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追い風と向かい風。岸田首相が経済を大復活させることが困難な訳

一部では厳しい結果予測がなされていたものの、蓋を開けてみれば単独過半数を獲得した自民党の勝利に終わった衆院選。この選挙戦を党の顔として戦った岸田氏は、政権を安定的かつ長期に渡り運営してゆくことが可能なのでしょうか。今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では著者で国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、岸田内閣が長期政権となるための条件を考察。その命運は、クリアすべき「2つの問題」が握っているようです。

岸田内閣が長期政権になるための条件

皆さんご存知のように、衆議院選挙が行われ、自民党が勝利しました。465議席中、261議席を獲得し、単独過半数を維持することに成功しています。

岸田さん、9月29日の自民党総裁選で勝利した。10月4日、第100代内閣総理大臣に就任。10月31日、衆議院選挙で勝利した。これで、ようやく岸田内閣、本格的に始動ということでしょう。

今回は、「岸田内閣が長期安定政権になるために必要なこと」を考えてみましょう。

外交は、菅内閣より懸念が少ない

菅内閣がはじまったとき、大きな懸念がありました。それは菅さんが、親中派のボス二階さんに担がれて総裁選に出馬したこと。その後、親米の細田派、麻生派も菅さん支持に回り、親中色が中和されました。菅さんは、それほど親中的な動きを見せなかった。それでも、中国の方に振れる懸念は、常にありました。

岸田さんは、どうでしょうか?

日本ではあまり知られていませんが、岸田さん、海外ではそこそこ有名人です。一番有名な日本の政治家は、もちろん安倍さん。史上最長政権を築いた人ですから。次に有名なのが岸田さんです。なぜでしょうか?

岸田さんは、安倍政権で2012年から2017年まで外相を務めた。5年間というと、他の国では「普通の長さ」です。しかし、日本は、しばしば1~2年で首相が代わる国。だから、外相も毎年のように代わります。そんな中で、「5年間外相」は、とても長いのです。

岸田さんが外相を務めていた時代、

ということで、岸田さんは、大国の首脳たちに「すでに知られている存在」なのです。

岸田さんは、どんな外交を行うのでしょうか?ここでも懸念は、中国の方に振れてしまうことです。岸田派 = 宏池会 は、「親中だ」といわれている。しかし、現状見るに、岸田さんは「自由で開かれたインド太平洋戦略」を重視しているように見えます。親中派のボス二階さんの影響力はほぼゼロになっていますし、「大丈夫だろう」と思います。

長期政権になるためにクリアすべき2つのこと

問題は、「内政」ですね。

現状新型コロナは、下火になっています。新型コロナ、ワクチンの普及で、死亡率が劇的に下がりました(5月時点で2.4%、8月時点で0.12%で、20分の1になった)。

しかし、次の波が来ることは間違いないでしょう。ワクチンが普及して、死亡率が下がった。それで、次の波がきたときの問題点は、「病床を確保すること」だけでしょう。

だから、岸田内閣は、「次の波に備えて病床を確保する措置」を今すぐ開始すべきです。そして、そのことを「やります」と宣言するべきです。次の波が来たとき、「病床は十分あります。岸田さんから『次の波に備えて病床を増やしておいてください』と指示があったからです」となれば、長期政権への第一歩を歩みだすことができるでしょう。

もう1つは、「新型コロナ大不況」を克服することです。景気は現状、「追い風」と「向かい風」が同時に吹き始めている状況。「追い風」は何でしょうか?世界中でワクチン接種が進み、経済活動が再開されていること。「向かい風」は、何でしょうか?中国バブルの崩壊です。

今中国で起こっていることは、2つの視点から考える必要があります。1つは、「国家ライフサイクル」。40年間成長をつづけた中国経済は、「成長期」から「成熟期」に移行している。つまり中国の2020年代は、日本の1990年代に匹敵する。これは、長期的視点なので、「予測も可能」だったのです。

たとえば16年前、2005年に出版された初めての本『ボロボロになった覇権国家アメリカ』の127pには、こうあります。

中国は、2008年・2010年の危機を乗り越え、初めは安くてよい製品を供給する「世界の工場」として、その後は1億3,000万人の富裕層を抱える巨大市場として、2020年くらいまで成長を続けるでしょう。

さらに、7年前、2014年に出版された『クレムリン・メソッド~世界を動かす11の原理』、99pにはこうあります。

私は、現時点で「中国経済は2018~2020年ごろ、日本のバブル崩壊に匹敵するような出来事が起こる」と見ています。

そう、今中国では、「国家ライフサイクルどおりのこと」が起こっているのです。だから、「仕方ない」ともいえるでしょう。

しかし、今中国で起こっていることは、【人災】の面もあります。「人災」を引き起こした主体は、誰でしょうか?そう、習近平です。彼は、「共同富裕」という政策を打ち出している。これは、「皆で豊かになりましょう」という意味。ですが、実際は、【金持ちから奪って、貧しい人にわけあたえよう】という意味。

習近平は、「マンションは住むためのもので、投資の対象ではない」といった。つまり、「不動産投資するな!」と。怖い絶対独裁者の言葉。スルーしたら、何されるかわかったもんじゃない。これでは、バブル崩壊しますよね。

そして、中国は、30年遅れで日本を追っかけています。日本のバブルが90年代初めにはじけた理由。大蔵省が90年3月に出した、「不動産融資総量規制」が原因です。中国は?「テレ朝ニュース」、9月21日を見てみましょう。

中国政府は、不動産バブルを抑制させるため、銀行の住宅ローンや不動産企業への融資に総量規制がかけられることにしました。これにより恒大集団は、金融機関からの資金調達が難しくなりました。恒大集団は、資産の売却や事業の整理に乗り出しましたが、うまくはいっていません。

どうですか?歴史から学ばない習近平政権は、「日本と同じ道」を歩んでいる。

というわけで、中国の失速が、日本にも影響を影響を与えます。つまり現状は、

この追い風と向かい風が相殺しあって、岸田さんが経済を大復活させることは難しいでしょう。

岸田内閣は、長期政権になれるのか?9月29日の発言を実現化することで、長期政権への第一歩を踏み出すことができるでしょう。その発言は、

年内に数十兆円規模の経済対策を策定することによって多くの国民の皆さんに、共に協力していただける、こうした雰囲気をつくっていきたいと思っています。

これを迅速に、なるべく多くの人が満足する形で実行する。結果、岸田さんの持論「新しい日本型資本主義 ~ 新自由主義からの転換」「令和版所得倍増計画」に進んでいくことができます。

岸田さんの成功は、私たちの成功と繁栄につながってきます。そして、岸田さんの失敗は、私たちの失敗と衰退につながってきます。ですから私たちは、岸田さんの成功を願うと共に、どんどん意見をいっていきましょう。

image by: 首相官邸

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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