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小池知事の誤算。「都民ファースト」への裏切りで消えた首相の座

「女帝」が狙い定めていた日本初の女性首相の座ですが、どうやらそれは儚い夢と終わる可能性が高いようです。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では著者で日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、都議選での「都民ファーストの会」への支持を明言しないまま休養に入った小池都知事の「裏切り行為」が、自らの首相への道を断つことになったと指摘。さらに津田さんは、コロナ対策や五輪開催に関して希望的な観測でギャンブルばかりを打つ菅首相に対して、「リーダー失格」との厳しい評価を下しています。

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頓挫した小池百合子都知事「自民“復党”で首相の座」計画

東京、神奈川、千葉、埼玉などの首都圏が感染拡大になっている。他地域は感染縮小になっている。再度、首都圏だけ緊急事態宣言を出す可能性が出てきた。

そして、ワクチン接種は、現状では1日100万回以上の接種であるが、ワクチン在庫の関係から、これ以上の接種拡大はできないと、河野ワクチン担当相はいう。1日150万回が限度だと。

このため、職域接種の新規申し込みを中止した。これにより、五輪までに国民全体への接種割合は30%以下である確率が増した。

そして、この感染拡大時に東京都議会選挙が行われる。投票日は7月4日であるが、小池都知事の過労からの入院で、小池都知事の応援が期待できない都民ファーストの会の苦戦も予想できる。しかし、自民党は前回大負けしたので、議席増にはなるが、期待値ほどには増えないような気がする。

そして、都民ファーストの会を応援しない小池都知事が、自民党からの国政復帰を狙っているとすると、辻褄があうことになる。この裏切りで小池さんの首相への道はなくなったと思う。しかし、もし、都民ファーストの会への応援をすると、国政復帰時に自民党からの出馬ができなくなる。

小池さんに優秀な戦略家がついていないことで、女性首相候補としての小池アクターをうまく日本の国は、使えなかったことになる。もったいない気もするが、どうしようもない。小池さんが戦略家のいうことを聞かないからの可能性もあるからだ。

元に戻ると、専門家の7月上旬感染ピーク説は、実現しそうである。そして、尾身会長の提言は正しいことが証明される。この状況を天皇陛下もご心配しているようだ。

それに逆らって観客動員する五輪後には、感染者数は大幅な増加となるので、それを織り込む必要になってきた。このため、五輪直前まで緊急事態宣言を出した方が良いし、五輪後も緊急事態宣言を出して、衆議院選挙までの時期、感染者数の増加を抑えていくことである。抑えた後に衆議院選挙をした方が良い。それと、やっと、ボランティア全員のワクチン接種を行うとした。

希望的な観測を行う菅首相のギャンブルは、負けであるが、大負けしない対策が必要になっている。安部前首相も助け舟を出して、「自公で過半数なら勝ちである」というが、このレベルで抑える必要が出ている。

しかし、なぜ、希望的な観測を何回も行うのであろうか不思議な感じである。首相の取り巻きに戦略家がいない。または、菅首相が戦略家を嫌っているからだとみる。その意味からリーダー失格だ。しかし、リーダー合格の国会議員がいるのかどうかも定かではないことも確かである。

今回の選挙で、野党は候補者一本化したら、政権を取れる可能性も出てきた。自民党のギャンブルは失敗することが現時点で見え始めている。しかし、政権奪取後の共産党の処遇が問題になりそうな気配であり、連合がそっぽを向いたら、野党も選挙で勝つことは不可能になる。

安部前首相も「ポスト菅」を真剣に検討し始めているようだ。どの候補でも菅さんよりはましな気がする。そして、次の首相は、安部さん再登場のつなぎ役である。

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国家の大転換期に

前回は、資源再利用(リユース・リサイクル)が進むことを話した。日本には江戸時代という先行した完全循環型社会がある。それと自給自足経済という、もう1つの社会であったが、日本の現状を見ると、この地産地消経済に移行するしかない状況になっている。

【関連】五輪後に感染者増なら衆院選は大敗。自民「アフター菅」の首相候補

日本の経済指標は、世界の新興国や途上国と同列に位置し始めている。とうとう、日本は貧しい国になったようだ。海外旅行をすると、欧米の物価が日本に比べて高いし、日本食を食べようとしても高い。

日本は世界第3位の経済大国という幻想は、止めた方が良い。日本の将来は、貧しくても心豊かな国という位置づけにして、それに対して、どのような政策をとるかが重要なのである。

もう、人口減少の日本は、経済大国を目指すこともできない。次の目標を設定するしかない。そして、コロナで日本の脆弱性をイヤというほど、国民も知ったはずである。もう幻想を抱いてはいけない。

その結果、自由貿易が国益ではなくなって、保護貿易が国益にかなっていることになってきた。

貧困率は高く、給与は低い。年金支給額も低く、70歳まで働けという。これらは、日本が貧乏になってきたことの証拠である。日本が貧しくなるということは、海外から食糧、エネルギー、資源を持ってこられなくなるということだ。価格が上昇して買えないからで、木材、ロブスター、牛肉、大豆、飼料、石油なども国内で調達にする必要になる。

この意味で、今後は江戸時代と同じような国内での自給が必要になってくる。高級品の果実や日本酒、ワイン、伊勢海老などは輸出に特化すればよいのである。一般的な日本人には、手が出ないほど高くすればよい。

一番問題であるのは、エネルギーの輸入であるが、これも太陽光発電と水力発電、風力発電などで、国内の消費を賄うことができるようになる。国内調達より安いなら海外から輸入してもよいが、それも徐々に難しくなる。円の価値が大きく下がって来るからだ。

この自給産業群を日本で作り、海外からの輸入を止めていくことである。地産地消経済では、太陽光パネルなども国内で作るなど、国内産業保護の重要な転換点になる。半導体産業も同様である。

中国は、安値で輸出して、世界から産業を奪取しようとしているが、日本は自給自足経済にシフトして、自国の必需品は、自国で賄うことである。江戸時代の大蔵永常の「国産考」に従うことだ。

もう1つが、海上封鎖を中国にされても、日本は大丈夫しておくことである。後十年もしたら、米国より中国の方が国力や海軍力が上になり、海上の逆封鎖も起こりえる。可能性があることには安全保障上の保険を掛ける必要がある。特に原油輸送ルートが危ない。

このためにも、経産省が企業指導を徹底的に行う必要がある。東芝での指導のようなことも起こりえるが、国益を守る必要がある。しかし、そのためには、資本構成にも完全な国営企業にしないレベルでの国家資本の投入をする必要がある。日銀の株式+GPIF+国家投資機関などで、郵政やNTTと同じように半数を抑えることである。国家資本主義にして産業育成を積極的に行う体制が必要である。

国益に関係する企業と純粋民間企業を分けて考える必要もある。国益関与会社には、口もカネも出すことだ。この良い例が携帯会社への口出しであるが、許認可を国がしているからである。

菅政権は、4つの分野を重点にするとした。グリーン分野、デジタル・ガバメントの確立、地方創生、少子化であるが、この分野をどう進めるのか具体策が必要である。

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地産地消経済にすると、エネルギーと食糧などで分散化した社会の方が効率が良い。江戸時代でも地産地消社会であるが、藩が地方独立経済圏を作り、分散化した社会であった。

エネルギーと食糧を海外から無制限に入る時代は、都市で集中化した方が生産効率が良いが、エネルギーと食糧を自給する時代は、地方分散の方が生産効率が良くなる。このため、地方分散社会になる。

このため、日本は自給自足経済になり、地方分散の鎖国経済になる。企業も工場の国内への逆戻り現象が起きている。国内賃金が相対的に安くなり、均一な労働者がいる日本の方が生産コストが低いためだ。

そして、地方の方が生活費が安くて、生活がしやすいので、工場を地方に作り、都市から労働者を移住させて来ることになる。その上、このコロナで東京は、パンデミックに脆弱であり、テレワーク化が進み、地方に住む人たちも増えている。パソナが淡路島に移転したのは、その先駆けであろう。

日本の強みは、平均的で割かし高品質な労働者が、どこでも確保できる国であることで、国民の5%しかいない知能の優れている人の国家ではなく、中の上な国民を中心とした国家であり、その人たちに適合した国である。このため、多くの労働者が勤勉に働くことで利益をもたらす農業や製造業などに適合した国なのである。

この人たちの国は、全員が日本的な規範を持った均一性のある社会を構成している。

このため、国民の5%の優秀な人しか活躍できないITなどの分野では、大きく遅れているし、この上の人たちの給与は、諸外国に比べても低く、中の下以下の人たちは、非正規社員化して給与も少ない。反対に、中の上の人たちは、大企業で正規社員の給与で、一番高いことになっている。

このため、将来、日本から優秀な人は海外へ出ていくし、この人たちが蓄財して、帰国後、起業する国になる。日本は割かし優秀な人がそろうし、海外から日本に来る人たちも中の上の人たちになる。日本は、中流国家にしかなれないようだ。この国の構成がそうしている。

このため、日本をよりよくするには、下や中の下の人たちでも正規の仕事できる環境を作り、生活できるレベルの給与も確保できることが必要である。ワーキングプアという存在は無くさないといけない。このためには、最低賃金を上げる必要にもなっている。そして、貧困層には、人口減少対策からも育児給付や学童給付などを実施することである。

逆に、IT企業は、世界から優秀な人を確保したければ、給与体系や人事制度を世界に合わせる必要になる。

そして、企業も大きくしたいなら、海外に出ていき、給与体系も人事体系も世界標準にして、トヨタのように国内部門と世界部門とを分けた人事体系・給与体系を行う必要になる。

AI、ロボットなどの発達で、日本は人口減少になるが、中の上の労働力もAIなどに置き換わることになる。しかし、あと10年ぐらいは、置き換われないので、人口減少は日本の国力の劣化につながることになる。

このため、日本の江戸化をこの10年で進化させる必要があるのだ。都市集中の時代から地方分散の時代に、コロナ後の時代は大転換期になり始めるようだ。

もう1つ、金融緩和だけのアベノミクスが大失敗であったことが明確化してきている。早く、このコラムが提案する産業政策を実行しないと、益々、日本は衰退していくことになる。

さあ、どうなりますか?

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image by: 首相官邸

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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