二階幹事長の陰謀。突然「安倍取り込み議連」を立ち上げた“老兵”の魂胆

 

安倍氏はこれで、半導体戦略推進議連(甘利明会長)と、「自由で開かれたインド太平洋」議連という、経済、外交の主要政策にかかわる党内グループで、最高顧問として存在感を示すことができる。二階氏の老獪な仕掛けに乗っても、損はないとみたのであろう。

ただし、当然ながら、二階氏の新議連に対する党内の見方は分かれる。

「非常にスケールの大きい人だなと感じた。世界の安全保障や共存共栄していく中で、大所高所から考えられている発想であると、改めて敬意を申し上げたい」(下村博文政調会長)

「二階氏が座って大丈夫か。(中国と)もろにぶつかる政策だ」「二階氏の周辺は政局が得意な人ばかりだ」(甘利明税調会長)

この二人の発言から推測できるのは、下村氏は政調会長として事前に二階幹事長から話を聞いていたが、甘利氏には説明がなかったということ。下村氏は二階幹事長と距離が近いが、甘利氏はそうではない、ということだ。

安倍氏と二階氏は再び手を組む形になった。菅首相の続投路線でも一致している。問題は幹事長だ。

二階氏は、幹事長続投の意欲満々だろう。だが安倍氏と麻生副総理は、甘利明氏のような二人に近しい人物を幹事長に就け、菅政権の実質的支配を狙っているに違いない。この点では双方に利害対立がある。

二階氏としては、これをどう解いて、幹事長続投への道を開くかだ。そこでひらめいたのが、「自由で開かれたインド太平洋」だ。安倍氏の盟友、甘利氏が半導体議連なら、こちらはあえて、安倍氏の外交政策を持ち出す。その議連をつくり自分が会長、安倍氏を最高顧問に。二階氏ならではのしたたかさだ。仰天した甘利氏が「二階氏が座って大丈夫か」と訝ってみせたのもうなずける。

虚を突かれた安倍氏は、二階氏にどう向き合うか、戸惑っているかもしれない。二階氏のことだから、安倍氏に最高顧問就任を依頼するにあたっては、「懐刀」といわれる林幹雄幹事長代理あたりを差し向けて、きっちりと礼を尽くしたことだろう。情や礼節で人を柔らかに“羽交い絞め”にするのだ。

親分肌で、いざとなれば子分のために啖呵を切る二階氏は、人に慕われやすい。確かに、党内を安定させる「重し」の役割を果たしてきた。外見や喋り方はともかく、仕事をきっちりこなし、約束はちゃんと守る。そんな党内評価も高い。

安倍氏や麻生氏も一面では二階氏に信頼を寄せている。ただし「来る者は拒まず」で所属議員を増やし、しゃにむに派閥を拡大しているように見えるのは脅威であろう。

資金と選挙を牛耳る幹事長職に長く就いていると、それだけ党内での求心力が高まる。麻生氏が幹事長交代を菅首相にせっついているのは主導権を渡したくないからで、その点は安倍氏も同じに違いない。

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