MAG2 NEWS MENU

リモート婚活で出逢った妻が“逆ギレ”離婚。なぜ夫は数千万円と家族を失ったのか?

先行きが見えないコロナ禍の影響で急激に増えているという「リモート婚活」。一人暮らしは不安で早く結婚したいと思う気持ちは分かりますが、入籍を急ぐあまり、相手のことをよく知る前に一生のお相手を決めることはリスクだらけだと語るのは、無料メルマガ『10年後に後悔しない最強の離婚交渉術』の発行者で、開業から16年で相談2万件の実績を誇る行政書士の露木幸彦さん。今回、露木さんはリモート婚活で知り合ったという女性と結婚し、大金と家族を失うことになった男性の実話を紹介しています。

「警察を呼びますよ」里帰り出産した鬼嫁が逆ギレ離婚。養育費&住宅ローンも背負わされた36歳男性の婚活悲話

昨年2020年の婚姻数は、前年比で12%も減少。2007年以降で最大の落ち込みを記録しましたが、もちろん、これは新型コロナウイルスの影響です。今年はどうでしょうか? リクルートブライダル総研によると、2021年の婚姻数は約58万組と予想。2020年に比べ、11%も増える見通しで、コロナ禍で入籍を見合わせたカップルの婚姻が実現するとみているようです。そんな、先行きが不安な時代に流行るのは、いつも「結婚ビジネス」。

あちらこちらでクラスターが発生しかねない昨今、どこでウイルスに感染し、重症化し、命を落とすか分かりません。「今後いつ何があるか分からない」と、何も誰も信じることができず、疑心暗鬼に陥ったら人間はどうなるのでしょうか。 

誰かと話したい、頼りたい、守って欲しい……人間は孤独であればあるほど「誰か」を求める傾向にありますが、「このコロナ後の異常な生活がいつまで続くのか」という不安な気持ちが「結婚願望」を後押しするのです。そして「両親に嫁を自慢したい」「孫を抱かせたい」、そして何より「安心させたい」。そんな一心で婚活に励んだ結果、養育費2千万円と住宅ローン4千万円を背負わされ、6百万円の貯金を失うことになったのが、今回の主人公である中井陽一さん(仮名、35歳)です。

「月10万円の返済に、さらに4千万円の負債を抱え、家族を失い、わが子の顔も見られない。もう、この先の人生は真っ暗です」

陽一さんは私の事務所に電話をかけてきたのですが、真っ赤な色をしている陽一さんの顔が容易に想像できました。

「彼女とは婚活アプリで知り合いました。僕が高所得(年収900万円)なので、すぐ相手が見つかりました」

陽一さんは女性との出会いをこう振り返りました。当時は緊急事態宣言中で、婚活はリモートでした。この「リモート婚活」は、自分と相手をオンラインで結び、画面上には相手の顔が表示され、スピーカーから相手の声が流れるという仕組み。多くの婚活サイトで利用できるツールの1つです。婚活サイトでは、会員登録したサイト上で相性の良い異性を簡単に探すことができます。

具体的には住所地や出身地、年収や業種、趣味や好みのタイプなどを登録し、異性からのアプローチを待ったり、自分からアプローチしたりして接点を持ちます。最初はサイトの中でやり取りをしますが、途中からLINEのIDやメールアドレス、携帯番号などを教え合い、サイトの外へ移行します。そして最終的にはスマホの世界を抜け、現実の世界で直接会い、そして交際に発展するという流れです。 

陽一さんと彼女が直接会うことができたのは宣言が解除されたタイミングでした。3ヵ月の交際を経て、彼女の妊娠がわかり、それをきっかけに入籍したのですが、2人の関係は順風満帆とはいきませんでした。

 

「彼女がおかしくなったのは、妊娠してからです。異常ともいえる発言や態度が繰り返され、どんどんエスカレートしていきました。僕は何も悪いことをしていないのに、です」 

と、肩を落とす陽一さん。

例えば、陽一さんが早く帰れば、彼女は「何で早く帰ってくるの?」と怒り、帰りが遅くなればなったで「こんな時間まで何やってたの?」と怒り出すという具合です。そうやって些細なことでいつも喧嘩に発展するのですが、そのたびに「死ね、ボケ、最低」などの罵詈雑言を浴びせられ、胃が痛くなることを繰り返していたとか。

二人が一緒に暮らし始めたのは妊娠が判明してから。彼女が彼のアパートに転がり込み、同棲生活が始まったそうです。アパートは築35年のオンボロで、1DKの間取り。

「もしかすると、住んでいる場所が悪いのかも。以前の彼女に戻ってくれれば」と思い、陽一さんは入籍後に少し無理をして、近くに4千万円のマンションを購入し、35年の住宅ローンを組みました。これから家族が増えて子育てをしていくのだから、やや大きめのマンションを選んだのです。しかし、陽一さんの努力とは裏腹に、彼女の態度は改善の兆候など少しも見られませんでした。新しいマンションに引っ越しても彼女が「平常心」を取り戻すことはなかったのです。 

「日に日にツワリが酷くなり、一人で家に置いておくのも不安になったため、まだ妊娠7カ月目でしたが、実家に帰ってもらいました」

陽一さんはそう振り返りました。慣れ親しんだ実家で両親と過ごせば、少しは心が落ち着くだろうと考えたからです。しかし、陽一さんが「良かれ」と思って講じた対応は次々と裏目に出てしまいます。 

「彼女からの連絡がまったく無くなりました。心配になった私は、実家に何度も電話をしましたが、電話に出るのは彼女の母親ばかりで、彼女につないでもらえませんでした」

当時はコロナ感染対策として、他の都道府県からの往来に自粛が求められていました。しかし、陽一さんはいても立ってもいられず、思い切って彼女の実家を訪ねたのです。

玄関から出てきたのは、彼女ではなく彼女の父親でした。そして、

「これ以上しつこく付きまとうなら警察呼びますよ」

と一喝され、揚句の果てには「娘はおまえに強姦された」などと言い出す始末。それ以来、怖くて実家を訪問できなくなりました。

「訳がわかりません。だって入籍する前に実家へはちゃんと挨拶に行ってるんですよ。そのときは大歓迎してくれたのに」

そして、進展がないまま時間だけが過ぎていきました。そんな中、彼女から突然、LINEのメッセージが届きました。実に3ヵ月振りの連絡です。

「別れて欲しい。それから分娩のお金とこれからの生活費を払って」

出産予定日より少し前に、帝王切開で赤ん坊は生まれていたのです。陽一さんは念願のわが子の誕生の瞬間に立ち会うこともできませんでした。彼女の帰りをずっと待っていた陽一さんにとって、これは急転直下の展開。彼女から一方的に「縁切り」を宣告されたのです。これはわが子にも今後、会うことができないことを意味します。

1ヵ月熟慮した末、陽一さんは彼女との関係をあきらめることにしました。なぜなら、陽一さんは何度も復縁を申し入れましたが、彼女の反応は「話すことなんてない」「早く別れて」「私の気持ちを考えて」の一点張りだったからです。陽一さんは渋々、離婚を受け入れ、お金のこと(出産費用や養育費)を話し合うことに。

そんな矢先、私の頭にハッとよぎったのは、彼の「財産」のこと。実家に戻って音信不通になるケースでは、財産を持ち逃げされていることが非常に多いからです。

「家計はどちらが管理していますか? 通帳や証券は?」私は慌てて陽一さんに尋ねました。

陽一さんによると家計は自分が管理していましたが、メインバンクの通帳は彼女が持っているとのこと。私は電話口で急いでアドバイスをしました。

「インターネットバンキングで、口座の中身を確認するように」と。

彼はその場でパソコンを使って、銀行のページにログインしましたが、そこには目を覆いたくなるような数字が映し出されていました。

「差し引き残高 52円」

 すでに手遅れでした。そこには陽一さんが就職してから現在まで、十数年かけて貯めた600万円が貯蓄されていました。彼女が実家に帰った日付に600万円が引き出されていたのです。

それから1ヵ月。陽一さんから私宛にメールが届きました。結局、妻に言われるがまま、毎月10万円の養育費を20年間支払う約束をしたそうです。600万円の貯金を返してもらうこともなく、4千万円の住宅ローンの一部を肩代わりしてくれることもなく、そして1度も謝られることもなく。こうして陽一さんの、わずか1年間の結婚生活は終わりました。

結婚前と結婚後、彼の人生は一変してしまいました。彼が婚活アプリに登録してから、現在までに失ったものの一覧です。

最後の最後に、陽一さんは私にこう言い残しました。

「僕はごく普通の結婚がしたかっただけなのに、何でこんなことに。僕は今日、35年もの間に築いてきたものをすべて失いました。……悔しいです」

ここまで陽一さんの悲劇的な結末を見てきましたが、これは決して他人事ではありません。残念ながら、世の中には結婚に向かない「結婚不適格者」が一定数、存在します。結婚生活に失敗する人には性悪説(はじめからおかしい)と性善説(結婚生活のなかでおかしくなった)に分かれますが、これは前者です。誰しも決して例外ではなく、誰もが一歩間違えると陽一さんの二の舞になりかねません。特に恋愛は人を盲目にするので、浮かれすぎに注意し、相手を冷静に客観的に、そして中立的に見ることが肝要です。

image by:Shutterstock.com

露木幸彦この著者の記事一覧

行政書士の露木幸彦が夫婦の離婚、不倫、未婚出産、婚活の法律、交渉術、会話技術を解説明石家さんまさん司会のホンマでっかTV,ブラマヨさん司会の世界のこわ~い女たち、小倉さん司会のとくダネ、バナナマン設楽さん司会のノンストップなどに登場。11冊の著書を持ち累計部数は
5万部を突破。日本経済新聞、朝日新聞電子版では連載を担当。開業から16年で相談2万件の実績。

注)離婚手続に関する一般的説明や経済的観点から必要な離婚条件に算定を超え、個別事情を踏まえた離婚手続や離婚条件に関する法的観点からの助言が必要な場合は弁護士に依頼してください。

各都道府県の弁護士会

法テラス

無料メルマガ好評配信中

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 10年後に後悔しない最強の離婚交渉術 』

【著者】 露木幸彦 【発行周期】 ほぼ 月刊

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け