展させて、人口減少の日本でも経済規模を維持して、1人当たりのGDPを上昇させていくことである。

さあ、どうなりますか?

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image by: Shutterstock.com

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