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100均の3倍でも快進撃。300円ショップ「3COINS」が売れまくる理由

「スリコ」の愛称で親しまれ、コロナ禍のステイホーム需要を追い風に売上を伸ばしている300円ショップ「3COINS」をご存知でしょうか。今回、フリー・エディター&ライターでジャーナリストの長浜淳之介さんが、「3COINS」がここまでの人気を獲得できた理由を分析。さらに多岐のカテゴリーに渡る売れ筋商品を紹介した上で、「3COINS」に対して「ヒット商品を生み出す確かなノウハウがある」との率直な見立てを記しています。

プロフィール:長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)、『バカ売れ法則大全』(SBクリエイティブ、行列研究所名儀)など。

コロナ禍の巣ごもり消費拡大が奏功。300円ショップ「3COINS(スリーコインズ)」好調の秘密は?

300円ショップの「3COINS(スリーコインズ)」が好調だ。

「3COINS」の店舗は駅ビル、ファッションビル、ショッピングセンターといった、商業施設に多く入っており、緊急事態やまん防(まん延防止等重点措置)で時短、休業となるケースもしばしばありながらも、売上が伸びている。底堅い強さがある。

経営するパルグループホールディングス(HD)の2021年2月期決算によれば、「3COINS」の売上は前年比100.8%の259億6,000万円と好調に推移した。「3COINS」の店舗数は215店となっており、10年前の約3倍にまで増えている。

「3COINS」は、ファンから「スリコ」の愛称で呼ばれ、購入された商品がインスタグラム、ツイッターなどのSNSに数多く投稿されている。連日のように店舗を訪れて、新しい商品から掘り出し物を探す熱心なファンたちは、“スリコパトロール”と呼ばれ、インフルエンサーと認知されている。

このようなコアなファンを多数持つところに「3COINS」の強さの源泉があり、100円ショップの「セリア」、グロサリーの「カルディコーヒーファーム」などと共通している。

今の市場の背景として、新型コロナウイルスの感染拡大によって、人々が外出を控えて家に居る時間が増えている。そのため、日々の暮らしをより快適にしようといった機運が醸成され、家庭用品を扱うホームセンターや100円ショップが好調だ。

社団法人日本DIY・ホームセンター協会の統計によれば、2020年度のホームセンター総売上は、前年比107.0%の4兆2,680億円となった。また、100円ショップ大手3社の決算は、セリアが前年同期比10.6%増の2,006億8,200万円(2021年3月期)、キャンドゥが同2.4%増の730億3,400万円(20年11月期)、ワッツが同2.7%増の527億9,500万円(20年8月期)と伸びている。最大手で非上場のダイソーも業績好調と、伝えられる。

そうした、ステイホームによる巣ごもり消費の拡大が、「3COINS」にプラスに働いている。

「3COINS」の人気の秘訣を探った。

顧客と共に創り上げ、育ってきた「3COINS」

「3COINS」が誕生したのは1994年。大阪・キタのファッションタウン、茶屋町の路面に1号店をオープンした。当時は既に100円ショップが人気を博していたが、同社は雑貨好きの人が衝動買いしやすい価格として、300円に注目。千円札で3個買えてお釣りが来るからだ。500円では衝動買いのハードルが高いと考えた。

3COINS店内の様子

パルグループHDは、「カスタネ」、「ルイス」などを手掛けるアパレル企業。

「3COINS」で雑貨のブランドに初めて挑戦した。雑貨好きな社員が、社内ベンチャーとして立ち上げた。

最初はオリジナルの商品はなく、メーカー、卸から買い付けていたが、300円(+消費税)均一の値段が珍しがられた。しかも300円以上の価値がある商品が数多く並んでいると、顧客からの支持が高まり、順調に店舗数を伸ばした。

12年2月期には売上高100億円を突破。間もなく店舗数も100店を超えた。

4、5年前にはテキスタイルのブームがあり、ファッションを得意とする同社は、カラフルな色使いを駆使したおしゃれな商品群を提案。商業施設からの出店要請が増え、人材が育成できる範囲でこたえていった。現在はシンプルなデザインが主流と、トレンドが移っている。

「3COINS」は広告宣伝費を使わず、口コミで顧客を増やしており、近年のSNSの発達が追い風となっている。その意味で、顧客と共に創り上げ、育ってきた業態と言えるだろう。

同社の他の雑貨ブランドには、カフェをイメージした300円のプライスのアクセサリーが中心となる「Lattice(ラティス)」39店舗と、“サプライズを楽しもう!”をコンセプトとした遊び心あふれるグッズを提供する「ASOKO(アソコ)」8店舗がある。どちらも「3COINS」の成功を基盤として構築されており、こだわりを持った顧客を獲得している。

「3COINS」には、毎日の暮らしが楽しく便利になるアイデアグッズが満載だ。

売れ筋商品を挙げていくと、まず電子レンジで簡単に即席ラーメンがつくれる「ビストロヌードル」を取り上げたい。

即席麺が簡単に作れるビストロヌードル

ポリプロピレン製の器に、袋麺の麺、チェーシュー、野菜などの具材を入れ、水を入れて電子レンジで加熱すれば、手軽に栄養バランスの取れたラーメンができ上がる。「ビストロヌードル」が優れているのは、洗練された鍋型のデザインで、器を移さなくてもそのまま丼として使えることだ。食べ終わった後の洗い物も楽だ。

即席麺が簡単に作れるビストロヌードル

「ちょこっとボウル」は電子レンジで肉じゃがのような煮物、カレー、シチューなどが簡単につくれる便利グッズ。シチューやカレーでは、最初に具材を炒める工程が省け、電子レンジに任せるだけで完成する。湯切りも付いていて、余計な水分を捨てることもできる。

電子レンジでパスタを茹でる「パスタメーカー」もヒットしている。100円ショップにも同様な商品が売られているが、「3COINS」の場合は、中に湯切り用のザルが入っており、より便利にパスタを茹でられる。こうしたちょっとした工夫が、3倍の値段でも購入に値する付加価値である。このように電子レンジを活用する調理グッズは、全般に評価が高い。

もちもち麺が簡単にゆでられるパスタメーカー

「オーロラグラス」はインスタ映えするアイテムとして、常に売上上位に君臨している。光が射す角度や中に入れる飲み物によって、グラスの色が自在に変わる。千円くらいの値打ちがありながら、300円で購入できるといった意見も多い。

光の当たり方や入れる飲み物によって雰囲気が変化するオーロラグラス

「シリコンタワシ」は洗剤が不要なエコタワシとして、しばしば品切れを起こすほど売れている商品だ。洗剤を付けなくでも、フライパンや食器の油を落とすので、環境にも優しく節約にもなる。当たりがやわらかく、テフロン加工のフライパンでも傷つけずに洗える。色が白いので使用した後の汚れが目立つが、「シリコンタワシ」同士を擦り合わせて水洗いすればきれいになる。

洗剤なしでも油が落ちやすいシリコーンたわし

コロナ禍でスタートを早めたネット通販も好調

「3COINS」ならではのキャラクター商品もある。1月8日に公開された映画『劇場版 美少女戦士セーラームーンEternal』とコラボして、ポーチ、コンパクトミラーなど35品の限定アイテムを、16日から販売した。「セーラームーン」としては25年ぶりの映画なので、ファンの間で非常に盛り上がった。

そのほかには、「マスクケース」、「冷感マスク」のような感染症対策グッズのコーナーを常設。

人気の熱中症対策グッズ

「シンゴニウム」、「サボテン」など、観葉植物の人気も高い。

種類も豊富な観葉植物

夏の季節商品として、充電式「ハンディファン」、水に濡らして使う「ひえひえタオル」などを集めた、熱中症対策グッズのコーナーも充実している。

なお、商品の大半は中国で製造したものを、輸入している。

新しい試みとして、「3COINS」では300円均一にこだわらず、1,000円や2,000円の高額商品を販売している。

高額ゾーンで売上好調なのが、昨年に発売した「ワイヤレスイヤホン」だ。1,500円という価格がこれまでの市販の商品の3分の1以下。モノトーンのシンプルですっきりしたデザインが特徴である。

売上好調なワイヤレスイヤホン

他にも、テレワークに使える「ライト付きスマホクリップ式ホルダー」、「置くだけスピーカー」、1,500円と格安の「モバイルバッテリー」や「ブルートゥースキーボード」など、スマートホンやタブレットをより快適に使うための家電製品が充実している。

これらのモバイル家電は、男性の購入者が多く、近年の「3COINS」の店舗には男性客が増える傾向が出ている。

また、昨年12月から、これまで手掛けていなかった食品にトライしている。瓶詰、缶詰、レトルトといった、保存が利くメーカーの加工食品をセレクトし展開している。

昨年9月からは、ネット通販にも取り組んでいて、1,500円以上の購入を設定している。5,000円以上買えば、送料が無料になる。同社・広報によれば「ECはもう少し先で良いのではないかと考えていたが、コロナ禍でスタートを早めた」という。家に居ながらにして、購入できるメリットを感じる顧客も多く、計画通りに推移しているそうだ。

ヒット商品を生み出す確かなノウハウ

300円ショップは、競争が激化しており、近畿地方を中心に「ミカヅキモモコ」約50店を展開していた、三日月百子という会社が、今年2月に12億7,500万円の負債(帝国データバンク調べ)を抱えて経営破綻。アパレル在庫品の再流通を手掛ける、ショーイチが一部店舗を譲り受けて、事業を継続している。

また、ダイソーは若い女性をターゲットとした300円ショップ「スリーピー」を約125店、「クゥクゥ」約33店を展開。今年3月には新たに「スタンダード・プロダクツ」というベーシックなデザインを特徴とした、「無印良品」を思わせる300円ショップの1号店を、渋谷にオープンといったように、300円ショップを強化している。

ダイソーに限らず、キャンドゥ、ワッツなどが手掛ける100円ショップは、200円、500円、1,000円と高額な商品も取り扱うようになってきており、300円ショップの領域を侵食している。100円均一にあくまでこだわっているのは、セリアくらいのものだ。

300円ショップは、100円ショップよりも高品質な気の利いた小物を購入できるのが魅力だったが、100円ショップが100円均一にこだわらなくなったために、より高い品質や感性が求められるようになっている。

勝ち組と負け組が明確に分かれてきている中で、「3COINS」には、ヒット商品を生み出す確かなノウハウがあると見受けられる。

image by: 長浜淳之介

長浜淳之介

プロフィール:長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)

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兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)など。

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