中国の影響力増大で消えた「国連」の存在意義。20年間で加速した“無力化”

 

今年の国連総会に際し、国際社会が抱える喫緊の課題をあえて挙げるとしたら、

  • エチオピアのTigray紛争の残虐化と地域紛争への拡大の懸念
  • アフガニスタンにおける機会均等の確保と女性の権利の保護。そして、国内で急激に増加する貧困層と飢餓の危機への対応
  • 軍政により民主化運動が抑圧され、治安状況が著しく悪化しているミャンマー情勢への対応
  • キューバで激化しているデモ隊と警察隊との衝突と暴力の拡大への国際的対応の可否

そして

  • コロナとの闘い

があります。

これらはすべて安全保障理事会マターとなり、総会でも懸念が表明された問題ですが、面白いことに常連客ともいえる『北朝鮮問題』と『イラン問題』がトップアジェンダに挙げられていません。

大くくりで『北朝鮮問題』については、『弾道ミサイル』については、特別委員会の下、安保理決議違反かどうかという専門家による分析に委ねられ、その報告が安保理に上がってくることになっていますが、特に政治レベルでの議論対象には、現時点ではなっていません。『核開発問題』に関しては、国連安保理の関心マターとなっているものの、主な議論と検証はIAEAに委ねられています。

『飢餓と食糧難』については、WFPやFAO、UNICEF、UNDPなどの専門機関が対応することになっていますし、『人権問題』については、常に国連人権理事会の対応になっています。

直前にミサイル発射を繰り返したり、核開発の再開を匂わせるような動きをしたりしていますが、今年の年次総会とその裏で行われる政治的な議論の対象には入りませんでした。言い換えると、政治レベルでは意図的に北朝鮮による挑発を無視したとも言えるでしょう。

どちらかというと、日米中韓ロそして北朝鮮という、予てよりの6か国会合の関心事項に留まり、対応もそちらで行うというような空気になっているように思われます。もちろん裏にはストックホルム・グループと呼ばれる協議の場もあるのですが。

そして『イラン問題』については、核合意をめぐる当事国の協議に議論が委ねられ、協議が行われるジュネーブにライシ大統領のイランも外相を派遣していますし、枠組みから離脱したアメリカも、オブザーバーという形式で代表を派遣していますが、ニューヨークで行われる国連ポリティカル週間とは別プロセスとなっています。国連での議論の扱い方の構造も変化したと思われます。

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