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CoCo壱バイトテロ“炎上”に4つの違和感。背景にある外食産業の構造的欠陥

大手カレーチェーン店のアルバイト店員による不衛生行為を撮影した動画が拡散し、運営会社本部が謝罪する事態となったニュースが大きく報じられています。このような「アルバイトの不潔な悪ふざけ」はなぜ頻発するのでしょうか。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では著者で米国在住作家の冷泉彰彦さんが、これらの問題に対する4つの違和感を挙げるとともに、バイトテロ発生の背景にある「外食産業の構造的欠陥」を指摘しています。

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納得できないバイトテロ問題

カレーの全国チェーン店で、厨房のアルバイトが「不潔な悪ふざけ」を撮影した動画が拡散してしまい、チェーンの本部が謝罪に追い込まれました。どうにもやり切れないニュースですが、毎度のことながら、同時にどこかスッキリしないものも感じます。

1つ目は、どうして「そこまで気にするのか」という問題です。まずこうした行動は悪質なモノであっても、イタズラであり、実際に不衛生な食品が消費者に渡るような行為ではないわけです。にもかかわらず、大きく報道され、また報道されることでブランドイメージが、そこまで損なわれるというが、100%理解できません。

勿論、そうした動画を見ただけで不快感を感じて、そのブランドへの購買意欲が減退する、そのぐらい過敏であることが衛生概念の証明だということは言えます。その衛生概念の徹底ということが、今回の新型コロナにおける「欧米と比べて人口比で感染も死亡も20分の1」という結果になっているということも言えます。

ですが、悪いことをしたのは、特定の店の特定の人間が特定の機会に行ったのであって、悪質であってもイタズラであって実害はない、ということを分かっていていて(安全だが)も、何も感じずにそのブランドを利用することはできない(安心ではない)という点ではマイナスイメージが歴然とある、という傾向が強い社会というのは、本当に万人が幸福な社会なのか、そもそも社会として問題や危機に強い社会なのか、ということは考えた方が良いように思います。

アカンことは確かなのですが、そこまで大きく反応すべきことなのかということです。

2番目は、拡散した人間の存在です。この種の事件が起きるたびに、制限された仲間内だけの公開であるのに何故という「犯人」の声が出てきます。つまり、シャレでやって、秘密にしておいて、それで済ますという前提でのイタズラにも関わらず、ネットの空間に流出してしまったわけです。

その場合には、拡散した人間がいると考えるしかありません。犯人の仲間内で、誰かがオープンなエリアに拡散したのです。一旦拡散してしまえば、ネットでは無制限にコピーされて加速度的に拡散するわけですが、そのキッカケを作ったのは、犯人だけでなく流出させた人間です。こちらへの批判や告訴といったことがあっても良いのではないかと思います。

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3番目は、被害者であるはずの会社がどうして謝罪するのか、という問題です。消費者の「安心」を損ねたのだから、とにかく平謝りに謝っておくしかないというのは、分かりますが、例えばの話、会社が被害者でないというのは、バイトは仲間(内輪)だという感覚があるという理解もできます。

つまり商人として「手前どもの落ち度」なのだから、ひたすら謝るというわけです。ですが、4番目として、ここが一番不自然なのですが、企業として、「自分たちの仲間、内側の人間の不始末」だとしているにしては、個々のバイトというのは、実は「本部の直雇」ではなく、本部が業務提携している「フランチャイジーという零細企業」の「最低賃金に近いバイト」という位置付けであるわけです。

本部として「手前どもの落ち度」を一緒に謝ってくれるぐらいなら、ちゃんと「手前ども」の仲間として認識して、もう少し処遇をちゃんとすることはできないものかと思います。

そもそも賃料、光熱費、人件費込みでカレー514円(税込)というのは、物凄い無理があるわけです。勿論、現在のこのマーケットでは、514円というのは結構な高価格戦略であり、牛丼並が350円などといった価格と比べれば、強気だという解説もあるわけですが、514円とか350円という価格が成立する、しかも一等地に出店して、標準仕様の高額なマシンが入り、立派な本部事務部門のコストを吸い上げられてという構造にはやはり無理があります。

人手不足の中で、結果的にカネを出さないとなると、バイトテロ予備軍のような人間も採用せざるを得ない、けれども万が一事件を起こされるとダメージが大変なので、性悪説で締め付ける、そうなると印象が悪いので余計に人が集まらないという悪循環も想定されます。

いずれにしても、食べ物としては非常に直接原価の安いものを、薄く広くブランド料として本部が利益を集め、また薄利多売で何とか賃料や什器や光熱費を捻り出し、残った粗利の中からカスカスの人件費を払うというビジネスモデルの苦しさ、これがやはり今回の問題の背景にあるのではないかと思います。勿論、コロナ禍の問題もありますが、それ以上にとにかく外食のデフレという問題は、コロナ後を見据えながら考えていかないとダメだと思います。(メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』より一部抜粋)

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image by: Ned Snowman / Shutterstock.com

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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