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リニア残土で埋め立てか。相模原市で進む牧場建設計画「土石流」の危険度

7月3日に発生し、今も懸命な捜索活動が続く静岡県熱海市の土石流事故。1人でも多くの無事確認が望まれますが、同様の事故を引き起こしかねない計画が、神奈川県相模原市で進んでいるようです。今回、ジャーナリストの内田誠さんが自身のメルマガ『uttiiの電子版ウォッチ DELUXE』で、東京新聞が過去5年間に土石流災害を取り上げた記事を精査したところ、126件がヒット。その中に、リニア残土処理を巡る気がかりな記事が含まれていました。

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日本の「土石流」災害を新聞はどう伝えてきたか?

きょうは《東京》から。

熱海で起きた土石流について様々報じられています。

きょうは、今回の災害が起こる前、《東京》が「土石流」についてどのように伝えていたかを観ていきたいと思います。

キーワードは「土石流」で、2016年7月5日から2021年7月4日までに期間を区切ってみると、ヒット数は126件でした。

*【フォーカス・イン】は省略します。

【サーチ&リサーチ】

記事の数が多いですが、時系列的な整理を試みます。過去の「土石流」について触れている記事もあり、そこに書かれている事例も拾うことにします。

2015年以前の例

* 1935年9月。群馬県安中市で死者・行方不明者60人を出した烏川水害。台風の接近による集中豪雨が原因で土石流が発生、県内全域では死者・行方不明者257人の大水害。

* 1950年6月群馬県内の旧国鉄。長雨の後、トンネル付近で土砂崩れが発生。熊ノ平駅構内に土砂が流入。さらに山腹が大崩壊を起こし、土石流が発生。死者50人、負傷者25人の大惨事に。

* 1953年8月、京都の南山城水害では、土石流や堤防決壊によって死者・行方不明者336人(台風13号の被害と合わせて「昭和28年災害」と呼ばれている)。

* 1957年7月。長崎県諫早市など九州西部に集中豪雨。河川の氾濫や土石流などで死者・行方不明者900人超。

* 1968年8月。飛騨川バス転落事故。大雨で立ち往生していたパス2台が土石流に押し流されて飛騨川に転落。104人死亡。

* 1991年6月の雲仙普賢岳噴火災害で。火砕流だけでなく、土石流も発生して被害が拡大している。

* 2009年7月。山口県防府市で、土石流で特養入居者7人が死亡。

* 2009年には北朝鮮による予告なしのダム放流で韓国側に6人の死者が出ていた(北朝鮮の地雷が土石流に乗って韓国側に流れてくることも心配された)。

* 2011年9月。紀伊半島豪雨で大規模な土石流発生。死者・行方不明者29人。

* 2013年10月、伊豆大島で土石流災害。39人死亡・行方不明。台風26号。

* 2014年8月、広島市の土石流災害で77人が死亡。

* 2015年5月。口永良部島噴火で土石流発生。全島民が屋久島に避難。

* 2015年9月。栃木県鹿沼市で水害。周辺地域には、地滑りや土石流が起きる恐れがある「土砂災害警戒区域」が設定されていた。

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2016年

* 6月、熊本で豪雨(4月には熊本地震も)から土石流発生。

* 9月、群馬県沼田市で、住宅4棟が一部損壊する土石流。

2017年

* 1月、富士山の噴火を想定し、国交省と静岡・山梨両県が、噴火時の溶岩流や融雪に伴う土石流に備える計画を策定。

* 3月、南米コロンビアで大雨のため3つの川が氾濫し、土石流で254人が死亡。

* 4月、静岡県下田市で大雨の影響による土石流発生。

* 7月、九州豪雨。大分で土石流による犠牲者。豪雨による死者・行方不明42人。

2018年

* 3月、東富士演習場で民間の作業員2人が土石流に巻き込まれて死亡。「馬返し上流渓谷」で発生した土石流が6キロ流れ、演習場内の調整池に到達していた。ふじあざみラインにも。

* 6~7月。西日本豪雨で岡山県倉敷市真備町。雨の後、土石流が砂防ダムを乗り越え、川を堰き止めて大水害に。死者・行方不明者271人。

* *データ2018年12月27日付
「国土交通省は26日、2018年に発生した崖崩れや地滑りなどの土砂災害は、茨城、栃木、東京を除く44道府県で3,451件に上ったとの速報値を発表した。集計を始めた1982年以降で最多。西日本豪雨や北海道地震など大規模災害が頻発したためで、17年までの年平均(1,015件)の3.4倍となった。道府県別では、広島県が最多の1,243件で全体の3分の1を超えた。」

2019年

* 10月。東日本を縦断した台風19号の影響で、土石流や崖崩れなどの土砂災害は、東北から北陸、東海の19都県で211件発生。土砂災害による死者は11人。

* リニアモーターカーの建設工事で出た残土で谷を埋める計画があり、問題になっているとの記事。土石流になれば大量の土砂が流れ落ち、麓の集落を直撃するのではないかとの懸念。以下、20年9月20日付の「こちら特報部」記事から引用する。

「相模原市緑区の山中で計画されている牧場建設に、地元で不安が広がっている。谷あいの沢筋を大量の土砂で埋め立てる計画だが、崩落すると被害は隣の愛川町まで及ぶおそれがあるという。計画の背後には大手ゼネコンのフジタが付く。盛り土に使うのはJR東海から同社が受注したリニア新幹線のトンネル工事の残土という推測が地元では根強い」

* 千葉県が「土砂警戒区域」の指定を完了したと発表。19年豪雨の時には、県内指定率36%で全国都道府県ワーストだった。住民4人が死亡した3カ所は当時未指定で、災害後、慌てて指定を進め、新たに7,000カ所が指定された。さらに、国交省の指針改定を受けて傾斜角度30度以上、高さ5メートル以上の地形要件を満たしている危険箇所1万744カ所を新たに「基礎調査予定箇所」とし、5年間で指定完了を目指すと(2021年5月30日付)。

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●uttiiの眼

基本的には日本国内の「土石流」事例を、古いものの含め、該当記事に掲載されている情報をピックアップし、時系列に載せてみた。一部外国事例も入っているが全てではない。

気が付くのは、あまりも多くの「土石流」事例があり、頻繁に「土石流」が起きているということ。ただ、同じ「土石流」といってもその大小、タイプに色々なものがあり、一般的には、火山の噴火に随伴する災害という印象があり、火山灰の層が雨水で斜面を雪崩のように駆け下るものというイメージがある。また台風や長雨の結果として起こる水害の一種というイメージもあり、もちろん、今回の熱海のケースは後者にあたる。

最後の方に取り上げた、リニア工事残土に関する話は、この先、重要になっていくだろう。今回、土石流の最上部で行われていた「開発行為」が何なのか、誰の手によるものだったのか、いずれ明らかになるだろう。

もう1つの問題は、行政の怠慢。最後に引用した千葉県を巡る記事に明らか。

【あとがき】

以上、いかがでしたでしょうか。

犠牲者の数が増えているようですが、無事に発見される事例もあるようです。1人でも多くの住民が助かることを祈ります。

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image by: 防衛省統合幕僚監部 - Home | Facebook

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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