中国の影響力増大で消えた「国連」の存在意義。20年間で加速した“無力化”

 

その変化という点では、先ほど挙げた今年の喫緊の課題についても同じで、国連の場でその重要性が述べられても、実際の性格は『米中双方のブロック間の対立構造』が持ち込まれた議論になっています。その典型例は、アフガニスタン問題とミャンマーの問題です。

ミャンマー問題については、国軍による“暫定政権”側は現在の大使を召還し、新しい大使に代表させたいという意図があり、それを中国が後押ししていますが、アメリカと欧州諸国は「国軍によるクーデターは認められるものではなく、NLDによって任命された現大使は正当な代表と認識している」と対立してきました。

問題解決の糸口が見つからず、「国連総会でミャンマー政府を代表したスピーチは許さないが、現在の大使をミャンマー政府の国連大使として認める」という折衷案で米中双方の折り合いがつき、今年の総会は乗り越えることとなりましたが、これは10月に開催予定の任命委員会(米中共にメンバーとなる慣行)に結論が持ち越しとなりました。

同様の問題がアフガニスタン問題に絡んで起きています。報道でも出ましたが、タリバン政権の報道官であるスハイル・シャヒーン氏を国連大使に任命する旨、国連事務局に伝達してきました。しかし、これも見事に米中間の争いの具となってしまいました。こちらについては、タリバン政権を政府承認しようとする中ロと、認められないとしている米欧で綱引きが起きており、今回の総会中の解決は非常に難しい見込みです。

国連事務局的には、すでにガニ政権下で任命されたイサクザイ氏を国連大使とするリストを9月15日に受け取っており、非常に悩ましい政争に巻き込まれる形となっています。実はこれ、20年前までのタリバン政権時にも起きた問題で、その際にもタリバン政権の任命した国連大使が演説を行うことが出来ず、また大使としての任務も遂行できなかったという前例があります。つまり、ここでも20年前と何一つ変わっていない実情が垣間見られます。

しかし、20年前と大きく変わったことがあるしたら、それは『中国政府の影響力』でしょう。その中国によるプッシュが、どこまで中立性が謳われる国連の場で通用するか、非常に見ものです。

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