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少子高齢化が急速に進んでいる日本だからこそ「年金制度」が必要な訳

日本の人口は今後も少なくなる見込みで、すでに進みつつある「少子高齢化」は深刻な問題となっています。そして、その問題に付随して語られるのが「年金」です。今回の無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』は、著者で年金アドバイザーのhirokiさんが、「高齢者が増えるほど年金は必要になる」と語り、その理由について詳しくお話しています。

人口問題が社会に与える影響と年金

年金の話と同時によく問題になるのが少子高齢化です。これからも日本人口はひたすら少なくなっていく見込みですが、今が1億2,000万人程だとしたら2100年には6,000万人程まで減ります。その6,000万人のうち40%の2,500万人程は65歳以上の高齢者となる。

日本は人口減少や少子高齢化の問題が深刻ですが、人口問題は日本だけでなく世界全体の問題でもあります。世界レベルだと人口増加が大きな問題ですが、人口が多すぎると環境破壊や食糧難になってくる。

ところで、なぜ日本においてそんなに高齢者の人口や子供の人口を気にするのかというと、年金制度は現役世代の保険料で高齢になった人を支える仕組みだからです(家族を失った人や障害者の人も保障する)。

少子化で保険料支払う人が少なくなるのに、平均余命の伸びで高齢者の人が増えていくと、一人当たりの保険料の負担額が重くなりすぎてしまう。特に平成16年の年金改正までが最近高齢者が多くなってきたから、もっと保険料を負担していこうという考えでやっていた。

高齢者の厚生年金は現役の頃の60%台は支給したいという目標があったので、その60%を確保するために現役世代から徴収する保険料を決めていた。ただし、平成29年9月をもって厚生年金は18.3%の保険料率を上限にしたため、年金財源としては毎年決まった額が入ってくる事になります。国民年金保険料は平成31年4月に17,000円×改定率を上限とした(改定率というのは物価や賃金の伸びを反映させるもの。貨幣価値は変動するからですね)。

財源が天井なので、その範囲で年金給付を行うという形に平成16年改正から大きく変わりました。年金の考え方が180度変わってしまった。受給者に目標の年金を支給するのを目指すよりも、現役世代の負担を過大にしないようにする事を目指すようになりました。

さて、少子化の問題が深刻になり始めたのは昭和50年に合計特殊出生率(女性が生涯に産む子供の数)が2.0を下回った頃です。合計特殊出生率が2.08を人口置換水準と言いますが、この値を下回ると人口は減っていきます。昭和50年から合計特殊出生率は2.0を下回り始めました。

将来は人口が減っていく事になると見込まれるようになったため、少子化対策が必要になっていきました(さらに高齢化率は昭和45年から7%になって高齢化社会となし、平成6年に14%になって高齢社会になり、平成19年に21%になって世界初の超高齢社会に突入した)。

戦後の昭和の時期は第一次ベビーブームの昭和22年から昭和24年頃の事を言いますが、この頃の合計特殊出生率は4.5とかなり高い水準でした。ところが日本は昭和30年から高度経済成長に乗り、工業化が進み、農業離れが進んでいったので子供を労働力と捉える考えも薄くなり、そこまで子供は産む必要は無くなっていきました。ちなみに発展途上国なんかは子供が十数人とかすごい子沢山ですが、それは子供を労働力とみなしてるからです。

しかしながら人口が増えると、その増加した人口を養うための食糧が必要になるので、無理な過耕作や過放牧などで環境が破壊される原因になります。土壌の力を超えた農業をするので、砂漠化が進んでいきます。あのサハラ砂漠の下のサヘル地帯とかは有名ですよね。沢山の人口を養うために、何とか耕せる土地でひたすら耕作するから土地がダメになって、砂漠化が進行する。

また、中国の人口は世界一ですが、昔から散々環境破壊してきたせいでモンゴル自治区のゴビ砂漠とかシンチャンウイグル自治区あたりのタクラマカン砂漠から飛んでくる大変な黄砂に悩まされている。昭和30年代の毛沢東の大躍進政策から徹底的に森林伐採してきたからですね。無茶な工業化が自然を壊した。あと、日本上空には常に偏西風が吹いてるから、その風に乗って黄砂が飛んでくる。

このような森林伐採や過耕作は環境破壊が進むので、先進国側としては発展途上国に対してそんな事はヤメロって言います。しかし、今までは先進国が散々経済の発展のために環境を顧みずに経済を発展させてきたので、発展途上国からしたら善意の押し付けみたいになって反感を買う(まあ、日本も昭和30年代から昭和40年代ごろの高度経済成長期は環境をないがしろにしてたので物凄い公害だらけでしたけどね^^;)。

特に人口の急激な増加は確実に環境破壊を進行させる。現在は世界で76億人ほどいますが(もう地球が養える人口の限界)、2050年には100億人近くが見込まれています。日本は人口は減り続けますが、世界人口は毎年8,000万人ずつ増えている。

話を戻しますが、日本は昭和50年から本格的な少子化が始まったわけですが、それ以前に昭和48年の石油ショックというのがありました。この石油ショックで日本の高度経済成長は完全に終わってしまい、不景気に傾いていきます。

不景気に移行していきましたが、日本は石油依存から省エネ産業を開発して不況を乗り切り、そして昭和60年からはバブルを迎えます。平成3年にはバブルが崩壊し、皆さんご存じの通り長い不況が続きます。

バブル崩壊してからはほとんど日本の経済は成長しなくなった。働いても働いても給料は上がらなくなり、昭和の典型的な雇用体系である終身雇用とか年功序列型賃金は終わっていった。

企業はコスト削減のために賃金の高い正社員から、賃金の安い非正規社員とか派遣労働者に変えていきました。正社員と同じくらい働いても最低生活水準を維持する収入が得られないワーキングプアの問題も深刻化した。自分一人生きていくだけでも精一杯で、一体明日はどうなるのかわからない不安を持つ人が多くなった。

2009年の100年に一度と言われたリーマンショックによる不況の時に派遣切りという言葉が流行りましたが、会社の経営が悪化するとそういう労働者が真っ先に何の予告も無く一方的に解雇されてしまう。年功序列とか終身雇用の時代を生きてきた人からしたら考えられない事ですが、バブル崩壊以降に時代は変わってしまった。

土地や株を購入するためのお金を銀行がひたすら過剰に貸し続け、バブル崩壊とともに土地の値段が暴落した後に残ったのは莫大な不良債権だった。担保に取っておいた土地を売却しても、貸したお金の全部は戻ってこないからですね。不良債権処理で手いっぱいだから銀行は企業にお金なんか貸してる場合じゃなくなり、深刻な貸し渋りが続いたため、景気は回復していかなかった。

ところで少子化の問題が取り上げられる時、今の若者は結婚しなくなった、結婚を必ずしも必要としなくなった、今の生活を楽しみたいという人が増えたとかいろいろ言われる事がある。結婚をしなくなったとかいう問題よりも、したくてもできない時代になってしまったといったほうがいい。

給料は上がらない、キチンと就職しても会社がずっと存在する保証もない、いつ解雇されるかもわからないというような、自分自身の心配が大きくなってしまった。特に小泉政権下では新自由主義の考え方から政府の規制を緩和し自由競争を促進したので、会社の競争が激化し、会社の様々なコスト削減が促された。そこで正社員ではなく、非正規雇用者を雇ってコストを削減するようになった。

この会社のスリム化で大きな問題が起こった。正社員と非正規雇用者の格差拡大。非正規雇用は働いても働いても家族を養うだけのお金を得られない状況になってしまった。結婚したいと思っても迂闊に結婚なんかできない。ましてや子供を作り、育てるなんてとてもとてもという人が増えた。政府は子供の数を増やしたいと思っているが、なかなかこの社会が豊かにならないと増えていくのは難しいのではないか。

こういうと年金制度を維持するのは難しいと考える人も多いかもしれませんが、年金制度は守っていかなければならない。年金が無ければその分、個人が自腹で高齢となったお母さんお父さんの面倒を見なければいけなくなる。毎月の給料から10万円は少なくとも必要かもしれない。

金持ちならそんな事が出来るかもしれませんが、この停滞した社会ではほとんどの人が自腹で養うなど不可能でしょう。よって、社会全体で高齢者を支える年金制度はこれからも不可欠。核家族が多数を占めるようになった現代では、どうしても国が年金で高齢者の面倒を見ざるを得ない。

image by: Shutterstock.com

年金アドバイザーhirokiこの著者の記事一覧

佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
私のメルマガの場合、よく事例や数字を多用します。
なぜなら年金の用語は非常に難しく、用語や条文を並べ立ててもイメージが掴みづらいからです。
このメルマガを読んでいれば年金制度の全体の流れが掴めると同時に、事例による年金計算や考え方、年金の歴史や背景なども盛り込みますので気軽に楽しみながら読んでいただけたらと思います。

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【著者】 年金アドバイザーhiroki 【発行周期】 不定期配信

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