中国すら匙を投げる惨状。WHOテドロス氏「祖国」で止まぬ蛮行と悲劇

 

そしてエジプト、国内に独裁の色彩が濃くなってきたチュニジア、ブテフィリカ元大統領死去後、不安定な政情が続くアルジェリア、常に西サハラ問題を抱え、国際社会との微妙な緊張を持つモロッコ、東アフリカの不安定化を食い止めたいケニアなどが次々とエチオピア包囲網を築き始めていますが、これ、ただの地域的な情勢と捉えるだけでよいでしょうか?

本件は、確実に広域のアフリカ・中東地域における地政学リスクとして認識されていると言えますが、これらの国々に共通行動を取らせた国の存在があります。

それは、エチオピアとの接近を急速に進めているトルコです。先日もエチオピア国内のトルコ系民族の教育システムの充実と、経済的なつながりの強化の名目でエルドアン大統領がアジスアベバを訪問していますが、その際に合意されたのが、トルコ製のLAWS(自律型致死兵器システム)のエチオピア政府軍への提供だと言われています。

トルコ政府も、エチオピア政府も公式には否定していますが、トルコ製のKargu-2と言われる最新鋭のドローン兵器がエチオピアに提供され、実際にティグレイ戦線に投入されているという情報が多数寄せられています。

このKargu2ですが、これまでにアルジェリア、チュニジア、リビア、モロッコなどに投入されたと言われており、その提供先がすべて反政府勢力だったことから、各国がトルコに対する非難を強めており、ゆえに、エチオピアの周辺国などによる対エチオピア共同戦線に繋がっているのではないかと考えられます。

そしてこのKargu-2は、私も調停に携わったナゴルノカラバフ紛争でもアゼルバイジャン側にトルコが提供したと言われていますし、イランの革命防衛隊にも提供したという情報もあります。

実はこのKargu-2は、LAWS開発と使用に対する倫理問題を議論する国連の政府間専門家会議でも名指しで懸念が表明されている兵器システムですが、ジュネーブでの会合で数多く挙げられる懸念にもかかわらず、トルコ政府はLAWS開発の4大国の地位を高めたいと考えているのか、公式には否定するものの、様々な国々や反政府勢力に提供しているようです。

現在、LAWSやAI兵器のELSI(倫理・法・社会的インプリケーション)の観点から大きな懸念が表明されているにもかかわらず、その開発と提供を止めない理由には、トルコが狙う中東・アフリカおよび中央アジアにおける地政学的大国としての再興の意思があると思われます。これについては、また詳しくお話ししたいと思いますが、エチオピア政府軍に対するKargu-2の提供は、東アフリカ地域、アフリカの角地域における影響力拡大を狙って、あえて国際社会の方向に対する逆張りをしているのではないかと、勝手ながら推測します。

その企てが成功する否かはそのうち分かってくると思いますが、確実にその被害を受けているのがティグレイ人であり、欧米諸国および国連機関の職員が次々とエチオピアを離れる中、飢えと劣悪な衛生状態、そして虐殺の危機から、多くのティグレイ人を守ってくれる人はもう存在しないのでしょうか。

情報の扱いについては、立場上、非常に神経をとがらせているのですが、いろいろな筋から入ってくる情報はどれも、アビー政権とその周辺による蛮行と強硬姿勢を裏付けるものばかりであることに、とても懸念を抱いています。

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