「モノを売ったら終わり」じゃない。今さら聞けぬマーケティングの本質とは

 

4.マーケティング的発想

マーケットは「市場」であり、市場とは消費者、生活者の総体である。生活者は多様な歴史、文化、宗教、思想、価値観を持っている。しかも、時代の変化と共に、生活者の嗜好や価値観は変化する。常に変化し続けるのが市場なのだ。

したがって、市場に対応するマーケティングも常に変化し続ける。新たな技術が生れれば市場は変化するし、新たな政治・経済等の状況が生れれば、当然市場は変化する。

それらの変化を予測するために、マーケティングの定義は時代の少し先を進んでいる。最先端のマーケティング理論に基づいて経営戦略を立てても、それが利益につながるというわけではない。

マーケティングは常に未来にゴール目標を設定し、そこから逆算して戦略を立案する。現状を起点として、積み上げて未来のゴールを決めるのではなく、必ず未来を起点にするのである。

例えば、不況業種の百貨店のマーケティングを考えるならば、こんな百貨店があれば顧客に支持され、顧客を満足させることが可能になるというビジョンを考えることから始まるのだ。

極端な例でいえば、例えば、「ヴィーガニズムの百貨店」を想定する。常にヴィーガニズム推進の情報発信を行う拠点でもある。世界中のヴィーガンに支持されるだろうし、店頭販売だけでなく、ネット通販の展開も可能になる。

ヴィーガニズムは食が中心になるので、1階はヴィーガンのためのレストラン、カフェを配置する。これが百貨店の顔となる。

そして、デパ地下は食料品、惣菜、スイーツ等だが、肉だけでなく、卵、乳製品等、動物性の食品は全て排除する。

婦人服、紳士服の売場もレザー、ウール等は排除。靴もレザーシューズは排除する。

あるいは、「オーガニックの百貨店」はどうだろう。プラスチック、化合繊、添加物等を徹底的に排除する。つまり、排除すべきものが変わるのだ。

百貨店は生活に関わる商品を取り揃えることができるので、ライフスタイルを表現するのに適した器である。何でもある百貨店から、何かが排除された百貨店へ。それは人の暮らしに対する提案でもある。

もし、現状の百貨店の売場構成や組織を前提にして、改善プランを考えても、おそらく現代の消費者に支持されるものはできないだろう。それはマーケティング的発想ではないのだ。

編集後記「締めの都々逸」

「一度 買っても 浮気な客は 飽きて 捨て去り 次に行く」

私がマーケティングを勉強したのは、20代でした。マーケティングを勉強すれば、フリーランスで生活できるかもしれない。そんなわけはないのですが、当時はマーケティングコンサルタントが流行っていたのです。

マーケティングの分厚い本を買い込んで、読み始めましたが、全然ピンと来ない。これ、どこの話。日本じゃ無理だよね、と思いました。マーケティングの本に書いてあることは、アメリカの事象ばかりで、日本とは市場の性格が大きく異なるからです。

それでも、問題解決のための論理的アプローチには魅了されました。実際のビジネスにおいては、論理的に考える人は意外と少なかったからです。でも、論理的に考える人が少ないということは、論理的に考えた提案を理解してくれないんですよね。すぐにできない理由を並べ立てるのです。これは現在まで続いています。

できるできないと言う前に、「これをやらなきゃダメなんだ」という強い思いを持って欲しいのですが、サラリーマンにとっては難しいんでしょうね。(坂口昌章)

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