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死亡事故が多発。地下駐車場「CO2消火設備」命を奪う誤作動の恐怖

二酸化炭素消火設備の誤作動・誤操作による死傷事故が頻発し、恐怖を訴える声が各所で上がっています。このような事態を防止することは可能なのでしょうか。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では著者の廣田信子さんが、今年4月に新宿区のマンションで起きた同設備による死亡事故の大枠を紹介。その上で、人為的原因のみならず自然現象の影響で発生する誤作動をゼロにすることは困難、との見方を記してます。

マンション地下駐車場でのCO2充満による死亡事故から考える住宅の安心・安全

こんにちは!廣田信子です。

知人から、その友人のマンションのことで相談がありまりました。地下駐車場でCO2充満により、人が亡くなった事故のニュースを聞いて以来、地下の駐車場行くのが怖くなって困っている。もともと閉鎖的な空間に長くいるのが苦手なのに、あの事故のニュース以来、突然、誤作動で二酸化炭素が充満してくるのでは…という思いが湧いてきて、パニックになりそうになった…と。

その事故を振り返ると…4月15日に新宿区のマンションの地下駐車場で消火設備から放出された二酸化炭素が充満し、作業中の方が4人亡くなり1人が意識不明の重体になった事故がありました。天井張り替えのために消火設備の一部を取り外すなどしていたという証言から、消火設備が誤作動した可能性が高いと言われています。

駐車場には二酸化炭素を放出するタイプの消火設備が設置され操作盤は1階の駐車場出入り口付近に1か所。通常は、操作盤の扉を開けてボタンを押すと避難を促すアナウンスが流れたあとに、操作盤の近くの大型のボンベからパイプを通って二酸化炭素が地下に放出される仕組みです。それ以外にも、自動火災報知器が火災を感知すると操作盤のボタンを押さなくても自動で二酸化炭素が放出される…と。

住民は、駐車場の1階部分で車をとめて、機械を操作して車を地下に収納するた地下部分に入ることはありません。この日は、地下の天井張り替え作業で、作業員が入っていたのですが、自力で逃げて助かった作業員の方によると、二酸化炭素が放出される前に避難を呼びかけるアナウンスは流れたといいます。

本事故に対する専門家のコメントでは、二酸化炭素を放出するタイプの消火設備は、起動すると1分ほどですべて放出され、それを吸うとすぐに意識を失ってしまう。放置すれば20分から30分ほどで命を落とすこともある。誤って起動した場合は緊急停止用のボタンを押せば二酸化炭素は放出されないが、今回、現場で作業していた人たちはその仕組みを知らなかった可能性がある。危険性を認識していなければ逃げることは難しかっただろう…と。

痛ましい事故です。

同じタイプの消火設備は年々増加地下駐車場などに多く設置されていています。マンションも都心部は地下に駐車場があるのが、当たり前になっていますから、二酸化炭素を放出する消火設備を有しているマンションも少なくないと思われます。

増えている理由は、二酸化炭素を放出するタイプの消火設備は水を使った消火と比べて、電気設備や機械への影響が小さいためです。今は、比較的安全な窒素を放出する設備を導入する施設も増えていますが、二酸化炭素の設備の方が設置のコストが低いため、今も多くの施設で設置が進んでいるといいます。二酸化炭素を放出するタイプの消火設備設置の建物は、都内だけでおよそ3,500に上るといいます。

二酸化炭素を放出する消火設備の事故は各地で繰り返されています。東京消防庁によると、同じような事故やトラブルは、今回の事故以外にも、都内では2016年以降の5年間であわせて6件起きていて、2人が死亡、3人がけがをしたということです。

今回の事故を受けて、総務省消防庁は全国の自治体に対し、二酸化炭素を放出する消火設備の近くで工事を行う場合は、消火設備の点検の資格を持つ人などが立ち会うことや誤って消火剤が放出されないよう元栓を閉めてから工事を始めることなどを求めました。

…というのが、事故とその後の大枠です。

【参考】地下駐車場4人死亡 作業過程で誤作動か 判明した現場の状況は

私は専門家ではないので、報道されている情報の範囲しかわかりませんが、この事故後、自分たちのマンションの駐車場の消火方式を確認した管理組合も多いと思います。

前述の、地下駐車場に行くのが怖くなってしまった方は、ディベロッパーに、消火方式の変更を求められないか…と思っているようです。それは、さすがに難しいだろうと思いますが、これから、何らかの規制が検討されるのではないかと思います。

でも、誤作動というのは、工事等人為的なことがきっかけでなくても、自然現象等の影響で起こることも考えられ、完全にゼロにはできないのではないか…と思うと、誤作動がすぐ死亡事故につながるような設備が、広い意味での「住宅」の中に使われていることに、私も怖さを感じてた一人なので、相談者の気持ちは理解できました。地下駐車場も「住宅」の一部なのですから…。

「住宅」の安心・安全という価値について、改めて考えさせられました。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 廣田信子 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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