追い詰められる中国。「武漢研究所からコロナ流出」説の動かぬ証拠

 

DRASTICのメンバーが膨大な資料のなかから浮かび上がらせたのは、概ね次のようなことだ。

武漢ウイルス研究所は長年、コウモリのいる洞窟で危険な何種類ものコロナウイルスを収集し、ヒトへの感染力があるかどうかや、どのような変異によって感染力が強くなるのかを知るために、「機能獲得実験」を行っていた。研究所や中国政府はこうした活動をひた隠しにしていた。

収集したウイルスの多くは、雲南省墨江ハニ族自治県の銅鉱山で見つかったものだ。新型コロナの遺伝子配列と「96%一致する」と武漢ウイルス研究所のチームが発表した「RaTG13」という名のウイルスもそのなかに含まれる。

この鉱山では2012年、坑道でコウモリの糞を清掃した作業員3人がSARSのような症状を起こして死亡している。これが、新型コロナの始祖ウイルス、おそらく「RaTG13」に感染した初めての症例だったのではないかとメンバーは考えた。

武漢研究所の石正麗氏は科学誌『サイエンティフィック・アメリカン』で、鉱山を調査したことは認めたが、作業員の死と「RaTG13」ウィルスには関連性がなく、洞窟の中のカビが原因だと主張した。

納得できないDRASTICのメンバーはさらに調査を継続し、中国の学術文献や論文を集めた巨大なデータベースを見つけた。その膨大な資料のなかから探り当てたのは昆明医科大学の院生と中国疾病対策予防センターの博士研究員の各論文だった。

2つの論文は、書かれた事実がほぼ一致しており、鉱山労働者のうち4人が「RaTG13」と思われるウイルスの抗体検査で陽性だったことや、検査結果は全て武漢ウイルス研究所に報告されていたことなどが判明した。

DRASTICチームは、2つの論文と過去の複数の報道を総合し、「RaTG13」は雲南省墨江ハニ族自治県の鉱山で発見されたウイルスだと結論づけた。

今年1月、こうしたDRASTICの見解を認める大物研究者が現れた。米国で最も評価の高いウイルス学者であるワシントン大学のジェシー・ブルーム氏だ。

「彼らの仕事ぶりには注目している」「武漢ウイルスが研究所から流出した可能性はきわめて低いと考えていたが、その後の調査を踏まえると、今ではかなり妥当な見解に思える」というツイートが科学界に衝撃を与え、その後、5月17日にはハーバード大やMITなど、名だたる機関の研究者がブルーム氏とともに武漢ウイルス研究所の徹底調査をサイエンス誌で訴えた。

危険なウイルスを扱っていたにもかかわらず、武漢ウイルス研究所の安全管理はお粗末で、流出の危険性はつきまとっていた。集団感染が起きた華南海鮮市場を閉鎖した昨年1月1日の1か月も前に感染者が発生していたことも分かっている。華南海鮮市場で野生のコウモリが売られていたというのはデマである。

国家権力と偏向メディアの歪みに挑む社会派、新 恭さんのメルマガ詳細・ご登録はコチラ

 

print
いま読まれてます

  • 追い詰められる中国。「武漢研究所からコロナ流出」説の動かぬ証拠
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け