理由がわからぬ“感染者減”に要警戒。『Go To』の大失策を忘れるな

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首都圏の新型コロナウイルスの新規感染者数は20日以上も前週の同じ曜日と比較して大きく減り、明らかに第5波は減少期に入っています。しかし、減少の理由が明確になっていないと、いくつかの仮説を挙げ科学的説明が得られることに期待するのは、メルマガ『8人ばなし』著者の山崎勝義さん。理由もわからないままでは、大波と大波の谷間に悉く失策を重ねて来た政府が、またしても「Go To」のような大失策を犯してしまうと警戒しています。

増減のこと

明らかにコロナの新規感染者数が減っている。それも劇的にである。問題はその理由が分からないということである。例えばワクチンだが、やっと全国民の半分が接種した程度ではウイルスを封殺できるほどの防御力はない。国民自身の行動変容も、どうだろう、実際に生活していてその行動を夏以前と夏以後で変容させただろうか。そんな意識は少なくとも自分にはない。不織布のマスク着用にアルコールによる手指消毒、1年以上も変わらぬ生活のありようをそのまま続けただけである。

それでも現実に新規感染者が減少していることを説明する理由としてそれなりに説得力のあるものを挙げるなら、8月中旬から下旬にかけての異常気象的な豪雨が事実上のロックダウン状態をつくる格好となり、人間の移動(特に長距離の移動)を抑制したという説である。

もう一つは一部の先行研究者により指摘されていた季節性の流行という説である。確かに前述の豪雨の頃より急に涼しくなり、猛暑酷暑が当たり前の日本の夏が一段階秋へと近づいた感はある。夏に流行するものは夏の終わりとともに収束して行くという説明が一応は成り立っているのである。

加えて変異株の起源を辿れば、例えばデルタ株はインドである。インドは国土も広く気候も多様であるが、総じて暑い国と言って差し支えはないであろう。もしかしたらその変異の地と同様に、暑いという環境を好むのがデルタ変異型なのかもしれない。

それにしても理由が分からないということは、たとえそれがいいことであっても不気味なものである。意識して特に何もしていないのに収束したものは、またいつ何もしないうちに流行するか分からないからだ。今、我々に必要なのは科学の光である。「吉事は吉事」と曖昧にしたまま喜ぶことをやめ、徹底的に分析することである。考えようによっては、闇から生まれた吉事ほど恐ろしいものはない。今後の研究を待ちたいところである。

相手は2019年以来、地球上を移動し続けて来たウイルスである。どの季節、どの場所でも変異を遂げ、自分たちの勢力拡大のチャンスを待っているような恐るべき難敵である。少しでも気を抜けばそれこそあっと言う間にギリシャ文字が足りなくなってしまうような事態になることだろう。

第5波の収束は、第6波の襲来の前段階に過ぎない。これまで政府は大波と大波の谷間の政策で悉く失策を重ねて来た。誰が政権担当者になってもこれだけは言いたい。「『Go To』の大失策を忘れるな」と。

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ここにあるエッセイが『8人ばなし』である以上、時にその内容は、右にも寄れば、左にも寄る、またその表現は、上に昇ることもあれば、下に折れることもある。そんな覚束ない足下での危うい歩みの中に、何かしらの面白味を見つけて頂けたらと思う。

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