二階幹事長の陰謀。突然「安倍取り込み議連」を立ち上げた“老兵”の魂胆

arata20210617
 

政界一の親中派として知られる自民党の二階俊博幹事長が、「自由で開かれたインド太平洋」構想を推進する議員連盟を立ち上げ、その最高顧問に安倍前首相が就任したことがさまざまな憶測を呼んでいます。インド太平洋構想と言えば、中国の「一帯一路」と利害を異にする戦略ですが、二階氏の思惑はどこにあるのでしょうか。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では元全国紙社会部記者の新 恭さんが、二階氏が安倍氏を担ぎ出した魂胆及びその仕掛けにあえて乗った安倍氏の胸中を分析。さらに、コロナ禍にあって「権力闘争」に勤しむかのような両人の姿勢を批判的に記しています。

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二階氏は「安倍取り込み議連」で何を狙うのか?

唐突かつ意外な感じがする。自民党の二階俊博幹事長が議員連盟を立ち上げたのはいいが、なんと、「自由で開かれたインド太平洋」構想の推進をめざす議連だという。

2016年8月の第6回アフリカ開発会議で当時の安倍首相が提唱した構想だ。当たり前のごとく、議連の最高顧問には安倍氏が祭り上げられた。

だが、親中派として知られる二階幹事長が、よりによって、習近平国家主席の「一帯一路」に対抗する「自由で開かれたインド太平洋」に食らいついたのである。どういう風の吹き回しだろうか。

時節柄、政局がらみの臭いが漂う。安倍氏が菅首相の続投支持を表明し、二階氏とキングメーカーの主導権争いをしている、などと噂されるさなか、二階氏が安倍氏をいきなり政策ごと取り込んだ形なのだ。

もとをただせば、第6回アフリカ開発会議の当時、国家安全保障局長だった谷内正太郎氏が練り上げた外交戦略だ。アジア太平洋からインド洋、そしてアフリカにいたる地域に、自由貿易、航行の自由、法の支配を定着させ、経済連携を強めようというもの。もちろん、「一帯一路」など中国の経済覇権構想や海洋進出を阻止する「対中包囲網」の側面を持つ。

それを承知の上で、二階幹事長は2017年5月、「一帯一路」に関する北京での国際会議に参加した。安倍前首相が「インド太平洋」構想をアフリカ開発会議で表明して9か月後のことだ。

そのおり、二階氏は習近平国家主席に安倍首相からの親書を手渡した。原案は「自由で開かれたインド太平洋」発案者の谷内氏が作成したが、当時の首相秘書官、今井尚哉氏によって書き換えられていた。習近平主席の怒りを買わぬよう、「一帯一路」にも前向きな姿勢を示したのだ。

経産省出身の今井氏は、経産大臣時代の二階氏に出会い、心服していた。原案のまま親書を手渡したのでは二階氏の顔が潰れるということで、ひと肌脱いだのだろう。むろん、対中関係改善をめざす安倍首相の了解をとったうえでのことだ。

二階氏の親中路線と安倍氏の親トランプ路線との間で、絶妙なバランスをとっていたのが“影の総理”今井秘書官だ。中国への「対抗戦略」として出発した「自由で開かれたインド太平洋」は、今井氏によって、日中の民間企業がインフラ開発で協力するといった曖昧性も併せ持つ内容に変質したとみることもできる。

二階幹事長とすれば、そういう意味で、「自由で開かれたインド太平洋」の議連をつくることに、抵抗感がないのだろう。自分が会長として議連に睨みを利かせていれば、米中対立で加速する反中国の流れをコントロールできるという思惑もあるかもしれない。

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