2.顧客志向のサービスが重要に
マーケティングはモノの生産・販売から産まれた概念だが、コモディティ化が加速するにつれ、モノよりも「顧客志向のサービス」が果たす役割の重要性が増している。
セオドア・レビットは「すべての企業は顧客にとってサービス業である」という顧客志向の認識に立ち、「あらゆる企業がサービス的要素を持つ」と指摘している。
また、ラッシュとヴァーゴによれば、従来のモノ中心のマーケティングをGDL(Goods Dominant Logic)といい、顧客は単に購入者として捉えられていたが、SDL(Service Dominant Logic)では、モノに限らず経済活動は全てサービスであり、顧客は購入者ではなくサービスの利用者であるという考え方を提唱している。
モノを生産して販売する行為は、モノを提供するサービスである。顧客がモノを購入するのも、モノを所有するために購入するのではなく、モノを使う体験や満足感等が目的である。したがって、マーケティング活動は、商品を販売することで完結するのではなく、購入後の顧客の体験までを意識しなければならない。
モノとコトの区別がなくなり、全てがサービスという概念に集約されることで、飲食、旅行、エンタメ、オンラインゲーム、教育等、全てがマーケティングの対象になるのである。
3.ファッションマーケティングとは?
狭義のマーケティング活動は、「商品またはサービスを購入するポテンシャルのある顧客候補に対してブランディングやマーケティング・コミュニケーション等を通じて購買行動やサービス利用に働きかける行為」である。
ファッションマーケティングは、この定義に近いが、ここにファッションの特性が加わる。
ファッションには、「流行」がある。流行とは変化であり、変化を求めるのは、「飽きる」からである。人は同じ服を着続けたり、同じ料理を食べ続けると飽きてしまう。人は、同じ仕事を続け、同じ服を着続け、同じ食事を続ける生活も可能である。経済的に考えれば、むしろ合理的な行為だ。
しかし、変化のない生活は、刑務所の生活に近い。自由を抑圧されていると感じる人も多いだろう。
変化を求める度合いにも個人差がある。変化を嫌う人もいるし、極端に変化を望む人もいる。
ヨハン・ホイジンガは著書の中で、「人間とは『ホモ・ルーデンス=遊ぶ人』のことである。遊びは文化に先行しており、人類が育んだあらゆる文化はすべて遊びの中から生まれた。つまり、遊びこそが人間活動の本質である」と述べている。
更に、「遊びの5つの形式的特徴」として、
- 自由な行為である
- 仮構の世界である
- 場所的時間的限定性をもつ
- 秩序を創造する
- 秘密をもつ
を挙げている。
加えて、遊びの機能的特徴として「戦い(闘技)」と「演技」を挙げている。
ファッションには、社会的規範と遊びの要素が混在している。時として、経済合理性を超越してしまう。
ファッションマーケティングは複雑だ。経済合理性を超越している要素もあり、経済合理性に忠実も要素もある。社会的な要素もあり、個人的な要素もある。厳密な規範もあれば、規範を否定することもある。
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