同時に、チベット訪問の日程を東京オリンピックの開会式にぶつけておけば、開会式が大成功を収めた場合でも、習氏のチベット訪問を自然な形でニュースのトップに持っていくことができます。それによって中国国民の日本への憧れが増したり、対日感情が和らいだりすることに歯止めを掛ける効果も視野に入っていたと考えてよいでしょう。
むろん、チベット訪問の日程をぶつけることで東京オリンピックを無視するという対日姿勢の表明でもあったでしょう。開会式に出席すると思われていた孫春蘭副首相(スポーツ行政担当)の訪日を取りやめ、選手団を率いる国家体育総局局長の苟仲文氏(閣僚級)だけにしたことなどを見れば、それは明らかです。これは、米国などが打ち出している来年の北京冬季オリンピックへの外交的ボイコットに先手を打った動きでもあります。やるんだったらやれよ。オレのほうから先にやってやるよ。そんな声が聞こえてきそうですね。
もはやオリンピックは政治まみれ、金まみれ、スキャンダルまみれ。開催地や規模など、原点に戻って考えるべき時期にきていることは間違いありません。(小川和久)
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