中国&イタリアとの差別化を図れ。日本製の靴は世界でまだまだ売れる

 

5.靴デザイナーの育成が鍵

海外市場に出るのも、ネット直販を進めるにも、最終的にはイタリア製と中国製との競合に勝たなければならない。

既に、ヨーロッバ発のトレンド追随のモノ作りでは、中国に勝てない。中国メーカーは、定期的に欧州に出張し、展示会や市場をリサーチし、大量のサンプルを購入しているのだ。

人件費の高い日本製の商品が勝負するには、コピーではなく日本オリジナルの商品でなければならない。それには、靴デザイナーの存在が欠かせないだろう。

靴デザイナーの育成として、国際的な靴デザインコンテストを提案したい。国際的なコンテストが難しければ、日本国内限定でも良い。

コンテストで重要なのは、賞金ではなくステイタスである。ステイタスは審査員で決まる。これまでも様々なコンテストは存在したが、実際にビジネスに直結したものは少ない。

例えば、コンテストの優勝者は、自分のコレクションを発表することができる。WEBに掲載し、パンフレットを作成し、世界の靴に関するメディアやキーマンに送付する。

コレクション制作には国内メーカーが協力する。そして、海外の展示会で作品を発表し、国内の百貨店等でポップアップショップを展開する。

この一連のイベントにより、靴メーカーはデザイナーとの仕事を経験し、コレクションに協力したメーカーの名前は世界中に広がるだろう。

コレクション発表後、靴メーカーとブランドライセンス契約することができれば、双方にとってメリットが生じる。

靴デザイナーを業界全体で育成し、有名にすることは、靴デザイナーという職業に夢を与えることにもなる。

6.日本独自の靴素材の開発

日本の製造業の強みは、機械と素材と加工技術にある。冒頭で述べたヴィーガン対応もにらみながら、日本オリジナルの靴素材ができれば、大きな差別化ポイントとなる。

ここで重要なことは、あくまで革靴製法に適した素材であることと、高級品の素材になり得ること。

日本はマイクロファイバーの技術、不織布の技術、製紙の技術、印刷の技術、樹脂加工の技術、接着技術、織物の整理加工技術、ゴムやシリコンの技術等に優れている。

皮革を更に加工することも可能だろうし、皮革以外のテキスタイルをタンナーで加工することも考えられる。あるいは、リアルレザーと織物やニットとのコンビネーションなど。

革靴業界の人はリアルレザー以外は邪道だと思うだろうが、バッグの世界では既にラグジュアリーブランドでも織物が使われている。

但し、素材開発には時間も費用も掛かる。長期的なプロジェクトとして、「ヴィーガン対応靴素材開発」「サスティナブル靴素材開発」「ハイテク靴素材開発」等のようにテーマを決めて取り組んでいくのも良いと思う。

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