韓国大統領候補が失策。謝罪要求に「犬とリンゴ」写真で大炎上

kp20211028
 

先日掲載の「韓国与党で内ゲバ勃発。大統領候補巡り知日派議員と党本部が対立」等の記事でもお伝えしているとおり、来年3月に控えた大統領選を巡りトラブルが頻発する韓国で、新たな騒動が勃発したようです。今回の無料メルマガ『キムチパワー』では韓国在住歴30年を超える日本人著者が、野党有力候補の尹錫悦氏が招いてしまった「国民との摩擦」を紹介。その大きな要因となった、尹氏がSNSに掲載した写真の「不適切さ」を解説しています。

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犬とリンゴ

尹錫悦(ユン・ソンヨル)氏が全斗煥前大統領を擁護するような発言をしたあと、世間から「謝罪せよ」との圧迫をうけると、今度はワンコにリンゴを与えている写真をSNSに公開して世間からさらなる総スカンをくった。これは、韓国の歴史についてある程度ご存じの方ならどういう意味なのかわかるのだが、一般の日本の方はなんのことかさっぱりわからないはずだ。ちょっとご説明いたしたい。説明したあとでもう一度尹錫悦氏の話題に戻る。

1980年5月18日、軍事政権に対する民衆のデモが激しさを増していた。とくに光州(クァンジュ)デモが深刻だった。ときの大統領(第11代および12代)全斗煥氏が、このデモ隊を鎮めるために武力をもって鎮圧した(数百人の市民が殺戮された。全斗煥本人はこれを否定している。北朝鮮の軍隊がやったんだとかそんなことを言っているようだ)。これを「オ・イル・パル(5.18)」といって、韓国では自国の軍隊が自国の市民を殺した事件として今でも市民の憤怒は静まっていない。とくにそのとき犠牲になった光州市民の遺族らにとっては、あの事件は忘れたくても忘れられない事件であるわけだ。「憎き全斗煥!」となるのも当然だ。

おりしも10月27日、逝去した13代大統領の盧泰愚(ノ・テウ)氏が、「オ・イル・パル」のとき、全斗煥の下でいっしょにあの殺戮事件を起こしたものとして市民らの糾弾をうけていたのだが、盧泰愚氏は全斗煥とはちがい、ずっと、贖罪の歩みをずっと続けてきていた。(息子を5.18の記念の日に光州に送って、犠牲者らの墓の前で悔悟の祈りを捧げるなど)。盧泰愚氏の葬儀は「国家葬」をやるということが27日の午後に決まった。目を引くのは、「オ・イル・パル」の犠牲者の遺族が、盧泰愚氏の遺体が安置されている部屋(もがりの部屋というのだろうか。葬儀ホールとでもいうのか)に弔問に訪れ、「盧泰愚氏を許します」とことばをかけたことがメディアに出ていたこと。容赦をもらって永遠の世界に旅発つことになった盧泰愚氏。これには筆者もちょっとうるっとしてしまった。やってしまったことはどうにもならない。悪かったとして許しを請い、許してもらうことだけしかないだろう。盧泰愚氏は遺書にも、光州の人々に容赦していただけるようお願いすると書いてあった。偉いのは光州の遺族の方々。よくぞ「許す」と言ったものだ。ところで全斗煥氏の場合は、「あれは俺がやったんじゃない」といつまでも言い張っている状況で、犠牲者の家族に許しを請うような態度は1ミリも見られない。盧泰愚氏が享年89歳という。全斗煥氏は90歳だ。最後まで「オレはちがう」と言い張るつもりなのだろう。

で、この全斗煥氏(ほとんどの国民から白い目で見られている)も、政治の面ではいいこともやったんだと、尹錫悦「国民の力」候補が発言したのだ。こんなことを言ったら、光州を中心とした全羅道の人々から反発をかうのは目に見えていた。こんな発言はするべきではなかった。気持ちの中にはあったとしても、少なくとも大統領候補となるべき人が今のこの時点で言うべきことばではなかった。光州市民だけではなく、韓国全体の民衆も、進歩、保守を離れて「全斗煥は殺戮魔だ。犠牲になった人々に容赦を請うべき」だとみんなおもっている。一言で言って、民衆全体の敵のような人なのだ。

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