MAG2 NEWS MENU

「引き受け上手」は断り上手。頼まれごとの正しい扱い方とは?

仕事であれプライベートであれ何かをお願いされるということは、自分が信頼されている証。せっかくならば気分良く応じたいものですよね。今回のメルマガ『久米信行ゼミ「オトナのための学び道楽」』ではiU情報経営イノベーション専門職大学教授を務める久米信行さんが、読者からの「頼まれ上手になりたい」という相談に答える形で、頼まれごとの気持ち良い「引き受け方」をレクチャー。さらに誰も傷つけない上手な「断り方」も伝授しています。

久米さんのメルマガ詳細・ご登録はコチラから

 

オトナの放課後相談室「頼まれ上手になりたくて」

Question

自分自身、仕事でも、プライベートでも頼まれごとを引き受けるのが下手だなぁと思うことが多くてよく反省します。

何か頼まれると、「期日はいつまで?」「仕上がりはどんなイメージを持ってる?」「NG事項は?」みたいな感じで、OKする前にあれこれ聞いてしまいます。

ただ、頼む側は、軽い気持ちで頼んでいることが多いようで、「ごめん、なんも考えてなかった」とか「おまかせで!」といわれがちです。

こちらとしては、期待にこたえたいとか、迷惑をかけたくないという思いからの質問なんですが、先方からは「条件から聞いてくる面倒くさいヤツ」と思われているようで、我ながら不器用な生き方だなぁと思っています。

周りには、何も聞かずにソッコーで「いいよ!」と引き受ける気持ちのいい人たちが多いので、余計に自分の不器用さを実感します。

とはいえ、安請け合いはしたくないのでどうしてもあれこれ聞いてしまう自分がいます。

相手にうるさいヤツ、面倒くさいヤツとさほど思われずに、コッチの疑問もぶつけられるいい方法はないものでしょうか?(大阪府・37歳、男性)

久米さんのメルマガ詳細・ご登録はコチラから

 

久米さんからの回答

頼まれごとは賢く取捨選択を。請けるなら、最初に「賛意を明言」、質問の前後には「和らぎ言葉」を

まずは、何もかもめんどくさいと感じる人が多い中、「頼まれ上手になりたい」という志に感銘いたしました。そして、請けるからには、「きちんと疑問点をクリアにしたい」という理性にも。正直に申し上げましょう。これまでの私を振り返って自己分析すると、どちらかというと深く考えずに安請け合いをしてしまうタイプでありました。よく言えば「見る前に飛べ」ということなのですが、実際には、師匠や恩人に頼まれると断れず、後先考えずにできそうもないことまで引き受けてしまう「おっちょこちょい」ということになります。ですから、私が質問に答える適任かどうかは自信が無いのですが、ささやかな経験をもとにお話いたしましょう。

幸か不幸か、優秀な人や人望のある人に、頼まれごとは集中します。今、37歳ということですが、これから働き盛りを迎えると、もっと頼まれごとが増えるでしょう。それらを何から何まで引き受けていたら、時間も足らず、体がもちません。そして結果も期待できず、スキルも上がらず、むしろ信用を失ってしまうかもしれません。とは言え「精神的な限界は、肉体的な限界よりも早く訪れる」ので、自分が考える実力よりも少々厳しい負荷を自分に与え続けることは必要です。忙しい中でも、頼まれごとを引き受け、新しい挑戦をすることで、未知なる自分の可能性に気づいて伸ばせます。その頼まれごとを通じて、新たな人間関係を築いて人生を豊かにすることもできるはずです。ですから、限られた時間を活かすべく、頼まれごとを取捨選択する知恵が大切なのです。

頼まれごとを引き受ける時に考慮すべき要素を、5W1Hでまとめますと

  1. WHO  誰に頼まれたか―師匠?恩人?上司?同僚?部下?
  2. WHERE どこで頼まれたか―会社の仕事?NPO?趣味の集まり?
  3. WHEN いつ頼まれたか―繁閑?納期?所要時間?拘束期間?
  4. WHAT 何を頼まれたか―得意or苦手?修得済or未体験?仕事or非営利?
  5. WHY  なぜ頼まれたか―任務?友情?能力?人脈?教育効果?人手不足?
  6. HOW  いかに実現するか─スキル?ネットワーク?自力?外注?

など多々あります。

極論するなら、企業や団体の上司からの特別な業務命令を除けば、全部断っても良いわけです。でも、ご自身には頼まれごとを引き受けたい志があるのですね。私には上司がいませんでしたが、絶滅危惧種の中小企業経営者で貧乏暇なしだったので、本業につながらない仕事、儲からない仕事は、引き受けなくても良かったはずです。ましてや、私にとって想定外でスキルもなかった大学の講師(驚くほどギャラが安い)や、観光協会やオーケストラなどの役員(お金がもらえるどころか持ち出し)などは、断るべきだったと考える身内もいました。それらを受けた一番の理由は、尊敬する師匠や先輩の頼まれごとを断れなかった気の弱さかもしれません。

しかし、今、考えると、頼まれごとを取捨選択する「シンプルで明確なルール」を、無意識のうちに適用していたのかもしれません。

第1のルール スゴイと思う師匠や先輩の頼まれごとはできるだけ断らない

きっと私にはわからない何らかの理由があって頼んでくれている。例えば、私が知らないスキルや可能性が花開き、新しい出会いがある、結果として本業や人生にもメリットがあるといった意義が秘められている。

第2のルール 想定外で未体験未習得の、ちょっと苦手な頼まれごとから受ける

できることを頼まれるのは仕事の世界の延長で、どうしても自己イメージを固定化する繰り返し作業になりがち。自分でも、なぜこのことを自分に頼まれるのかわからないことこそ、視野を広げ、新しい世界観と触れ合うチャンス。

あまりにシンプルなルールなので、自分でもカミングアウトするのが恥ずかしいのです。とにかく、師匠や先輩に言われて「ええ、そんなこと、私にできませんよー」と思うようなことこそ挑戦のしがいがあるというのが私の実体験です。

久米さんのメルマガ詳細・ご登録はコチラから

 

さて、遠回りをいたしましたが、ここからが本題。「これは引き受けたい」と思った頼まれごとをされた時の、応対について考えてみましょう。

おそらくは、引き受けたい仕事ほど、次々に疑問点が湧いて、質問がしたくなるのですよね。そんな時は、営業応酬話法の基本中の基本「Yes But法」を思い出してください。 まずは「YES」そして「THANK YOU」と言ってみることが大切なのです。

「今度、君にこんなことをお願いしたいんだけれど」と言われて興味を覚えたなら、真っ先に賛意と感謝を素直に表現しましょう。「面白いですね。私に声をかけてくれてありがとう。ぜひやってみたいです」と目を輝かせて、笑顔で答えたら、相手も相談してよかったと感じるでしょう。

どんな対話をしていても「いや」といった否定的な言葉が口グセで入ってしまったり、無意識のうちに眉間にたて皺が寄ってしまったりする人がいます。おそらく悪気はないのでしょうが、そんな人には、拒絶されているようで話を続けるのが難しくなる のです。だからこそ、最初の一言と笑顔が大切なのです。

続いて、質問をする時にも、この頼まれごとに協力したい成功させたいという気持ちをにじませるべく、「和らぎ言葉」とでも言うべき、接頭文などを付け加えてみましょう。

「期日はいつまで?」

と聴きたいなら

「面白い仕事だから、張り切って、速くやらないといけませんね。ちょっと今仕事が立て込んでいるのですが、いつぐらいまでに仕上げるといいでしょうか?」

同僚だったら堅苦しい言葉ではなく

「面白そう。ぜひやりたいな。今、いくつか納期のある仕事を抱えているんだけど、いつぐらいまでに仕上げればいい?」

などとデフォルメしてくださいね。

「仕上がりはどんなイメージを持ってる?」

なら

「この素晴らしい企画だと、こんな仕上がりにしたらいいと思うのですが、それでよろしいですか?他に希望するイメージなどあれば教えてくれれば、それに近づける良い仕事をしたいです。」

「今、ひらめいたんだけど、こんな仕上がりはどうかな?何か参考にしているイメージとかある?」

「NG事項は?」

「私の仕事でご迷惑をおかけしたくないので、これだけは注意すべきという点があれば、あらかじめ教えていただけますか?」

「この仕事が面白過ぎて暴走しちゃうかも。あとで手直しが出ないようにNG事項があれば教えておいて」

といった具合です。

こうして、最初にお互いに好意的なコミュニケーションができたなら、プロジェクト開始後は、グループウエアやzoomなどを活用して、緊密に報連相を繰り返すことで仕事も人間関係もうまくいくことでしょう。

最後に追加で、頼まれごとをお断りをしたい場合の一言も。先ほど申し上げましたように、頼まれごとで実績が上がると、さらに頼まれごとがやってきますので、将来は上手に「断る技術」も必要になります。ここでも 「Yes But法」の精神が大切です。

「素晴らしい企画ですね。ぜひお手伝いをしたいのですが、残念ながら、ただいま●●の仕事が佳境を迎えておりまして」

と、企画を褒めながらも、自分のキャパシティが足りないことをやんわりと告げるのです。ウソはよくありませんが、時には「ウソまでいかない方便」も必要です。何か既に頑張っている頼まれごとがあるなら

「〇〇先生の紹介で参加し応援しているNPOの活動で重責を負うことになりまして」

など、仕事と他の活動の二足のワラジで既に忙しいと伝えても良いでしょう。それから

「家族が介護(受験)に追われておりまして」

といった誰もが身に覚えのある家族の一大事などが理由であれば、頼む人も強要できないでしょう。事実、家族を大切にすることは、たいていの頼まれごとより優先順位が高いのです。

「頼まれ上手」は「断り上手」になることも大切なのです。ぜひとも、お優しい心と冷静な頭脳を活かして、意義深い頼まれ仕事と縁者に出会い、新しいフィールドでもご活躍されることを心よりお祈りいたしております。

久米さんのメルマガ詳細・ご登録はコチラから

 

image by: Shutterstock.com

久米信行この著者の記事一覧

1963年東京墨田区出身。87年慶応大経済卒。イマジニア新卒一期で飛込営業と株式投資ゲーム開発。88年日興證券でAI相続診断システム開発研修統括。91年家業の国産Tシャツメーカー久米繊維工業入社。94年三代目社長就任(現相談役)。97年日経インターネットアワード、05年経産省IT経営百選、09年東商勇気ある経営大賞等受賞。10年APEC中小企業サミット日本代表。20年開学の新大学iUでは起業家教育・地域創生担当教授。明治大、多摩大の授業や企業団体研修に即した25万部超の「すぐやる技術」シリーズ等著書15冊。内外情勢調査会等で毎年数千人に講師。東京商工会議所墨田支部副会長、墨田区観光協会理事、墨田区文化振興財団 評議員として地元振興。新日本フィルハーモニー交響楽団・NBS日本舞台芸術振興会・日本吟剣詩舞振興会 各評議員として文化芸術振興。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料お試し登録はこちらから  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 久米信行ゼミ「オトナのための学び道楽」 』

【著者】 久米信行 【月額】 ¥880/月(税込) 初月無料 【発行周期】 毎月 第1火曜日・第2火曜日・第3火曜日・第4火曜日

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け