日本より海外で高評価な「ISISクソコラグランプリ」
(1)人質事件の余波
イスラム国日本人人質事件では、様々な余波が起こっている。
中でも、話題になっているのが、ツイッター上で巻き起こった
『ISISクソコラグランプリ』
という現象だ。
〔ご参考〕
●『ISISクソコラグランプリ』
これは、ツイッター上で開催されているイスラム国が公開した人質ビデオ映像を
もとにコラージュ加工した写真のコンテスト。
もともとあの人質ビデオには、湯川さんと後藤さんの2人の影の方向が異なっていたり、2人の着ている服の風による揺れ具合が明らかに違うなどの矛盾点があり、人物と背景の違和感などから、スクリーンを用いて別々に撮影され合成されたものかもしれないとの指摘があった(例えば、佐藤章防衛副大臣からも指摘あり)。
もともと合成が疑われたビデオだったため、コラージュ加工しやすいというのもブーム化した理由かもしれない。
日本の報道や反響を見るより先に、欧米の報道を見てしまったので、しばらく気づかなかったが、日本では、人質の生命が危険にさらされているのに、不謹慎だとか、品がないなどと殆ど一方的に批判されているようだ。
でも、海外の方々にしてみれば、日本人がイスラム系テロリストの標的にされたこと自体、とても珍しいことであり、政府やマスコミや人質関係者以外の世間一般の日本人が、今回の事件をどのように受け止め、何を考えているのか気になっていて、そんなところに、突如、現れた
『ISISクソコラグランプリ』
は、日本人(かなりインターネットに慣れ親しんだ一部の日本人ではあるが・・・)が、今回の事件をどのように見ているのかを垣間見れる貴重な情報源になっており、これを取り上げる海外メディアが続出している。
また、特集内でも指摘したとおり、イスラム国は、日本がイスラム国対策で、「爆弾や子供や女性を殺すため」に2億ドルの支援を決めた・・・という嘘をでっち上げ、それと同額を身代金として奪うという狙いで、お得意のマーケティング戦略を駆使し、それに対抗する欧米メディアとのマーケティング戦争が繰り広げられていたというタイミングだったこともあって、総じて欧米メディアからは、
米国政府にはできない、いかにも日本らしい素晴らしい対抗策だとか、
こうやって脅しを笑いに変えるのは、恐怖を売りにしてきたイスラム国への最も効果的な戦い方だ
・・・等などと評価する報道が多く、ワシントン・ポストのように、危険と分かりきっているイスラム国に行った2人の自国民の愚かさへの苦言も含まれている・・・などと、さらに突っ込んだ、しかし、好意的に見る考察を述べてる記事もある。
〔ご参考〕
●A Japanese Hashtag Is Mocking ISIS Amid Hostage Threats
●Japanese Twitter Users Mock ISIS With Internet Meme
●Japan’s Incredible Civilian Response To ISIS’ Ransom Demands
●The subtle message behind a Japanese meme mocking the Islamic State
●Japan’s Silly Response To ISIS Propaganda Did What The U.S. Government Couldn’t
さらに、こうした海外報道を見て、最初は
「酷い。テロリストに馬鹿が挑発攻撃できてしまう時代。とてつもないことがツイッターで行われてしまっている。」
と極めて否定的に受け止めていた日本人の方が、こうした海外の報道を見て、考え方を変えたと、とても詳しく書いているブログもあったりする。
〔ご参考〕
●イスラム国(ISIS)に対するツイッター利用者の攻撃と海外からの評価
(2)米国ネットユーザーの反響
まぁ、海外メディアの報道が、『ISISクソコラグランプリ』のようなものに対してまで、日本に好意的に書かれているのは、上述の通り、マーケティング戦争の真っ最中だったことから勘案すると、当然のことなので、いちいち詳しくその報道内容を解説する必要は、さほど感じられないが、確かに、こんな現象は、日本以外の国々では、これまでなかったミーム(Meme、ブームの意味)だろう。
イスラム国の恐怖を煽るマーケティングに対抗して、欧米諸国はこれまで様々な方法を試してきたが、ほとんど効果がなく、『ISISクソコラグランプリ』のようなものが、本当に一番効果的な対抗策になるのかもしれない。
そう言えば、かつて日本で大きな社会問題になっていた『暴走族』を抑制するために、その呼び名を『珍走族』にすれば良い・・・なんて指摘もあったっけ。
『暴走族』だとカッコ良いものと認識され、参加者が増えるが、皆が『珍走族』と呼ぶようにすれば、ダサい、カッコ悪いというイメージが定着していずれ衰退する、というアイデアだ。
つまり、恐怖によってコントロールしようという集団に対抗するは、一見、バカバカしく不謹慎に見えるようなものでも、ユーモアを用いて、からかったり、嘲笑するのが最も効果的ということ。
『ISISクソコラグランプリ』からそんな意外な発見や気づきを受けたのは、海外メディアの報道だけでなく世間一般人々についても、たぶん、同じだろう。
そう、このタイミングだと、海外メディアは総じて日本支援な反応になるのは当然だとして、じゃぁ、世間一般の人々、例えば、米国ネットユーザーは、この現象をどのように感じているのだろう?
そりゃ、日本の多くの人々と同じように、不謹慎だと不快とか批判的に思われる方もいるだろう。
でも、じゃぁ、いったいその賛否はどのくらいの比率なのか?
そこで、『ISISクソコラグランプリ』のようなミーム関連の話題に異常な強さを見せるBuzzfeedの記事から、そこに寄せられた感想コメントをご紹介しよう。
ここの感想コメントは、Facebookと連動しているのが大きなポイント。
基本的に実名登録が原則のFacebookと連動しているということは、誰が書いてるか分からない匿名コメントが存在しない、ということを意味する。
また、その感想コメントは、投稿された順に表示されるのではなく、「いいね」ボタンを押された数の多さで表示順位が変わる仕組みになっている。
つまり、この感想コメントを上位から順番にある程度見ていけば、だいたいの世論の雰囲気を把握できるというワケだ。
なお、分かりやすいように、好意的な意見には◇、批判的な意見には◆、のしるしをつけておく。
それでは、以下、その感想コメント上位の和訳をどうぞ。
◇サラ(459いいね)
これは、「ふざけるな、我々はテロに屈しない」という日本国民ならではの表現方法よ。イスラム国を嘲笑しているのであって、処刑を軽く見ているわけじゃないわ。文化の違いよ。
これに反論する人は、ただ何でも反論するものを探している人だけ。
日本の方々は、困難な局面を1つのメッセージに変えようとしていて、私たちアメリカ人は、そんな彼らの反応を外から見ている過ぎない。頑張って。
→サラのコメントに対して
◇ノウ(94いいね)
身代金を渡してもイスラム国のバカ共は人質を殺すよ、なぜなら奴らは汚くて、イスラム教徒以外の人々を何とも思ってないからさ。
それなのに、なぜ奴らの脅しに怯えて萎縮しなきゃならないんだ?
奴らをこきおろし、奴らが実際そうである通り、くだらない糞に見せてやればいい。
→サラのコメントに対して
◇キャット(40いいね)
不謹慎に思われるのも分かるわ(特に人質の身内の方々など)。でも、恐怖を消し去り、愚か者をからかうユーモアの力の素晴らしさについても理解しているわ。
◇マーク(108いいね)
人質のためにできることは、誰にもほとんど何もない。
日本は、イスラム国に身代金を支払えない。なぜなら、それは同じことを繰り返すようテロリストを勇気づけるだけだから。
殺人者をからかうことは、そいつやイスラム国や奴らのメッセージを否定することになる。ボクは、テロリストが愚かな格好や状況にコラージュされた写真を広めることに大賛成する。
奴らの支援者の多くは文字が読めないが、写真なら伝わるだろうし、(恐怖を煽る)彼らの主張をかき消せるだろう。
◇パトリック(72いいね)
人質が犠牲になってはいるけど、これはとても興味深いやり方だね。
イスラム国がメディアで大きく取り上げられる理由の1つには、我々が奴らに多くの注意や関心を向けてしまっていることがある。残念ながら、奴らの恐怖への服従を、メディアを通じて広めてしまっているんだ。
日本人は、そんなイスラム国のメッセージを奴らが思いも寄らない方法で完全にひっくり返し、否定している。人質の安全については注意がいるが、彼らを表彰せずにはいられないよ。
◇ミッシェル(49いいね)
この意味が分からない奴への説明。
日本人は処刑を軽く見ているのではありません。彼らはイスラム国に対し、
「おまえらなんてジョークだ。完全な臆病者で、まったく尊敬に値しない。」
と言っているのです。
◆アレックス(37いいね)
人質が殺されそうなのに、ふざけている場合じゃないわ。
]→このコメントに対して
◇ケリー(26いいね)
私はとても興味深いと思ったわ。これはデジタル時代の「反撃」方法よ。そしてたぶん、とても重要なこと。
イスラム国は大々的なプロパガンダに力を入れてるのに、その犠牲者や犠牲者の支援者がそれに対抗しちゃいけないわけがないじゃない。
〔ご参考〕
●Japanese Social Media Users Are Protesting ISIS With “Crappy” Photoshops And Memes
・・・とまぁ、BuzzFeedのコメント欄は、以上のような反響になっていて、日本の反応の真逆と言ってもいいくらい、上位はほぼ全員が好意的という、驚きの結果になっている。
唯一の批判的な意見にも、それに対する反論が出ていて、それに対する賛同者も多い。
海外メディアだけでなく、米国の一般ネットユーザーの大多数も、『ISISクソコラグランプリ』ですら、圧倒的に好意的に受け止めるほど、日本を強力に支援しているという状況のようだ。
イスラミックセンター・ジャパンからのメッセージのようなものもあれば、『ISISクソコラグランプリ』のようなものもあり、まさに硬軟おり交ぜ、日本はすご過ぎるって感じなのかもしれない。
〔ご参考〕
●在日イスラム団体からイスラム国へのメッセージ
A message from Islamic Center Japan to ISIS
『メルマガ「ニューヨークの遊び方」』 Vol.124
著者/りばてぃ
ニューヨークの大学卒業後、現地で就職、独立。マーケティング会社ファウンダー。ニューヨーク在住。
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