昨今、さまざまなシーンでその重要性が指摘されるデジタルトランスフォーメーション。しかしながら、「DX」と略されるこの概念の本質が十分に理解されているとは言い難いのが現状でもあります。そんなDXを噛み砕き万人に分かりやすく解き明かしてくださるのは、アメリカに本社を置く世界的なコンサルティング会社で14年間もの勤務経験を持つ、ブレークスルーパートナーズ株式会社マネージングディレクターの赤羽雄二さん。赤羽さんは自身のメルマガ『『ゼロ秒思考』赤羽雄二の「成長を加速する人生相談」』の7月12日号より連載がスタートしたコラムで、DXへの誤解や間違った期待、さらに肝心要の「DXの本質」を解説しています。
※本記事は有料メルマガ『『ゼロ秒思考』赤羽雄二の「成長を加速する人生相談」』2021年7月12日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。
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赤羽雄二の視点:今話題のDX(デジタルトランスフォーメーション)とは何か、何を知っておくべきか その1
日本企業の危機的状況
バブルのピーク1989年に世界の時価総額上位10社中7社、20社中14社が日本企業で、トップは23兆円のNTTでした。直近では、アップルが250兆円、GAFAの他の会社も皆100兆円以上ですが、日本のトップはトヨタ自動車31兆円で、37位でしかありません。しかもEVが普及するにつれ、トヨタが今の時価総額を維持できる保証はどこにもありません。対するテスラの時価総額は上下していますが、今日現在70兆円です。
日本企業の競争力は、過去30年右肩下がりで、世界の先進的企業とは決定的に差がついてしまいました。時価総額が低いのは、収益力が低く、将来性への期待も低いからですが、その要因を大きく3つあげると、
- 事業構造改革の遅れ(経営者のせい)
- IT化の遅れ(経営者のせい)
- 英語力の弱さ、グローバル化の遅れ(日本語、日本という社会の特性)
ということになります。
時価総額の圧倒的な差から見ると、事業構造改革もIT化も、日本の経営者が過去30年、本気で推進してこなかったと言わざるを得ません。30年前の経営者も、20年前の経営者も、10年前の経営者もです。では、今の経営者の首をすげ替えたら解決するのかといえば、そういうことではありません。
役員層も部長層も、今の経営者と同様の弱さを抱えるからです。孫正義さん、柳井正さんのような例外的な経営者を除いて、日本の経営者の多くは、自ら強力に推進することが苦手です。10~15年かけて素質のある人材を抜擢し、多くのポジションを経験させ、適切に評価しながら経営者を育てる、ということをしてこなかった、日本企業の根本的なガバナンスの問題がここにあります。
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DXへの誤解、間違った期待
そういった中で、DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉が流行ってきました。古くのERP、ASP、クラウド、データベース、RPAなどの次の言葉として、もてはやされています。実際、ITベンダー、SIer、ITコンサルティング会社などがこれ幸いと話題にしています。「あなたの会社のDXをお任せください」という会社もどんどん湧き出ています。
ただ、彼らは収益力を抜本的に上げる「企業の根本的な事業構造見直し」「ビジネスモデル(金儲けのしかた)の再構築」などには踏み込まず、表面的なIT化、デジタル活用にとどまっています。
企業側も、経営者が腕まくりして事業構造改革に取り組み、顧客満足度を大幅に上げ、利益を急拡大し、その手段としてのIT活用を強力に牽引しているというケースは、ほぼ聞きません。
DXの本質とは、「経営者主導の事業構造改革」
企業の競争力を抜本的に強化するという本来の目的に立ち戻って考えるならば、DXの本質とは、「経営者主導の事業構造改革」ということになります。つまり、経営者がどう本気で「事業構造改革」に取り組み、仕事のしかた・組織のあり方を根本から見直し、最低10年、やり続けるかどうかです。その中で、ITを徹底的に活用します。Amazonは1994年から全力疾走し続けているのは、ご存じの通りです。
結局、事業構造改革とは、儲け方を根本的に変えること、ビジネスモデルをゼロベースで見直すこと、自分で自分の本業を否定して、生まれ変わることです。日本の電機産業が数十もの事業を温存して、何とかデジタル化を進めようと言い続けているのとは別次元です。
(来週のその2に続く)
(メルマガ『『ゼロ秒思考』赤羽雄二の「成長を加速する人生相談」』2021年7月12日号より一部抜粋。全文はメルマガ『『ゼロ秒思考』赤羽雄二の「成長を加速する人生相談」』を購読するとお読みいただけます)
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