日本のカリスマ経営者の代表格である松下幸之助氏の遺した言葉を集めた『松翁論語』は、今も多くのビジネスマンに読まれています。今回の無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』では、著者で経営コンサルタントの梅本泰則さんが、その『松翁論語』から感謝、成長、経営姿勢をテーマにした言葉を拾い出して解説しています。
松翁論語から
松翁論語には、経営者としての心構えがぎっしりと詰まっています。そして、読み返すたびに気付かされることも多いです。
今回は「感謝、成長、経営姿勢」をテーマに言葉を拾い出してみます。
感謝をする
経営がうまくいく方法の一つに、「感謝をする」というものがあります。お客様に感謝をする、得意先に感謝をする、従業員に感謝をする、家族に感謝する、いろいろです。松下翁も、感謝を大切にしています。
「松翁論語」の言葉を紹介しましょう。
喜ぶことを知り、ありがたさを知り、感謝する心を知っている人は、幸せである。(巻6、542)
感謝は幸せにつながると、言っておられます。また、逆に
感謝を知らない人間は、心貧しい。心貧しき者は、いかに財宝を持っても、その財宝はムダになってしまうだろう。(巻7、631)
感謝をしないと、貧しい心の持ち主になってしまうということですね。ですから、
感謝する人と感謝しない人。感謝する人はみなから歓迎される。喜びを知ることのできる人はすばらしい。(巻5、439)
ということになります。そして、
報いられることを期待して感謝の心をもつことはおかしいが、感謝の心をもてば、いろいろなかたちになって報いられるのは確かだ。(巻5、438)
感謝は報いにつながります。また、従業員への感謝も大切です。
叱るべきときには、やはり叱ってきた。けれども大きくねぎらってきた。感謝してきた。「そうは言うものの、よくやってくれる」という考えがどこかにある。(巻6、507)
松下翁は、従業員を大切にしたことがよく分かります。こうした経営者に叱られるのは、ありがたいことです。
いかがでしょうか。このように、感謝の心は大切にしなければいけません。そして、松下翁はこうまで言い切っています。
感謝とこわさを知らぬものは、人間にあらずして動物である。(巻9、792)
よほど感謝が重要ということでしょう。次は、「成長」についてです。
成長する
人として経営者として成長をすることは、とても大切なことです。松下翁も、人間の成長を強く訴えています。どのようにしたら、成長ができるでしょう。まず、こう言っています。
柔道でも、いっぺんに八段にはなれない。相撲でもいっぺんに横綱になれない。(巻7、603)
すぐに成長できるものではない、ということです。ですから、
考えて行動し、行動してまた考えなさい。そのくり返しによってきみは成長するだろう(巻6、535)
そのためには、
きのう考えたことに、きょうはさらに何かをつけ加えなければ、人間は成長しない。(巻6、694)
そういうことです。そして、
去年の自分と今年の自分を比べて、そこにどれだけの成長があるか。(巻6、487)
それを確かめよ、ということですね。それだけではありません。
危機感なきところ、成長なし。(巻3、283)
また、
悩みのない人間に成長はない。悩みのない人間に、私はあまり魅力を感じない。(巻1、42)
と言っています。危機感や悩みも成長の糧になるということでしょう。さらに、こうあります。
人間として成長しない事業は、成長するものではない。(巻8、757)
人の成長が事業を成長させ、事業の成長が人を成長させる、ということです。心しなくてはなりません。それに、こんなことも言っておられます。
シワがよるということも進歩である。髪が白くなることもまた進歩である。(巻8、676)
悩みを克服しながら、日々成長の努力をした証が、シワや白髪です。
以上、成長に関する言葉を集めてみました。次は、「経営姿勢」に関しての言葉です。
経営姿勢について
松下翁は、つねに日本全体、産業全体のことを考えていました。こうした経営姿勢は、本当に立派です。「松翁論語」の中で、次のように言っています。
他人の社会的責任を追求する人は多いが、自分の社会的責任を追求する人は少ない。(巻4、357)
他人ではなく、自分に厳しくあれ、ということです。そして、
自分だけ儲けようという考え方は、どこかに弱さがある。社会とともに発展するのだ、世の中のためになる仕事をするのだ、と考え実践してこそ、経営に力強さが生まれる。(巻5、459)
とあります。「社会とともに発展する」という視点は、スゴイです。ですから、
経営者は、自分の商売から、業界、産業界、さらには、社会、政治、国家、世界まで拡げて、一連の責任を自覚することが要望されている。(巻4、329)
それが経営者の責任なのだと訴えています。そこで、次の言葉につながるのです。
日本の産業界全体がつながって繁栄していくことを、つねに考えつつ、自分の商売を守り抜いていく、それが産業人としての責任、経営態度というものである。(巻4、328)
素晴らしいですね。スポーツ用品業界で、このような考えをしている経営者はどれくらいいるでしょうか。産業界全体とまでは言わなくても、せめて業界全体のことだけでも考えて欲しいものです。それが、松下翁の言う、正しい経営態度ということになります。さて、あなたはいかがでしょう。
■今日のツボ■
・感謝の心を持つことで、みなから歓迎される
・人間として成長すれば、企業も成長する
・経営者は、つねに産業界全体の発展を考えることだ
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