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セブンイレブンとトヨタが教えてくれた「利益を出せる企業」の特徴

「赤字は罪悪」という松下幸之助の言葉にもあるように、事業をおこなう上で利益から目をそらす企業はないと思います。メルマガ『戦略経営の「よもやま話」』の著者である浅井良一さんは、日本一利益を上げているトヨタの大野耐一さん、そしてセブンイレブンの鈴木敏文さんの言葉から、利益を生み出す企業の特徴を探っています。

変化の中の無限の新たな機会  利益を得るための3条件

事業を行う目的はと問われて「利益を得ること」と言うのが、巷でよく言い古されている答えのようですが、ドラッカーは「利益とは、結果である。マーケティング、イノベーション、生産性向上の結果手にするものである。」と言います。基本3条件を的確に実行できて、始めて獲得できるものとしています。

そして「“利益”は、それ自体“致命的に重要な経済的機能”を果たす“必要不可欠”なものである」と重ねていうのです。松下幸之助さんは「利益を生み出せない経営は“社会に何らの貢献をしていない”ということであり、本来の使命を果たしていない姿である。『赤字は罪悪』といってよい」と言います。

ここでの松下さんの「社会に何らの貢献をしていない」については、ドラッカーは

1.利益は成果(社会貢献)の“判定基準”である

としており、とうぜんとして同じ判断基準に立ちます。そして

2.不確定なリスクに対する保険
3.よりよい労働環境を生むための原資
4.社会的なサービスと満足をもたらす原資

をあげます。

その意を解釈すると、企業の“存在の根本理由”である「“社会貢献”を“成果”として実現できたとき本然として“利益”が得られ」「多くのリスク賭けた変革(イノベーション)が可能となり」「社員・利害関係者の福祉が実現され」「税金等も含めた社会貢献も実現され」となり、故に「利益は“致命的に重要な経済的機能”」なのです。

ところで、日本での2020年度の利益ランキングをみますと、なんといってもダントツのナンバーワンは「トヨタ」2兆361億円であり、2位のNTTの8,553億円の倍以上の純利益を計上しています。「トヨタ」が、なぜこんなにも業績をあげているのかですが、ご承知のように盛りの業種で、最も高い生産性を実現させているからです。

“カイゼン”は「トヨタ」の威力ある表看板で、独創である「トヨタ生産方式」により、すべての“動き”をロスなく高品質の“成果物”に変換でるのだからより多くの利益を取り込むことになります。高品質で快適でさらにコストパフォーマンスもすぐれているのだから、顧客の“評価基準”に基づいてこの結果となっています。

企業の存続と成長を実現させる“致命的に重要な経済的機能”であり、その獲得が“真っ当”であるところの「利益」について、「マーケティング、イノベーション、生産性向上」という基本3条件との関わりにおいて、主に「トヨタ」の大野耐一さんと「セブンイレブン」の鈴木敏文の考え方をもとにして、そのあり方を探ります。

重要かつ将来性のある機会に集中

セブンイレブンの鈴木敏文さんは、余計なコスト発生の要因である“ロス”についてこんなことを述懐しています。まず「“ロス”には発注が多すぎたために、売れないで値下げして売らざるをえないで発生する“値下げロス”があります。さらに値下げして売れないで、廃棄処分する“廃棄ロス”があります」。

「マーケティング」とは「顧客が欲する効用(商品・サービス)を提供する」ということで、上記の“値下げロス”や“廃棄ロス”が発生するのは「顧客の欲求」を応えていないから起こることです。これはすべての企業で起こることで「社会に貢献をしなくなった」のシグナルなので、逆転しなければ業績不振から逃れられません。

鈴木敏文さんは“ロス”について“値下げロス”“廃棄ロス”に加えて、もう一つのより重要な今日的な“ロス”について言及しています。そのもう一つというのは“機会ロス”で「かつてのような売り手市場時代は“機会ロス”を考えなくてもよかった」「今日のような環境の厳しい買い手市場時代のビジネスに求められる」としています。

今日の市場の特徴をあらわすについて、2つのキーワードがあります。先に触れた「買い手市場」と、もう一つは「常態的な変化」です。大企業であろうと中堅企業であろうと「“変化対応”に卓越した企業」以外は“値下げロス”や“廃棄ロス”のオンパレードの最中となって、「機会が無限にある」のに“機会ロス”ばかりで迷走しています。

変化できない組織、経営者では、時代相である「買い手市場」「常態的な変化」を取り込むことができないのです。企業はどうしたらよいのか、またドラッカーの見解を聞いてみます。少し長くなるのですが、何を聞くのかというと、それは「われわれの事業は何か。何になるか。何であるべきか」を聞いて行くのです。

われわれの事業は何か。何になるか。何であるべきか

<われわれの事業は何か>

「出発点は一つしかない。顧客(マーケティング)である。顧客の価値、欲求、期待、現実、状況、行動からスタートしなければならない」

「二つの意思決定後でなければ、マーケティングの目標は設定できない。“集中”と“最適市場地位”の目標である」

“集中”と“最適市場地位”の目標設定は、顧客の“評価基準”に基づいて意思決定されるもので、基本的に“一番”が求められます。「一番になるもしくはなれる市場」に“集中”しなければならない。一番になるための基本はイノベーションや差別化で、勇気ある決断や差別的強みづくりのうえで、資源の集中化と実行が求められるのです。

<われわれの事業は何になるか>

「『われわれの事業は何か』との問いに対する答えのうち大きな成功をもたらしたものさえ、やがて陳腐化する。せいぜい10年が限度である」

「市場動向の変化、特に人口構造の変化。経済構造、流行と意識、競争状態の変化によってもたらされる市場構造の変化。最後に『今日の財やサービスで満たされていない欲求は何か』を問わなければならない。この問いを発し、かつ正しく答える能力を持つことが、波に乗るだけの企業と成長企業の差となる」

<われわれの事業は何であるべきか>

「『われわれの事業は何であるべきか』との問いも必要である。現在の事業をまったく別の事業に変えることによって、新しい機会を開拓し、創造することができるかもしれない。この問いを発しない企業は、重大な機会を逃す。考慮すべき要因は、社会、経済、市場の変化であり、イノベーションである。他社のイノベーションも含め」

加えて<われわれの事業のうち何を捨てるか>

「不可欠なステップとなるものが、既存の製品、サービス、工程、市場、最終用途、流通チャネルの分析である。『それらのものは、今日も有効か、明日も有効か』『今日顧客に価値を与えているか、明日も顧客に与えるか』『今日の実態に合っていないなら、いかに廃棄するか。資源や努力を中止するか』体系的に問わない限り、明日はつくれない」

ふたたび鈴木敏文さんの言葉を聞きます。

「『変化、変化』といいますが、本当に変化を肌で感じているか、是非自問自答する必要があります。もし、大きく世の中が変化していることを肌で感じていることができているとすれば、及第生と言えます。どれだけ仕事に対して問題意識をもって打ち込んでいるかは、必ず数字になってきます」

「『商売がうまくいかない』『経営が苦しくなった』という人は、世の中の変化に対応できなくなったからです。同じものをずっと続けて行けばお客様が飽きて、逃げて行くのは当たり前です。お客様は差別化を望んでいるのです。差別化とは自己主張をもつことです。横並びでいいという時代は、もうとっくに過去のもになっています」と言われます。

トヨタの大野耐一さんは、利益についてこんなことを言っています。

「製造業の利益は、原価(コスト)を低減してこそ得られものである。われわれの製品は自由競争市場において、冷徹なる消費者の目によって選別されている。自由競争市場で生き残るためには、原価(コスト)の低減こそ至上命令なのである」

こんなことも言われています。

「産業人の意識革命が必要であろう。いつも相当量在庫をかかえていないと不安でしようがない気持ちが、つくり過ぎのムダをもたらし不良在庫という最大の経営ロスを生み出す元凶になったのである。この事態をまず深く認識することこそ、意識革命に通じるものと私は思うのです。」

ムダについて以下のようなものがあるとされます。

1.つくり過ぎのムダ
2.手持ちのムダ
3.運搬のムダ
4.加工そのもののムダ
5.在庫のムダ
6.動作のムダ
7.不良をつくるムダ

トヨタの生産方式の2本柱は「ジャスト・イン・タイム」と「自働化」なのですが、これらにより上記の“ムダ取り”を実現して行きます。

張富士夫さんは、大野耐一さんのこんなエピソードを紹介しています。

「大野さんから指示を受けたある課長が、即座に『できません』と言ったところ、大野さんから烈火のごとく怒られたということです。理由は、指示に対して『ノー』を言ったことではもちろんありません。その課長が自分の部下を信じていなかったことにあります」

「大野さんの怒りは『お前(課長)には多くの部下がいる。人間は真剣になれば、どれくらい知恵が出るかわからん。部下の知恵を引き出させもせず、できませんとはなにごとか』というものでした。トヨタ生産方式は『人間の“知恵”の上に自働化とジャストインタイムの2本の柱が立っている」となるのだそうです。

ドラッカーはこのように言います。

「企業にとって、基幹的な資源は二つしかない。一つは“知識”という“資源”すなわち購買、販売、アフターサービス、技術、マネジメントの“人材”である。そしてもう一つは“資金”である」

「これらの希少かつ高価な資源は、何に使われているか。業績をもたらすいかなる領域に使われているか。“機会”と問題のいずれに使われているか。『重要かつ将来性のある機会に対して使われているか』」

鈴木敏文さんはこんなことも言われています。

「物事は、正しい方向から正しく見られるかどうかにかかっています。焦点を一点に絞って光を集めようとしなければ火はつきません。仕事は、何の目的のためにやるのかという物事の本質を世の中のニーズ、お客様の立場から考えてとらえなければなりません。」

「世の中の変化の方向、そして、そのなかでの社会の要求、お客様のニーズの合致するものであれば、無理な力を使わなくても受け入れられていくことになります。流れに従えば力はいらないのです。買い手市場になってお客様の方から逆流してきます。この流れをきちっとつかんでいかなければならないわけです」

image by: Shutterstock.com

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戦略経営のためには、各業務部門のシステム化が必要です。またその各部門のシステムを、ミッションの実現のために有機的に結合させていかなければなりません。それと同時に正しい戦略経営の知識と知恵を身につけなければなりません。ここでは、よもやま話として基本的なマネジメントの話も併せて紹介します。

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【著者】 浅井良一 【発行周期】 ほぼ週刊

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