中国&イタリアとの差別化を図れ。日本製の靴は世界でまだまだ売れる

 

3.中国製、イタリア製との差別化

中国は世界の工場、イタリアは世界の一流品の工場である。日本市場も欧米市場もこの二つの世界の工場に支配されている。

その中に日本メーカーが切り込んでいくには、中国とイタリアと差別化を図らなければならない。

この状況はアパレル業界と似ている。洋服も革靴もルーツは欧州であり、日本のメーカーは欧州の技術を導入し、欧州の製品に追いつこうと努力してきた。欧州は先生なのだ。

また、中国メーカーには日本企業が技術指導を行ってきた。現在では、日本より最新の機械が導入され、日本よりも若い社員が働いている。日本と遜色のない製品が日本より安く生産できるのである。

アパレルを事例にすれば、大手百貨店アパレルは中国市場に進出したものの、ほぼ全てが撤退している。欧州市場に向けては、欧州のメゾンを買収することで対応しようとしたが、投資家以上の役割を果たしていない。

欧州市場、中国市場共に進出に成功したのは、世界的に通用するデザイナーズブランドとユニクロだけである。

デザイナーズブランドは、日本文化を背景にした独自の世界観と圧倒的な個性によって、欧州とは異なるステイタスを表現している。

ユニクロの強みは、日本の繊維産業の強みである合繊メーカー、デニムメーカー、繊維機械メーカーの協力を得て、独自素材や独自技術の開発に成功し、中国製との差別化に成功したことである。加えて、これも日本の強みである品質管理力、物流や店舗等の運営力により、中国メーカーの追随を許していない。

靴業界にも同じことが言えるのではないか。差別化のポイントは、デザインと素材である。例えば、日本の合繊技術、整理加工技術を活かした新たな人造皮革と日本のタンナーの技術を組み合わせて、これまでにない素材を開発できれば、大きな差別化ポイントになる。

あるいは、日本人デザイナーによる欧州にはない東洋の感性を活かした靴も差別化になるだろう。

4.メーカー直販のビジネスモデル

次にメーカー直販のビジネスモデルについて考えたい。

靴業界には、タンナー、皮革問屋、靴メーカー、靴問屋、小売店という流通段階がある。

ネットを使えば、各段階で直販モデルを構築することが可能だ。タンナーが皮革を直販。皮革問屋が皮革を直販。靴メーカーが靴を直販、靴問屋が靴を直販など。

更に言えば、外国企業も直販モデルで販売できる。海外のタンナー、海外の靴メーカーが日本向けに直販することも可能だ。あるいは、日本のネットショップが輸入品を扱う場合もある。

課題は継続性だ。短期的なビジネスなら良いかもしれないが、ネットが炎上したり、価格競争に陥るというリスクもある。また、既存の流通を飛び越えることで、逆に取引を切られるかもしれない。

メーカーがネットで直販する場合、既存のビジネスとバッティングしないような設定をしてから始めることをお勧めしたい。例えば、以下のような設定が考えられる。

第1は、完全に既存流通からネット直販に切り換えること。

第2は、ネット直販限定モデルを販売すること。

第3は、クラウドファンディングのように、期間限定、数量限定で販売する。新商品のテストマーケティングのようなケースである。

第4は、ネット限定のブランドを販売すること。

第5は、直営店とネット販売の組合せである。ユニクロのように全ての販売ルートを自社でコントロールするケースである。

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