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都道府県別投票率1位は今回も山形県。何が最下位との差を作るのか?

衆議院議員総選挙の投票率は、過去3番目の低投票率55.93%に終わりました。マスメディアもその低投票率については報じていますが、もっと問題視し、原因を探り、対策を講じる必要があるのではないでしょうか。今回のメルマガ『8人ばなし』では、著者の山崎勝義さんが「いっそ非投票率を批判的に言うのはどうか」と提言。前回、今回と投票率が64%を超え、連続で都道府県別1位となった山形県が50%にも満たないような県とどこが違うのか、推論を展開しています。

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総選挙のこと

第49回衆議院議員総選挙が終わった。頭に付いている第何回というのは歴史記録上の通算回数で明治23年(1890年)7月1日に行われた第1回総選挙から始まり、太平洋戦争の大敗戦による政体の変化も一応は乗り越えて現在に至るというそれなりに有難いものである。

「それなりに」ではない。日本近代130年の選挙史は、制限選挙から始まり普通選挙へと変わっていく市民運動史でもあった。官権が極端に強い反面、民権が極端に弱いこの国においては市民運動自体がそうたやすいことではないから、当然その途上では多くの犠牲が払われて来た。

今、少しだけ高校の歴史の時間に戻って「普通選挙史」というものをざっと振り返ってみると、以下のようにまとめることができる。

1889年、直接国税15円以上を納める25歳以上の男性
1900年、直接国税10円以上を納める25歳以上の男性
1919年、直接国税3円以上を納める25歳以上の男性
1925年、25歳以上の男性(納税資格制限なし)
1945年、20歳以上の男女(納税資格制限なし)
※ここで言う直接国税とは所得税や地租のことである。

現代の感覚ではなかなか理解し難いが、日本史では納税資格制限が撤廃された1925年の制度をもって「普通選挙」と呼んでいる。この所謂「普通の選挙」に女性が加えられるのは実にその20年後、1945年の終戦を待たねばならなかった。

かくまで切望した選挙権でありながら、生まれながらにそれを与えられるとその価値や払われた犠牲のことなどは一切忘れ、いとも簡単に手放してしまう人がたくさん出て来るのは一体どういうことだろうか。

これは投票率として出ているから隠れもない事実である。因みに今回の総選挙における投票率は僅か55.93%であった。「戦後N番目に低い」といったフレーズはそろそろ聞き飽きてしまった。どうしてこんなことになってしまったのか。

いっそのこと投票率を言うのではなくて批判的に非投票率を言うのはどうか。例えば「今回、44.07%もの人が選挙に行きませんでした」というふうにである。

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ここで参考までに前回、第48回総選挙の都道府県別投票率データを見てみる。全体的な傾向としては、東京・大阪などの大都市部では投票率は低くなる傾向がある。地方では大体その逆のことが言える。ただ個別にベストとワーストを見てみると、
第1位 山形県(64.07%)
最下位 徳島県(46.47%)
となり、その差は18%に迫る。山形も徳島も地方、誤解を恐れずに敢えて言えば同じような田舎である。こういった事実を見ると、一概に人口の多寡や高齢化の進展では片付けられない別の要因があるようにも思えるのである。
(編注:今回の総選挙の都道府県別投票率1位は前回に続き山形県で64.34%、最下位は山口県で49.67%でした。)

たぶんそれは最もお堅い言葉で言えば「教育」の力であろう。そして比較的やわらかい言葉を使うなら「大人のありよう」とでも言うべきお手本の存在であろう。

実は、市町村レベルで調べれば、選挙における投票率が毎回90%を超えるようなところもいくつかあるのである。国全体の投票率から見れば驚異としか言いようがないが、これらの自治体に共通するのが、親から子へごく自然に伝えられる「当たり前」という考えである。

別に無理をして善き人たろうとしている訳ではない。普通の人が当たり前の礼節を弁えるように、当たり前に選挙権を行使するのである。これは制度や施策といった肩肘張ったものではないだけに逆に尊敬に値することである。これは想像に過ぎないが、こういったところから選出される代議士はさぞかし鼻が高いのではないだろうか。

過去には「(所謂、無党派層は)関心がないと言って、(選挙当日は)寝てしまってくれればいい」などと発言した舌禍総理もいた。論外である。そして、たとえうっかりでもこんな発言が口から漏れ出てしまうような環境(つまりは国のあり方)を許容している我々国民も大概と言えば大概なのである。そんなふうに自嘲せざるを得ないような心持ち…実にかなしいことである。

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image by: Shutterstock.com

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ここにあるエッセイが『8人ばなし』である以上、時にその内容は、右にも寄れば、左にも寄る、またその表現は、上に昇ることもあれば、下に折れることもある。そんな覚束ない足下での危うい歩みの中に、何かしらの面白味を見つけて頂けたらと思う。

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