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便利そうでかなり不便。仕事用ガジェットに初心者モードは必要か

今やあらゆるガジェットに内蔵されている初心者モードや簡単モードといった機能ですが、こと「仕事に使う道具」についてはむしろ非搭載であるほうが利便性が高いと言えるようです。今回のメルマガ『杉原耀介の「ハックテックあきばラブ★」』では、システム開発者で外資系フィンテックベンチャーCTO(最高技術責任者)でもある現役東大大学院生の杉原耀介さんが、民生機ならばともかく、仕事用のシステムやガジェットに「初心者モード」が必要のない理由を、例えを駆使しつつ解説。その上で、これらのモードを「無駄な機能」と記しています。

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業務システムの意外な落とし穴

「第6の指」がもし生えてきたら?

よく誤解されている人がいるので、ここで改めて釘を刺しておきますけど、同じレトリバー犬でも「ゴールデンレトリバー」と「ラブラドールレトリバー」は全く違う犬種なんです。

「なんか黄色バージョンと黒バージョンの色違いじゃね?」と思っている人も少なくないのだけど、ゴールデンとラブラドールは、東京タワーとスカイツリーくらい違う。

伝え聞くところによると、ゴールデンは大人しくて、ご主人様といられたら散歩は最小限でも最悪は我慢できるが、ラブラドールレトリバーは基本的にお調子者でとにかく狩猟犬なので歩くのが大好き、ちなみにラブラドールの1日の推奨お散歩距離は12kmですよ、12km。

この違いを「まあ長毛か短毛かの違いだろ」とたかを括っていた過去の自分のところにタイムマシンで帰って、まじ小一時間説教したい。

君はこれから毎日散歩で朝晩2kmずつ歩くことになるよ…と。

閑話休題、そんなわけて今日も私はうちの駄犬(ラブラドールレトリバー14歳♀)を連れて、遠く散歩の道をたどっていたわけですが、それほど引っ張ることは少なくなったとはいえ力の強い中型犬(私的には)のリードを持ち、おトイレの後始末グッズを持ち、さらにおやつなどの入った手提げをもちながら、時々スマホでメールを書く私は「ああ、もう一つ手があったらなあ」と思うこともしばしばです。

そんな時にふと目に止まった記事がこれ

「第3の親指」を追加された時に脳は柔軟な対応ができる

この記事はざっくりというとユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)などの研究チームが「第6の指」をロボティクスでつけたら人間がどうなるかという研究の紹介です。

おお、人体拡張か?サイバーパンクか?攻殻機動隊かしら(みたことないけど)と一人でワクワクしてたら、その第6の指は足首にセンサーをつけて利用足のつま先でコントロールするタイプとか。意外にアナログなのね。

でも、その動画を見ていたら、最初は戸惑っていた人たちがだんだんそれに慣れてきて、グラスを1つ多く持ったり、コーヒーに砂糖を入れながら混ぜたり、トランプを上手に持つことができるようになってました。

その動画をみているうちに「あ、これって先日話していたUIの話とよく似ているな」と思ったわけなんですよ

相変わらず関係がわかりにくいたとえ

なんか最近よく見かける「簡単モード」ってのがありますね、たとえばスマホとかでも「かんたんスマホ」みたいな形でCMをよくやっているやつ。たとえばボタンが大きいとか、主要な機能しか表示しないとか「初心者」がとっつきやすいモードがあるやつですね。私の記憶では多分あれば昔「マイファーストソニー」というのが売れて、そのあたりから出てきた流れじゃないかなと思ってます。まあ、私を含め昭和な人々は「ああ、あれね!」とわかると思うのですが、その時代に生きていなかった方々のためにご説明すると…。

昔まだソニーがゲーム機じゃない方で有名だった頃「マイファーストソニー」というブランドでAV機器(ラジカセとか!)を作っていたことがあったんですよね(今の若者はソニーが家電を作っているのを知って驚くんですよ、泣けるでしょ?w)。

名前の通り、このシリーズはそもそもは「子供向けに簡単なAV家電を」というコンセプトで作られていて、ボタンなんかも必要最低限しかなかったキッチュで可愛いデザインの家電だったんですがいざ、箱を開けてみるとびっくり!メインのターゲットだった子供たちよりも、高齢者の人々が「簡単で使いやすい」という理由で買い求めて大ヒット!それ以来「シンプルで単機能=高齢者向け・初心者向け」みたいな図式ができたような気がします。

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「初心者モード」が使われる時期はほんのわずか

まあ、その図式自体は否定はしません。確かに最初はとっつきやすいことは「民生機であれば」とても大事なことですな。ここに同じ値段で「簡単に使えそう」な機械と「なんだか難しいボタンがたくさんついている」機械どちらを選ぶか?と聞かれたら、よほど克己心が強いか機械マニアじゃなければ「簡単に使えそう」な方を選ぶのは至極自然なことです。

ただ、ここで注意したいのは「民生機」ならば…という但し書きです。自分のお家で自分の楽しみのために使うのであれば、簡単に使いやすくて「自分のやりたいことが実現できる」最低限の機能があればいいでしょう。

でも、それがもし仕事で使うものだったら?仕事で使う道具にもし初心者モードがあったら、途端にとても使いにくいものになってしまいます。なぜならどんな人でも毎日仕事でその道具を使うとしたら、ほとんどの場合「あっというまに」初心者状態を抜けて「そこそこ使える人」になれます。そしてその「初心者モード」が抜けた人にとっては、機能が制限されていたり表示が無駄に大きいのは(老眼などの問題を除けば)逆に手間がかかってやりにくい。つまり、結局初心者モードは「ほんの少しの間だけ慣れていないのをカバーしてくれる」無駄な機能だということもできるわけですね。

これ、いい例えを考えるのがちょっと難しかったんですが、たとえば「初心者モードがあるハサミ」とか考えるとわかりやすいかもしれませんね。

「初心者モードのあるハサミ」(妄想)は、たぶん「まっすぐ切ることに特化してあえて曲がって切ることができなくなっているハサミ」みたいな感じかな。ともかくまっすぐ切るケースが多いから、初心者モードでは真っ直ぐにしか切れない。

これ、一瞬便利かなと思いきやとても不便。なんせまっすぐにしか切れないので、どんな形を切ろうとしてもマックスで三角形(笑)。

そして、じゃあもう初心者モードはいらないなと思ったら、多分右の取手と、左手の取手を掴みながら左右に2回す早くダブルカット(?)して「上級者モードに切り替え」するとか謎の挙動が必要となりそうです。

それなら最初から初心者モードはなくしてもらった方が便利な気がしませんか?(メルマガ『杉原耀介の「ハックテックあきばラブ★」』より一部抜粋)

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幼少期から独学でプログラムを学び、15歳でプログラムコンテスト荒らしを始める。工学系に一旦は進むもすぐ飽きて美術系に転向。映像・CGデザイナーを経て1995年にインターネットと出会いニューヨークでシステム開発の仕事を始め、その後アイドルから金融まで幅広い新規事業に携わる。直近ではゼロから外資系フィンテックベンチャーのシステム開発を行い、CTOとして成長に寄与。ガジェット大好きなガチオタ。新しいテックトレンドの予言に定評があり「預言者」と呼ばれることも 。慶應義塾大学大学院美学美術史学修士、現在東京大学大学院博士課程在学。

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【著者】 杉原耀介 【月額】 ¥550/月(税込) 初月無料 【発行周期】 毎月 第1木曜日・第3木曜日

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