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「台湾も見捨てられる」米軍アフガン撤退を恫喝に使う中国の卑劣

米軍のアフガニスタン撤退を、さっそく中国が台湾に対する外交の道具として利用し始めたようです。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では台湾出身の評論家・黄文雄さんが、「アメリカはアフガン同様、台湾も見捨てる」との中国メディアによる報道や、カブール陥落の直後に中国軍が見せた恫喝的な動きを記すとともに、これらに屈しない姿勢を鮮明にした台湾の反応を紹介。さらに自由や民主、人権を否定する中国当局を強く批判した上で、共産党による一党支配はタリバンの独裁と何ら変わらないと結論づけています。

※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2021年8月18日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄こう・ぶんゆう
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

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【中国】今日のカブールは「明日の台湾」ではなく「昨日の香港」

8月16日の特別号で、私は「中国はアフガン情勢について、『アメリカの逃亡』をアピールし、いかにアメリカが頼りにならないかを強調してくると思われます。そして南シナ海や台湾問題、尖閣問題などで利害対立する相手国に対し、さらに強圧的な恫喝を行ってくる可能性もあります」と書きましたが、早くも、台湾に対して脅しをかけてきました。

人民日報傘下の環球時報は、17日付の社説で、「米国がアフガニスタン政権を捨てたのはアジアの一部地域、特に台湾側に大きな衝撃を与え、民進党政権を震え上がらせただろう」「米軍の撤退でアフガニスタン情勢が急激に変わったのは、台湾の運命を暗示する前兆かもしれない。米国は危機状況でアフガニスタンのように台湾を見捨てるだろう」と、挑発的に主張しました。

英文版姉妹紙「グローバルタイムズ」では、「サイゴンの昨日、カブールの今日、台湾の明日」という表現がネット上で人気を集めていると紹介したそうです。

中国メディア「カブールの今日は台北の明日」

さらに同日の17日に中国軍は、台湾付近の空域および海域で軍事演習を実施したと発表しました。演習は「外部からの干渉と台湾独立勢力による挑発への対応」のためだとのことです。明らかに、アフガニスタン情勢を利用した恫喝です。

中国軍、台湾周辺の空・海域で軍事演習 「挑発に対応」

これに対して、台湾の蘇貞昌行政院長は、台湾が攻撃を受けてもアフガニスタンのように崩壊しないと発言し、「今日、台湾を武力でのみ込もうとする強国があるが、今のわれわれも同様に殺害や収監を恐れていない」「われわれはこの国とこの土地を守らなければならない。敵を誉めそやし、われわれの決意を揺るがす一部の人間のようになってはならない」と述べました。

台湾、攻撃を受けてもアフガンのように崩壊しない=行政院長

中国がこのような恫喝をすればするほど、台湾人の反中意識は高まります。それは台湾が民主主義国であり、民意によって政治が動くからです。民意による政治を体験したことのない中国は、そのことがわかりません。

2019年1月、「台湾同胞に告げる書」発表40周年記念大会で、習近平主席は台湾に対して一国二制度を迫り、「武力使用を放棄しない」と恫喝しましたが、これに対して蔡英文総統は即座に「一国二制度は受け入れない」と反論しました。このことがきっかけで、それまで低迷を続けていた蔡英文の支持率が急回復、2020年の総統選挙では史上最高得票で再選されることとなりました。

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そもそも中国では、民という字は、目を針で突いて潰した奴隷のことを示していました。だから中国では、為政者にとって「民意」は「奴隷の浅慮」であり、尊重などする必要のないものなのです。

共産党独裁という実質的な皇帝制度が続いている中国で、言論の自由も人権も守られないのは、民意ほど有害で危険なものはないと思っているからです。だから4億台もの監視カメラで人民を監視しているわけです。そして民意は従うものではなく、徹底的に弾圧すべき対象としているのです。香港の民主主義を潰したのも、そのためです。

私は常々主張していますが、中国には魅力的なソフトパワーがありません。たしかに、最新技術の発展は目覚ましいものがありますが、それも他国からパクったものばかりです。典型は中国高速鉄道に導入された日本の新幹線技術で、日本に技術協力してもらった挙げ句に、現在は「自国の独自技術」などと主張して他国に高速鉄道を輸出するありさまです。

しかも、AIによる監視システムのように、最新技術を人民統制、人民監視のために使うのですから、弾圧や恐怖政治というイメージしかありません。

かつて古代ローマ帝国の時代には、支配された国や地域はこぞってローマ市民になりたがりました。かつて高い文明を誇ったギリシャの人々ですら、古代ギリシャの子孫であることよりも、古代ローマ帝国の子孫であることを誇りにしていたのです。それほどローマ帝国には自由とソフトパワーがありました。

大英帝国は産業革命により世界の7つの海を支配しました。植民地主義の負の部分もありますが、工業化や物流で世界を変えた部分も大きいでしょう。そしてかつての植民地も、現在ではイギリスの脱植民地主義によりコモンウェルス(英連邦)として、自由で平等な共同体となっています。

アメリカについては、映画や音楽、芸術、スポーツ、ファッション、ITなど、文化の発信力で世界に大きな影響を及ぼしていることはいうまでもありません。

このように、覇権国はいずれも、豊富なソフトパワーと自由な気風によって、他国を魅了し、憧れられる存在になってきたわけです。しかし、現在の中国にそのような魅力はありません。現在、中国人になりたいと思う人がどれだけいるでしょうか。

しかも、中国経済はソ連崩壊・冷戦終結により始まったグローバリズムの波に乗り、改革開放路線で急成長してきました。そしてグローバリズムが世界的に広がった理由は、自由、民主、人権という普遍的価値が基底にあったからです。しかし中国は現在、そのどれをも否定しています。

グローバリズムを利用しながらも、自由や民主、人権を否定しているというのが中国なのです。そのような中国の主義主張が世界を魅了し、席巻することはありえません。

中国経済が2桁成長を続けていた2006年、ポータルサイトの網易が「生まれ変わっても中国人になりたいか」というアンケートを行ったところ、64%が「なりたくない」と答えました。中には「豚になったほうがまし」という答えもあったそうです。このアンケートはすぐにネットから消え、網易の担当者や責任者が処分されました。

それから15年が経過しましたが、「生まれ変わっても中国人になりたい」と思う中国人は増えたとは思えません。当時は胡錦濤時代でしたが、現在の習近平時代はその時より経済成長率は落ち、言論統制がより強まっています。

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先日の東京五輪の女子高飛び込みでは、14歳の中国人・全紅嬋選手が金メダルを獲得しましたが、彼女のインタビューが大きな波紋を投げかけました。彼女はお金を稼いで病気のお母さんを治してあげたいと述べると同時に、「お母さんは何の病気かわからない。字が読めないから」と語ったのです。貧しい農村に生まれた彼女は、飛び込みの才能を見込まれたのはいいものの、ろくな教育も受けられずに、国威発揚の金メダルのために練習漬けにさせられていたようです。

中国14歳金メダリストの大フィーバーで浮き彫りになった、壮絶な格差の実態

この発言以降、地元政府は貧しい実家の修繕に取り掛かり、地元不動産会社がマンションを贈呈したり、高級外車をプレゼントする企業も現れたそうです。しかも、以前には、500元(8,500円)の医療費すら親戚や村の人々は誰も貸してくれなかったのに、金メダル獲得後は数百人の自称「親戚」が実家を訪れたといいますから、いかにも中国らしいです。

いまだこのような中国に、自由で文明的な生活など望めません。ほとんどの人民は奴隷状態で、そこから抜け出せるのは一握りの成功者だけ、それでも言論の自由はありません。

タリバンに占領されたカブールから多くのアフガン人が脱出を試みていますが、中国共産党一党独裁はタリバン独裁とほとんど同じです。

中国はアフガニスタンや過去のベトナムからの米軍引き揚げを、自分たちの勝利と位置づけていますが、かつてベトナムの統一後、中国人華僑が南北ベトナムからすべて追放されたことを都合よく忘れています。

アフガニスタンからこぞって脱出しようとする人々の姿は、去年や一昨年前、中国の弾圧を恐れて香港から脱出した香港人の姿に重なります。むしろ「今日のカブールは昨日の香港」なのです。

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image by: plavevski / Shutterstock.com

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