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フランスの小売店「セフォラ」に学ぶ、“小型店舗”出店加速のメリット

コロナ禍で営業時間が規制され、外出自粛が呼びかけられたことで、化粧品などをリアル店舗で試してから買うことが自由にできなくなり、ネットでの販売を強化するなど、売り方の変化が必要になりました。今度はワクチン普及後に再び起こる変化に備える必要がありそうです。今回のメルマガ『理央 周 の 売れる仕組み創造ラボ 【Marketing Report】』では、フランスの化粧品チェーン「セフォラ」がアメリカのショッピングモールに小型店舗を展開する戦略を紹介。その戦略に学び、成功させるためには何が必要かを伝えています。

なぜ、小型店舗を出す小売業が増えているのか?フランスの小売店「セフォラ」に学ぶチャネルシフトの戦略

売り上げが上がらない、新規顧客が取れない、という売れない問題はついて回ります。その時に、売り物を一から変えようとするのは、大きなリスクを伴います。まず考えるのは、売り場所と売り方を変えること。今号では、フランスの小売店「セフォラ」の、アメリカでの小型店舗出店戦略の事例から、学んでいきましょう。

アメリカではコロナのワクチン接種の普及にともなって、ここのところ控えられていた、小売り店舗の出店が増えてきているようです。なかでも、ショッピングモールの中に小型店を出す、という傾向が増えています。

やはり、大型店舗を出そうとすると、集客できるかどうかということが不確定であり、初期投資の金額も大きいため、回収までに時間がかります。その意味でも、コストの負担が軽く、出店しやすく融通がきく、小型の店舗を出す小売業が増えているのです。

日経新聞によると、化粧品チェーンの「セフォラ」は、アメリカの百貨店大手「コールズ」と提携して、2023年までにコールズの全店舗の、7割にあたる850店に小型店を出店するとのことです。

セフォラは、化粧品や香水を扱うフランスの小売店で、1997年からルイビトンモエヘネシーグループ。本国のフランスには、路面店を多く展開しています。日本にも一時期あったのですが、撤退して今はありません。アメリカには1998年に進出して、積極的にインターネット通販もやっています。

LVMHのホームページには、「トレンドの最先端でユニークな、ショッピング体験を提供します。世界中の美容ファンに、幅広い高級ブランドの香水や化粧品の中から、お気に入りのものを選ぶことができる」とあるように、セフォラは、多くの商品の中から、選ぶ楽しさとか、お試しができる、ということが特徴の小売店です。

やはり化粧品や香水は、試してから買いたいものです。いくらインターネットが便利になったとしても、リアルに手にとって試す、ということはできません。

コロナで外出できなかったため、ファッションが好きな人たちは、新作のコスメや香水を試したいと思っていても、かないませんでした。

ワクチンがある程度普及した今、アメリカで外出ができるようになってきました。今回のこのセフォラの小型店舗出店は、モールなどに行ってお試しができるようになる、という市場の伸びをチャンスだ、と狙ってきたものでしょう。

消費者は欲しい商品をネットで探して、ある程度わかる場合はそのまま買います。ただ、テレビや雑誌、口コミなどで新商品を知り、ネットで探した時に、お試しをすることはできないので、リアル店舗にいき実際に試着や試食をして、買う、ということになります。

このあと、もう一度買いたい、となった時にはリアル店舗に行ってもいいし、ネットでも買える、という形にしておけば、リピート買いにつながります。

インターネット通販が定着してきたことが背景にあり、リアル店舗とオンライン通販を融合させて、どちらでも買えるように集客力を高めていきたい、という狙いが見えます。

ネット専業の小売業だったアマゾンが、ホールフーズを買収したり、リアル店舗のアマゾンブックスを作ることで、ユーザーの「探し」「買い」「受け取る」という一連の買い物の流れを、つなぎ目のない“シームレス”にした、「チャネルシフト」と逆ですが、同じ考え方ですね。

やはり実際に商品に触ることができるリアル店舗は、その意味でも強いのですが、その際に、小型店舗でできる限り多くのユーザーに、接するという意味で「面をとっていく」、という戦略をセフォラはとっています。

小型店舗化の動きは、日本でもあります。ここのところ、駅近に小さめの銀行ATMも増えましたし、おにぎりの専門店や、メロンパン、唐揚げ店なんかも見かけるようになりました。また、家電量販店のビックカメラも、小物家電の店舗を、駅ナカに出しているのも、セフォラと同じ考え方の戦略です。

ワクチンが普及して、人手が戻ってきた時に備えて、小型店舗を出せるようにしておく、というのはその意味で、ありだと思います。

その時に大事なことは、このセフォラのように、お客様が「もう一回買いたい」と思った時に、いつでも買える仕組みをつくっておくことです。自社でアプリを作ることができればそれが一番ですが、それが難しい場合は、LINEビジネスに登録してもらって、初回購入以降、定期的にニュースを配信するとか、ITを使っていろいろな工夫ができます。

このような小型店舗の出店、チャネルシフト戦略として、有効な事業戦略です。

image by:2p2play / Shutterstock.com

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